魔王ゲイル
!この小説を読むにあたっての諸注意!
・この小説は幻獣や精霊等が出て来ます。
・基本的にR18シーンはありませんが、ハグやキスだけはあります。
・精霊や幻獣の見た目などに関しては資料などを参考に、私の解釈で設定しています。
・私の妄想大全開の内容になっていますので、苦手な方は回れ右でお願いします。
以上の事が大丈夫であれば、どうぞお楽しみ下さい。
「これが…」
ヴィッスンは大きな祭壇を見上げて言う。集会場にある書庫で調べ物をしていたヴィッスンが、村の祭壇についての書物を見つけ、いても立ってもいれず村人の何人かで探していたのだ。そして集会場の地下室を探していると、誰も知らなかった隠し扉が見つかり、底を潜った結果ここに辿り着いたのだ。
「こんなものが眠ってたなんて…」
シャグランもビックリしている。
「どうして集会場の地下が祭壇と繋がってるの?」
プーヨは言う。
「…王国時代、森の中に大きな祭壇があった。そこには村長と村から選ばれた5人の精霊の血族の者以外は行けなかった。太陽神フレイへの信仰心を示す為に、村外れに祭壇を作ったって…」
フラムは言う。
「王国が滅びた直後、火山が噴火しここも埋もれてしまった。こんな事でもない限り、わしらも探さんかったからのお…」
ヴィッスンは祭壇の美しさに見蕩れている様だ。すると遠くで地響きが聞こえて来た。
「何…?」
次の瞬間、地震の様に地面が揺れ始めた。
「おじいちゃん!」
フラムは倒れそうになったヴィッスンを支える。
「大丈夫じゃ。皆、狼狽える出ない」
ヴィッスンはしゃがんで言う。上から水が流れて来る。
「地面が沈んでる!」
プーヨは周囲を見て言う。
「違うわ!祭壇が浮き上がってるのよ!」
シャグランはヴィッスンに飛礫が当たらない様にしながら言う。祭壇は湖の真ん中にその姿を現した。
「はるか昔にその姿を消した祭壇…火山によって祭壇が埋まり、その後に川の水が流れ込んで来た…
それが湖になった。こんなにも美しい祭壇を祖先たちが作り上げたとはな」
ヴィッスン目には薄らと涙が浮かんでいる。
「湖の真ん中に建つ祭壇なんて良いじゃない」
フラウは言う。
「村長!大変です!太陽が!」
走って来た村人の声にヴィッスンたちは一斉に空を見上げた。
「そんな…!太陽が…!」
フラムは闇に飲まれた太陽を見て唖然とする。
「…こうしちゃおれん!
お前たち、城に向かうぞ!」
ヴィッスンはそう言って老人とは思えない早さで城の方に向かった。
「ちょっと!おじいちゃん!」
フラムたちは慌てて後を追いかけた。
「おい!急いで祭壇に捧げる供物を用意するぞ!稲と子羊、あと酒を!一番新しく最も上等な物を用意しよう!」
「そうだ!村人総出で太陽神フレイに祈りを捧げるぞ!我らがブリーザ女王を助けないと!」
村人たちはそう言って村に走って行った。
城の精霊たちは空を見上げていた。
『…すっかり太陽が隠れてしまった…!』
キマイラは言う。
『ヴェントたちは大丈夫かしら…』
バンシーは不安そうに言う。
『彼奴らならきっと大丈夫だ』
ユニコーンは静かに言う。
「クソッ!ブリーザが応答しない!ブリーザ!」
テールはブリーザを覗き込みながら言う。
『力が足りないのよ…!太陽が隠れちゃったから2人だけで祈ってても魔の力に負けちゃうんだわ…』
コロポックルはブリーザの枕元で言っている。
『テールたちの様に共鳴者が現われんとブリーザが…』
ケット・シーが言うと、ドアが開く音が響いた。
「おお!一足遅かったか…!」
振り返るとそこにはヴィッスンたちがいた。
『ヴィッスン殿!こんな時に森に入るなど…一体何を考えておるのじゃ!』
ケット・シーは言う。
「我らの王の一大事に黙っている事なんて出来んわい!それにあの後調べたら、新たに精霊の精霊の血を引く者が見つかったのじゃ!」
ヴィッスンはそう言って後ろにいる者たちを振り返った。
「フラム、プーヨ、シャグラン…お前たちも…」
テールは言う。
『…入れ違っちゃったみたいね』
ペガサスとエルフが部屋に入って来た。
「話しは後よ。今はブリーザを守る宝石に力を…」
フラムはそう言い、ベッドの側に歩み寄る。
「魔王の思い通りになんてさせない。何としてでもブリーザ女王を守らなければならない」
プーヨはテールの脇に立って言う。
「太陽神の力が弱まっているなら、私たちの力でもう一度太陽神の力を呼び戻せば良い。太陽神が滅びるなんてあり得ない」
シャグランは宝石に向かって祈り始める。
