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ソラミミ  作者: k_i
第7章
33/46

7-3.戦闘班

「こ、こんにちは。探索班から来ました、空丘耳穂、です。少しでも皆さん戦闘班のお役に立つべく……ぇぇと、……うぅ」

 

 誰もわたしの話聞いてない?

 出発三十分前。顔合わせに、班の皆が準備して集まっているところへ出されたわたしであったが。であったが……うう、本当に反応がない。何なの。草里の方を見ると、草里まで反応がない。無視を決め込んでいるようだ。おいおい!

 

「どうした? 続けろ」

 後ろの方にいるでっかくて黒いスキンヘッド。が言ったと思われる。わたしの方を見てはいないので、確証もない。誰も口を利かないし。

 

「……こわい」

「恐くねぇよ続けろよ」

 また別のどこかから声。

「う!」

 つい漏らしてしまってたみたいだ本音を。くそう。草里、助け舟も出さないでこんなこわいやつらの雰囲気に溶け込んでるし。

 

「あ、あはは、……どこからでしたっけ。空丘耳穂、皆様のお役に少しでも立つべく、尽力する次第です」

 

 まるでしーんとしてる。

 よく見ると皆、特殊スーツとでも言えばいいのか黒っぽい全身を覆うスーツを着用してる。で、それから硬そうなブーツやら、肩パッド(……なのかな?)やらヘルメットとかをかちゃかちゃと装着中。

 なるほど、戦闘班っぽいや。

 その道のプロというべきか専門家集団というべきか。でもあの、スキンヘッドはヘルメットを付けないな。スキンヘッドに自信があるのだろうか。ヘルメットを装着した方が弱くなるとか。

「ぷぷ……」

 急に全員がわたしの方に視線を集中する。やばい、すごい殺気。

「や、いや別に、笑ったわけではなく、ですね」

 

「おう準備はできたか」

 しどろもどろ言うわたしの真後ろから、これまたでかい大男が来る。あ、さっきわたしに自己紹介しとけって言ってどっか行った人だ。

 

 全員の視線には殺気熱気が漲っている。これが、戦闘班。

 

「おう貴様は自己紹介したか?」

「いえはい、確かに」

「どっちだ?」

「しました」

「おう、てーことでこいつが空股だ」

「ソ、ソラマタ?」

「今回の索敵はこいつに一任する」

 

 皆の尚殺気熱気。一任されたことに少し後悔しそう。

 

「あと五分で出発する」

 いよいよかどきどきだよ。

「ところで、空股おまえ」

「はい」

 もう空股でいいです。

「スーツと装備はなしで大丈夫なタイプか? 着用を命じたよな」

 

 いやー命じてないですって! 大丈夫なタイプ、って何ですか。あのスキンヘッドとは違うんだから。何かこれがないと死ぬフラグすぎるよ。

 

「死にたくないんですけど……っ」

「あと四分。着替えろ」

「ほれこれがスーツな」草里が来てくれた。って何であんたがわたしのスーツ持ってんの。

 他の皆はもうゲートホールの前に行っている。

 

「誰もあんたのなんて見ないから、早く着替えなここで」

 もう泣きそうになりながら、制服を脱いでシャツの上からスーツを着始める。あとこのパーツっぽいのは向こう行ってからでいいかっ。後衛だし、直で敵と当たるわけじゃないしね。

「草里頼むよ。頑張って」

「ん。まあ、あんたを守る余裕はないけどね」

 そんなあ。全然、守るとか言ってたのと違うし。

 

 ゲートホールが開く。

 吸い込まれていく。

 すぐに暗く、重たげな空気に包まれる。こんなにどんよりした場所、なんて……

 

 探索で行った夢の中の風景とはまた違う、異質な空間。淀んで、流れの止まった、死のニオイの充満する水の底……へどろに埋もれた。そんな重苦しさ。

 はっとして、身構える。ここはもう、戦場なんだ。気を抜いててはいけない。いつ、どんな敵が来るのかわからないのだから。今、敵のいる気配はないようだけど……。

 

「大丈夫。まだ敵はここにはいない」

「えっ。草里」

 草里が、すぐ隣にいてくれてる。安心する、何だか。

「何、きょとんとしている? だって、敵を探すのはあなた。あなたが探さなきゃどこにいるか」

 さっぱり、というジェスチャーをする草里。

 んっ。気づくと、スキンヘッドとか大男たちもわたしの周りに集まって、腕組みしたり首をコキコキ鳴らしたり。早くしろ……か。

 

