8-5.シントーハのメリーゴーランド(2)
メリーゴーランドの黒馬たちがけたたましい鳴き声で鳴き喚く。
頭が、割れそうだ。すでに、敵の攻撃は始まっている。
草里が、ピエロ斬りを持った手を上げた。
総攻撃開始だ。
メリーゴーランドを廻る黒馬の背に、ちかちかとともる光は、天使たちの瞳。まるで無表情で、こちらを見ている瞳、瞳……
だけど、これだけ。ここにいるだけか。
「シントーハのメリーゴーランドを破壊せよ!」
草里が叫ぶ。
「天使どもの本隊は、出払っている。ここを滅茶苦茶にして、やつらを全部ここに呼び戻すぞ!」
草里が、駆ける。
茄場、総之上、久保田が続く。
わたし、奇乃も。と、奇乃が立ち止まり、灯かりを掲げる。
「ちっ。予想より多いな……!」
すると、わたしたちが来た後方一帯にも、無数の光る瞳。正面だけじゃない。すでに、取り囲まれていた。やはり気づかれていた。わかっていたこと。もう、進むだけだ。
先頭の草里に天使が群がるのを、茄場たちが必死で打ち払う。
「行け。草里!」
「想馬、草里を頼む。この先へ……おまえが導け」
草里の片腕を掴み、メリーゴーランドに飛び込む。景色が歪む。空間がまた一つ、ずれる。
メリーゴーランドの、内側……?
無数の天使が来る。
天使の歌声が波のように押し寄せる。天使たちに、腕や足を掴まれ、胸や頭の中までこじ開けられ、かき回されるよう。身体も、精神もばらばらに、引き千切られるよう。
何もかも、全てがばらばらに散らばりそうなその中心で、逆さ吊りになっているのは、ソラミミ。ソラミミを、一体の天使が吊り下げている。
下腹部が、天使と一体化している。まるで、天使を生んだみたいだ……それとも。天使から、ソラミミが生まれたみたいだ。その天使とソラミミの結合部が、何かを孕んでいる。何かを孕んで、蠢いている。もう一息で、生まれそうな。早く。早く! 生まれるよ! 天使たちがソラミミの周囲をぐるぐると舞う。
「ソラミミ!」
ピエロ斬りを手にした草里は、それを前に少し、躊躇う。
だけど……わかっていたはずだ。こうなることが。きっとソラミミにも、天使にも。草里は、呟く。