「…もう1つ。村の書庫にあった古い伝記を読んだ。すると王国時代に村の外れに祭壇があったと記されておった。その伝記を頼りに村を探してみると、何とシャグランの家の地下室から大きな祭壇に繋がる通路があったのじゃ」
『祭壇が…』
オーガは目を丸くする。
『そう言えば昔、マハタリ王女に聞いた事がある…村人たちが全員森の奥にある祭壇に行くのは大変だから、村の中に祭壇を作ったって…』
オークは言う。
「その祭壇の事じゃろう…さっきのもの凄い地響きと共に祭壇が浮き上がって来おった。村の者たちがそこに集まって、祭壇に祈りを捧げておる。太陽神フレイは我々の信仰心によって力を得ると聞いておるからのぉ…」
ヴィッスンは杖に寄り掛かり言う。
『…ここからでも何とかなるだろう。皆で祈ろう。太陽神フレイに』
ジャック・オ・ランタンはそう言って手を握った。
『…そうだな。我々の信仰心が試されているんだ。とにかく村人たちとともに祈りを捧げよう』
デュラハンも祈り始める。するとブリーザの周りの宝石が目映いばかりの光を放ち始めた。
『太陽神フレイよ…今一度、我々をお導き下さい。地上に暖かな光を…生きとし生ける者全てに等しく神の光明を与えたまえ…!』
エルフが太陽に向かって祈ると、宝石の光は絡み合い束となって窓の外に飛び出した。
振り返った先には城が見える。城の天辺から色鮮やかな光の束が放たれ、祭壇にまるで橋渡しをする様に飛んで来た。光が消えると祭壇に、城にあったはずの宝石があった。
『何が起きているんだ…!』
魔王は狼狽えている。宝石は強い光を放ち、パールの闇を払い始めている。
『止めろ!』
魔王はパールを取ろうとしたが、宝石の輝きに阻まれた。パールは4個の宝石の光に応呼する様に光り始め、闇を弾き飛ばす様に光を放った。
『止めろ!止めろぉ!』
魔王は叫んだが、光を止める事は出来ない。
『今だ!魔王を王から引き離すぞ!』
ガルダは立ち上がり、ノームたちとともに飛びかかった。ノームは祭壇にある宝石を守る。
『水よ!』
ウンディーネが叫ぶと近くを流れていた川から水がまるで龍の様に魔王に向かって飛び、魔王を祭壇から押し流した。
『ぐぁ!』
ガルダは剣を振りかし王の身体を切り付けると、王から魔王が切り離された。魔王の姿はどす黒い煙の様なもの。その姿を見ただけで、この世の苦しみや痛みを感じる。
『ヴェント!』
逃げようとする魔王を見てガルダが叫ぶ。しかしその声より先に、ヴェントが動いていた。
ヴェントは魔王の前に立ちはだかり、剣を天高く振り上げる。ブリーザのネックレスが光を宿した。そして剣もそれに応乎する様に光り始める。
「消えろ。永遠に」
ヴェントはそう言って魔王に切り掛かった。手応えがある。魔王の姿は一瞬にして八つ裂きになった。
断末魔を森の中に響かせ、魔王は消えた。
森に静寂が訪れた。ヴェントは剣を鞘に納め、祭壇を駆け上がる。ガルダたちは黙って足下を見つめている。その視線の先には少し大きなミイラが倒れていた。
「…王国時代の王か…」
『初代の王ゲイルは、ミイラにして墓に埋葬したんだ。それがかえって魔王に力を与える事になるとはな…』
ノームは静かに言う。
『墓に戻そう。アッシャムス王がいた場所が、王の墓だからな』
ガルダは王の身体を抱き上げた。すると村の方で強い力を感じる。
『…村でも太陽神フレイに祈りを捧げているのだな。太陽神フレイに祈りを捧げ、王国と村人たちが協力し互いに繁栄を願う。王国と村が未来永劫続く友好を誓うための儀式でもあった』
ノームが言うと、空で闇に隠れていた太陽が少しずつ姿を現し始めた。祭壇の中央に立つと、ヴェントの首にかかっているネックレスが輝き始めた。供えられている5つの宝石がネックレスと同調する様に光り輝いている。そして振り返ると、すっかり姿を現した太陽が見えている。
「これが王国時代に太陽神に祈りを捧げていた祭壇か…」
ヴェントは祭壇を見つめながら言う。
『これで再び太陽神フレイに祈りを捧げる事が出来るな。毎年この時期祭事を行っていたそうだ。丁度作物の刈り入れの季節だからな』
『祭壇にその年初めて刈り入れた稲と家畜を捧げて、太陽が永遠である事を願うのよね』
ウンディーネは言う。
「そう言えばもうすぐ刈り入れだな。」
『王国が滅びて以降、一度も行われていなかった祭事だが…今年からはまた出来そうだな。』
ガルダもヴェントの後ろで言っている。
「そうだな。…さて、一度城に戻ろう。ブリーザが心配だ」
ヴェントはそう言って城の方に向かって歩いて行った。
ここで一度切ります。




