人間と精霊の子
!この小説を読むにあたっての諸注意!
・この小説は幻獣や精霊等が出て来ます。
・基本的にR18シーンはありませんが、ハグやキスだけはあります。
・精霊や幻獣の見た目などに関しては資料などを参考に、私の解釈で設定しています。
・私の妄想大全開の内容になっていますので、苦手な方は回れ右でお願いします。
以上の事が大丈夫であれば、どうぞお楽しみ下さい。
影はものすごい勢いで増幅し、部屋を飲み込みそうな程になっている。
『…一度外に出よう。
テール。村の奴らに言え。絶対に外に出るなと』
ノームは言った。
「…分かった」
テールは急いで階段を駆け上がった。
『さて…』
ノームは何やら呪文を唱えている。影はうめき声を上げてノームに襲いかかる。ヒョイと軽い身のこなしで避けたノームは、近くにあった棚に乗る。
『駄目か…ペガサス、ユニコーン。先に出なさい』
ユニコーンはペガサスを連れて外に出た。
「ペガサス!ユニコーン!」
ゲリンゼルが駆け寄る。
『ノームが戦ってるわ』
ペガサスは言う。
すると突然地響きがして、テールの家の脇の地面に穴が空いた。村人たちは悲鳴を上げた。暴れる様に影が蠢く。それを華麗に避けるノーム。年を取った様には到底見えない。
「…!そう言う事か!」
テールは急いで家の方に向かった。
『お、おい!』
ユニコーンは慌てて後を追う。
「ノームは魔物の気を引いてくれているんだ!今の内にあの宝石を何とかしよう!」
『…なるほどな』
テールたちは地下室に向かった。ボッコリと穴の開いた地下室は何処に何があるか分からない状態だ。
『おいおい…これ、どうやって探せって言うんだ?』
ユニコーンは呆れている。
「仕方がない。とにかく探すぞ。ノームが心配だ」
テールはそう言って、物を掻き分ける。
『やれやれ…』
ユニコーンはおもむろに目を閉じる。するとその姿が人型になり、物をどけ始める。
「…お前、人間になれたのか」
テールは目を丸くする。
『まあな。元の姿の方が何かと楽だから人型にならないだけだ』
「なるほどな…」
テールは妙に納得した。
『…随分派手に荒らしたな』
「何処に何があるか分からないな」
テールは辺りを見回す。
すると突然、テールを何かの感覚が襲った。ゾクッとする様な寒気の様なものだ。
『テール?』
ユニコーンは訝しげにテールを見る。テールは何も言わず、穴の方に向かう。
『おい!』
穴の中は明かり一つない真っ暗な状態。足下すらおぼつかない中、テールはどんどんと進んで行く。何かがテールを導いている様だ。
『テール!待てよ!』
ユニコーンは必死で追いかけて来ている様だ。何も見えない。
しかし、足下に何かを感じる。足の裏に振動の様な物を感じ、それが強くなる。テールは地面に這いつくばり探る。
『テール?』
「…!あった!」
テールの手には宝石が握られていた。その宝石は暗い穴の中を煌煌と照らす様に黄色く輝き始めた。
『…共鳴してる…?』
ユニコーンは呟く様に言った。
「共鳴?」
テールは首を傾げる。
『こう言う宝石は精霊じゃないと輝きを取り戻さない。しかしこの宝石はテールの手で輝きを取り戻した…』
「…ブリーザか?」
テールは眉根を寄せる。
『…違うわよ』
宝石の中からブリーザが姿を表した。
『ブリーザ…』
ユニコーンはブリーザの姿を見つめる。
『魔物がいなくなったから出て来れたわ。…ノームは大丈夫なの?』
「そうだ!ノームだ!」
テールは急いで来た道を戻った。
「…ゲリンゼルの方にはなかったか」
ヴィッスンは言う。
「はい。しかし、幼い時に赤く綺麗な宝石を見た記憶はあります。ですから恐らく…」
