7-6.厳しい戦い(3)
ぱぽー。
……という声が響いて、空間が元に戻っている。
わたしが見回したときには、元の場所、五本の木々の周りに、戦闘班の人たちがしゃがみ込んでいた。ひざを抱えたり、半ば寝そべっている人もいる。草里は……いる。よかった。やっぱりさっき、草里があの空間のなかで呼びかけてくれていたんだよね。
「そ、草里。やった、わたし……う!」
ぼごん。という何かひしゃげたかと思うような音が、わたしの頭から。……わたしの頭が、どうなった? 倒れこむ。
「五人も……五人も、死んだぞ!」
さっき、均一なので誰のどういう声とかわからなかったけど、聞こえていた声の一つだ。くらくらする。見上げると、戦闘班の男の人の一人が、歪な形相でわたしを睨み見下げている。握られた拳。殴ったんだ……わたしを。
この人は、何を言っているの。だって、死ぬのは当然なのが、戦いなのでしょう?
「……負け戦だ……完全に……」
別のとこでひざを抱え頭を埋めている男が言う。
そんなこと、言われたって。……わたし、精一杯やったのに。
「こんな小規模の戦闘で、確かに五人も失ったのは痛手だ。んなことはそうそうなかったぜ」
別の大きな男が来る。そいつは、ピエロ斬りをしっかりと握っている。わたしを、どうするの。それで、斬る……の。
わたしはいつの間にか泣きそうな顔。草里を探す。草里は、遠くに立っているまま。
「ちょ、ちょっと……あなたたちだって、わたしの友達四人を、ほとんど見殺しにしたんでしょう! まだ戦場に出るのが初めてだった、四人を……」
「うるさい……こっちは五人だ。ベテラン五人だぞ」
「そ、そんな。あの子たちは、大事じゃなかったわけぇ!」
「……負け戦だ……おまえのせいだ……」
わたしを殴ったやつがまたわたしに迫り来る。ピエロ斬りを抜いているもう一人の大男がよろよろとにじり寄り、わたしを挟む。
スキンヘッドもやって来る。ピエロ斬りを抜く。
「こいつはもう、駄目だ」
「そん、なあ」
わたし、殺される……!
びゅん、っと一閃が走り、倒れる。
倒れたのは、目の前にいた、わたしを殴った男。
「え……」
わたしはぺたんとへたり込む。死んだ、この男。スキンヘッドに斬られて。
「おまえもか?」
「ち、違う。わた、しは」
びゅん。わたしに向けてピエロ斬りが振られた。
びゅっと血飛沫が飛ぶ。
わたしの後ろで、ピエロ斬りを抜いていた大男がどだん、と倒れた。死んだ……。
スキンヘッドは、ピエロ斬りをもう一度びゅんと振って、血のりを拭うと、それを仕舞った。
「え……」
何人かが、わたしとスキンヘッドの方へ来る。何を、しているの。まだ、殺し合う、の。
「おう新人。ソラマタだっけ」
リーダーの男……蛭賀が来る。
「ソラミミ……です」
「よくやったな」
「はい……?」
草里が、ふらふらとした足取りでやってくる。
周りでは、ぶつぶつと何か呟いたまま、しゃがみ込んだままの者もまだいた。
「寒かった。冷えすぎた。遅すぎだ」
「え……草里、まだ変なカタコト」
スキンヘッドが、すっと遮る。
蛭賀はわたしに向かい、
「まあ、反省会は後だ。おい、一分以内に立ち上がれない者はここに置いていく」
しゃがみ込んだままの者は、三人。リーダーの声が聞こえないように、そのまま、しゃがみ込んだままだった。そしてそのまま彼らは、放置された。
「これが……戦闘班の、戦い」
「そうだ」
スキンヘッドが言う。
「それから、おれはスキンヘッドじゃねえ。茄場だ。わかったか、ソラミミ」
あれ? さっきの異空間のとき、かな。思念と思って口に出しちゃった? それともわたしの心でも読めるのか、このスキンヘッド……茄場さん、は。
「寒。帰る」
カタコトの草里が歩き出し、皆も歩き出す。
わたしは辺りをもう一度見渡した。小象の姿は、なかった。




