8-7.パレードが行く
草里は、天使ごとソラミミを切り開いた。
鮮やかな、鮮やかな手並だった。一寸の狂いもない。ソラミミと天使が二つに分かれた。天使はすぐに群れに紛れ、ソラミミは落下する。草里が、ソラミミに駆け寄るが、ソラミミは途中で無数の巡る天使たちに隠れてかき消えてしまった。
「ソラミミ……!」
来る。来ている。
ソラミミが孕んでいたもの。
巨象を連れて、パレードが来る。
奇形のパレードだ。禿げをさらした、手足のおかしな、きっかいな動物たちがよろよろ、ふらふらと、踊り狂っている。相変わらず、どんちゃかどんちゃか音を鳴らして、だけどもそれはどこか、悲しげな響きで。
巨象は、更に巨大になっている。空間いっぱいに、巨象が満ちる。巨象が潰す。
遊園地を潰していく。メリーゴーランドを潰していく。
崩れる。何もかもが……。
一つ、光が近づいてくる。奇乃だ。
「脱出するぞ、想馬。もう今しかない。草里は?」
草里は、巨象の目の前に立っている。草里は、動かない。今にも巨象の足が、高らかに上げられる。草里のその手にはもう、ピエロ斬りは握られていない。草里はただ両手を合わせ、祈っている。
「わたし、本当は知っている……ずっと、知っていた。あなたたちは、わたしが助けられなかったあの子たちなんだよ。ごめんね。ごめん……」
巨象の足が、振り下ろされた。
とても長い一瞬に思えたけれど、草里はその重い足の下に見えなくなるまで、ただ、動かぬ祈りを続けていた。わたしはそれを、見届けた。
奇乃がわたしを抱える。
中心が外側に、外側が中心に、吸い込まれる。
そこを、無数の天使が舞っている。
天使は……笑っている。誰も彼も皆、笑っている。
メリーゴーランドの回りを廻り、沈み行く遊園地の回りを廻り。
パレードが行く。天使の群れが、パレードに続く。次から次へと、天使の群れが訪れる。絶え間もなく。全ての天使の群れが、パレードについていく。
わたしたちは、いつ果てるともないその華やかな音楽を耳の彼方に聴きながら、暗い暗い筒のなかを巻き戻っていった。
パレードはあんなにも賑やかで、賑やかすぎてやっぱり、好きにはなれない。
そうして、パレードが行ってしまった後は、どうしてこんなに、こんなにも、いつも、いつでも、少し寂しい。
たまらなく、寂しい。