『家にはあった可能性が高い。人間からしてみたら値打ち物だからな。売ってしまったか…』
ノームはゲリンゼルに怪我の手当をしてもらいながらため息を吐く。大きい怪我はないものの、かすり傷が幾つも出来ている。些か疲れている様で、声に元気がない。悪魔は宝石を失った事に気が付いたからなのか、逃げ去ってしまった。
「ありえますね。祖母は信心深かったのでそう言った謂れのある物は大切にしていたんですが、母はそう言った事は『戯れ言』と言っていましたから」
ゲリンゼルは言う。
『母上には憶えがあるのか?』
ユニコーンは聞く。
「…祖母が亡くなってすぐ、遺品で金になりそうな物は全てたまたま来た旅商人に売ってしまったんですよ。売った物なんて覚えてないでしょうね」
『その中にルビーが紛れていたか』
『随分思い切ったわね。自分の母親でしょう?』
ペガサスは驚いている。
「…祖母と母は仲が良くなかったんですよ。昔に何かあったみたいで。だから思い出したくないんでしょうね」
「…昔、ゲリンゼルの両親が結婚する時にゲリンゼルの祖母は最後まで反対しておったんじゃ。ゲリンゼルの父親はお調子者でな。その場の勢いで物事を進めて行く、いわばいい所ばかりを取って行く人間なんじゃ。もちろん本人の努力と人徳があるおかげなんじゃがな。そんな所にゲリンゼルの母親は惚れていたんじゃ。
しかし祖母の方は何も苦労していない様に見えていたんじゃ」
ヴィッスンは唸っている。
「知らなかった…祖母は父と仲が良い様に見えたんですが…」
ゲリンゼルは驚いて言う。
「ゲリンゼルが産まれる頃には仲違いもなくなっていた。お調子者だが、彼奴の作る反物は天下一品じゃったからな」
ヴィッスンは微笑んで言う。
「彼奴は一生の中で一番良く出来た糸で、生涯最高の反物を作り、それでストールを作ったのじゃ。寒い夜長にそれを羽織って読書を出来る様にのぉ。彼女はそれをたいそう気に入ってな。誰しもが見蕩れる程美しいストールじゃった」
「地下に残ってました。唯一、売られなかった祖母の遺品です」
『…亡くなった夫の作った物だと思うと、例え憎い母親の物だったとしても売れなかったという事か』
ユニコーンはため息を吐く。
「そうじゃろうな。彼女は夫を本当に愛しておった。それ故、それ以前の母親の態度が許せなかったのじゃろう。
結局、仲直りは出来なかった」
ヴィッスンは一息ついた。
「…さて。お前たちはその宝石をブリーザの元に持って行くのじゃろう?どうやら森の方でサファイアが見つかったそうじゃな。タンザナイト、サフィア、アラゴナイトと宝石が揃った。後はルビーとパールじゃ。こっちでも手がかりを探してみよう。わしの方も古い家系じゃ」
『…そうだな。テール。城に来てくれないか?その共鳴の事も気になるしな』
「分かった。…ゲリンゼル」
「分かってる。プーヨは俺が見てる」
ゲリンゼルは微笑んで言う。テールは頷いてペガサスの背中に乗った。
『共鳴か…普通は精霊にしか出来ない。
でもテールは元々大地との結びつきが強いから、もしかしたらその可能性があるわね』
エルフは本を見ながら言った。
『しかしそれだけで共鳴するとは思えない。他に何か要因があるはずだ』
ノームも本を読んで唸って言う。
「…ん?なあ、ノーム」
ヴェントは読んでいた本を持ってノームに歩み寄る。
『何だ?』
「昔、王国が滅びた後、麓にあった街は外から来た者たちに侵略されたって書いてある」
『ああ。お前たちの先祖、まだヴィッスン殿さえ影も形もない時だな』