「そ、空丘これより索敵開始しますっ!」

「……ならば行くぞ」

 冷めた返事。草里も、何も反応なしにそれに続いた。戦闘班の人らってこんななのか。草里と、どこか雰囲気が同じ。

 わたしも、少なくとも冷静になろう。これから先、死は目の前にあるんだ。

 

 

 *

 

 

 三十分程経過したが、何も手がかりになりそうなものは見つからない。

「うーん……」

 なんか集中できない。緊張のせいか。

 すると皆が急にピタリと止まった。緊張が……高まる。もしかして、敵の方から来た? とか。

「飯だ!」

「うっ」全然、そうじゃなかった。

「休憩、ってことよ」

 草里がこん、っと軽くわたしの肩に体当たりする。

「皆、怒ってるかな、わたしが見つけるの遅くて」

「いやあ。こんなもんだよ」

 草里は言いつつ、腕に装着した硬そうなパーツから、おにぎりを取り出して口を、「見つかるまではね。んむ」あんぐり、と開け齧り食べる。

 ……一体どういうパーツなんだよ。実戦的ってことか、これが。

 

「おにぎり! わ、わたしのにも?」

 ……入ってなかった。

「そりゃあ、自分で入れてこなきゃ」

「わかるわけないよ! こんなことまで、実戦で学べっていうのか」

「わたしは、すぐに学んだ」

「……まあ。一回見れば学べるでしょうけどこれは。(次から絶対入れてくる!)」

 草里がおにぎりを半分、ちぎって渡してくれた。

「え、ええ。いいの草里? しっかり食べておかなきゃいけないのでしょ。戦うんだから」

「いい。いいって。その前にソラミミが見つけてくれなきゃ戦えんよ」

 

 草里は、おにぎりを食べている男たちをおにぎり持つ手でふい、ふいっと指差して、小さく呼んでいく。

 

 蛭賀(ひるが)。わたしに自己紹介しろって言ったリーダーっぽい大男。

 茄馬(なば)。スキンヘッドの大男。

 総之上(そうのじょう)。やはり大男だけど、ちょっと線が細くておそらく女子全般的に好感度のありそうな要は美形の男。

 

「戦闘になったら、あの三人の動きをとくに見ておくといいわ。うちの班のベストスリーかな」

「ふぅん。草里より強いのいるんだ……」

「前の二人は筋肉でも好きじゃないとちょっとだけど、総之上なんてちょっとよくない?」

「……はっ。え、ええっ。何のベストスリー? いい男ベストスリーなら前の二人は除外でしょ! ってか草里ってそんなこと……」

「いい男っていうか、おとこベストスリーだけど。まあせっかく学園を抜けてやってくんだから。あなたも少しは物色しなさいな」

「ううっ草里が色気づいた……うう、そうね、えーとわたしはぁ」

 

 こうなったら負けじとだ。筋肉はやっぱり……ないよなぁ。筋肉且つスキンヘッドも、ない。ここはやっぱり、総之上さん。長身で線が細くって、ピエロ斬りは腰に差してるし(ちょっとヘン)、男なのに長い髪を結ってて(もしかしてちょんまげ、てやつ?)……なんだか侍みたい?

 

「ふーんなるほど」草里がわたしの視線の先をしっかり追っている。

「ソラミミの方だって、けっこう惚れっぽいみたい。でもあの人、」総之上を顎で指して、「中身は変態だそうだから、ソラミミにはちょっと早いかも」

「げえ。草里、少し見ない間にずいぶん、進化したもんだね。じゃあ、えーっと」

 戦闘班の人たちを目で追って思う。皆無愛想でぶっきらぼうだけど、草里にとってはすでに何度も死線を共に抜けてきた戦友、か。

 

「選び悩む? ま、無理しないでいいけど。それにわたしのいちばんは、ソラミミなんだから」

「ちょっとまたそれ」

「戦いが終わったらゆっくり、楽しもう」

「…………それって」

「フラグはきちんと立てておかないと」

「不吉なフラグは立てないでよ」

「百合フラグなんだけど」

 

 それは前からじゃない。もう、いいよ。……今は。何としても、任務を果たそう。

 わたしもこの人たちと打ち解けたい。きっとこの人たちだって、奇乃や樽辺先輩のようにちょっと変わってるけど根は、いい人に違いないんだ。そうじゃなきゃ、組織の一員として任務のために戦わないでしょう?

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