「王国時代の街は城で暮らしていた精霊たちと仲が良かった。中には精霊が街に暮らす人間と夫婦になった人もいたんだよな」
『まあな。ブリーザの両親の様なもんだな』
「つまり、ブリーザみたいに精霊と人間の子供がいたことになる」
『…テールの家系がその家系かもしれないと言いたいのか?』
「侵略した時、外の人間だからそれを知らずに結婚した奴だっていたかもしれない。聞いていたとしても外の人間だ。『戯れ言』として受け止めていたかもしれない。可能性はあるだろ?そしてこの宝石は、王国時代に精霊の血を引いた者が持っていたと言われている」
『…はるか昔、ノームの中に人間と結婚した者がいるのは聞いた事がある。テール。お前の両親の家系を調べる方法はないか?』
「…さすがに家系図はないな。でも、親父の方のじいさんが昔から地震を予知したりする事があったとは聞いた事がある。叔父とかも地面に埋まってる物が分かる事があったらしい。それで金を掘り当てた事もあるらしいけどな。叔父はそれで生計を立ててたんだ」
『…ノームの家系って事か?』
ケット・シーは言う。
『可能性が高いな。父上の家系は男が多いかな?』
「そうだな。父方はほぼ女性はいない。」
『ノームはな、男が多いんだ。女は1人いるかいないかだ。だからノームは一妻多夫なんだ。女は尊重されるしな。
その代わり、子宝には恵まれやすい。女の子を産んだ女性は祝福も並大抵ではない。夫からしてみたら自慢だな。まあ、怨まれやすくもあり、命を狙われる危険もあるのだがな』
「なるほどな」
『ノームの家系であれば共鳴は当然するはずだ。男親がノームだったんだな。女親であればブリーザの様に力が継承されないはずだしな』
「これからどうする?」
『…共鳴してしまった以上、テールはノームだ。ヴェントの時とは違ってノームになっていても村は受け入れてくれるだろう。帰っても大丈夫だ。
…しばらくノームとしての能力は強くなるだろうがな。すぐに落ち着いて来るだろう』
「分かった」
テールは微笑んで部屋を出て行った。
「…ブリーザ?」
ヴェントは声を掛ける。
『…なに?』
3つの宝石を介して声が聞こえる。
「苦しくないか?」
『大丈夫…でも…』
「でも?」
『…ヴェントと直接話せないのが辛い』
寂しそうな声で言う。
「ブリーザ…」
久しぶりにするブリーザとの会話。幸せを感じつつも、早く魔王を何とかしないとと言う気持ちもある。
『ヴェント…元に戻ったらいっぱい抱き締めてくれる…?』
「ああ」
『沢山キスしてくれる?』
「ああ。飽きる程してやるよ」
『約束だよ?』
「ああ、約束だ」
目を覚まさないブリーザの頭を優しく撫でる。
『…ブリーザ、ヴェント。入るぞ』
一声かけて入って来たのはホビットだった。
「どうした?」
『魔物たちが動き出した様だ。3つの宝石がこっちにあると分かったからだろうけどな』
「…襲って来るか」
『…警戒しておくにこした事はないよね』
珍しい声に振り返ると、そこにはオークがいた。
『オーク!大丈夫なの!?』
ブリーザの枕元に座っていたコロポックルは驚いた様に言った。
『僕たちの女王様の危機なのに、僕だけ地下室に籠っているわけにはいかないよ。王の間だったら日の光も少ないし、今日は太陽がそんなに出てないしね』
オークは微笑んで言った。
『…恐がりのお前にしては頑張ったな』
キマイラは言う。
『ちょっと恐かったけど…』
オークは天井を見つめて雲行きを見る。
『…このくらいなら大丈夫だよ』
『オーク…暖炉の方にいたら?その方が万が一太陽が出ても大丈夫だよ』
ブリーザは言う。
『うん。ありがとう。早く元気になってね。ブリーザのシチュー食べたいし』
『私も!』
コロポックルは元気に言った。
『やれやれ…誰か食べ物以外の理由の奴はおらんのか?』
ケット・シーは呆れて言う。
「ケット・シーはどうなんだ?」
ヴェントは笑って言う。
『そうじゃな…ブリーザの膝の上で久しく寝ておらんからな。ブリーザの膝の上で寝たいのぉ』
ケット・シーは穏やかに言う。
『私、ブリーザの肩の上に座りたい!』
コロポックルは言う。
『…せめて起き上がれたらね…』
ブリーザは切なそうに言う。
「いくら宝石が3つあるとは言え、今目を覚ましたら苦しいぞ。もう少し我慢、な?」
『…うん』
ブリーザは答えた。
『…魔物、東の方角にいるな。あっちは確か遺跡がある所だ』
ノームが言う。
『遺跡?』
ペガサスは聞く。
『お前も知ってるだろ?王国が滅びた後、あそこの火山が噴火した。大地をマグマが覆い尽くした』
ノームの視線の先には大きな山が一つ聳え立っている。遥か昔に噴火して以来、あの山は噴火していない。
『さすがにそれは知ってるけど…』
『王国の東には王族の墓があったんだ。太陽が昇る方角に造る事で、太陽神に墓を守って頂く為だと言われている。それもマグマによって埋まってしまった。今は天辺が少しだけ見えている程度だ』
『…もしかして子供たちがよく昇って遊んでる!』
『そうだ。丁度あそこ辺りに集まってるな。
しかし…』
『魔物の気配なんてなかったわよね?』
ペガサスは首を傾げる。
『ああ。しかし、魔王が本気で身を隠そうとしていたならば、可能性は否定出来ない』
『…調べてみる?』
『その価値はありそうだがな。問題は魔王がどれほどの力を蓄えているかという事だ』
『返り討ちじゃ困るもんね…』
『何しろキマイラがあの調子だからな。しかももうすぐ日食だ。このまま見ている訳にもいかないしな…』
『ヴェントと相談しましょう』
『…そうだな』
ノームとペガサスは城の中に入って行った。
「…あの遺跡か。確かにあそこには歴代の王が眠っているからな。魔王にとっては恰好の場所かもしれないな」
ヴェントは言う。
『どうする?行ってみるか?』
ノームは言う。
「…そうだな。全員は行けない。この城も守らないといけないしな。
まず、ノームは決まりだ。宝石の事があるからな。ガルダも行って欲しい。サラマンダーは城に残って、イフリートが行こう。ウンディーネも行って欲しい。
エルフはここに残ってくれないか?俺が遺跡に行く。」
『ヴェント…』
エルフは眉根を寄せる。
「ここで皆に任せっぱなしでただ指銜えて見ていられる程、俺は落ちぶれちゃいない」
ヴェントの声は力強かった。
『…ヴェント。私のネックレス、持って行って。ママの力が備わったネックレスだから、きっと守ってくれる』
ブリーザの声が聞こえて来る。
「でもこれはブリーザを…」
『私は宝石があるから大丈夫…ヴェントを…守らないと…私が巻き込んだんだから…私のせいだから…』
ブリーザは未だにヴェントがエルフになった事、ヴェントの父親が亡くなった事を気にしているのだ。事あるごとに『ごめんね』と言い続けている。きっとブリーザが村にいた時の自分の行動を悔い続けているヴェントと同じだろう。
「…ブリーザ…」
ブリーザの頭を撫でる。
「俺は自分で自分の道を決めた。後悔もしてないし、良かったと思ってる。だから自分のせいだなんて言うな。絶対に残りの宝石見つけ出して助けてやるから、な?」
『…ごめんね…』
「大丈夫だから…行って来る。」
ヴェントはそう言ってガルダたちと共に部屋を出た。
キリがいいのでここまで!次も早めに上げます!




