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ソラミミ  作者: k_i
第6章
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6-2.探索班

 記憶……依頼主がどうしてもなくしたくなかった記憶を、探す……か。

 

「じゃあバイト、先輩の奇乃(きの)と二人で行くことを覚えよう。奇乃が灯かりで照らすから、おまえはそれを頼りに探し物をするんだ」

「へーえ」

 それはちょっと、面白そうかも。

樽辺(たるべ)先輩や、奇乃先輩以外の他の先輩方は、どういう役割を?」

「おれたちは、探索のいわば護衛だね。さっきみたいなのが来るから、追っ払う役」

「ええー……」

 来るんだ。さっきみたいなの……。

 

「とにかく、おまえが見つけられない限り、おれたちは帰れないんだ。しっかりやれよ」

「えっ。探索役は、わたし一人なんですか?」

「そうだ。まあ灯かり係の奇乃とのコンビだが。やつは優秀だから、頼るといい」

 そんなメインを、バイトにやらすかなあ。

「で、奇乃先輩っていうのは……」

 すてきなセンパイかな?

「うるさい。さっさと探せ。ほら、照らしてやるから」

 あれ。あの小男だ。いたっけ。大人たちに隠れて見えなかったのか……いや。それはともかくとして、だ。この人が、奇乃先輩? 何だか、こんな展開はないんじゃない。いいことなしよ。

「何してる。ほら、行くぞとんま」

 

 

 奇乃が手に持つランプのようなもので、辺りを照らす。薄ぼんやりとした灯かり。ランプのようなもの、っていうかこれ、普通のランプじゃない? ただ、照らしているだけじゃないですか。と思うけど、口にしたらそんな単純なものじゃないとか言って、説明もなしにぽかんとやられるのだろう。口にはすまい。

 

「先輩すこうし要望が。もうちょっと、明るく、鮮明に照らせません? それから、できればもっと広範囲を、い、いたいっ」

 ぽかん、と。

「おまえ、これ以上の光を要求するのか。この場所でこれだけの光が出せるやつが、おれ以外にいるか。いるわけない、ってレベルの光なんだ。ありがたく思え」

 

 この水底のような暗い場所。あちこちにへこみやでこぼこがあり、風景はゆらゆらとして、はっきりしない、ここもどこか夢を思わせる場所。へこみやでこぼこにできるどんよりした闇を、灯かりで照らす。こういうところに、あることが多いらしい。

 

 ふう。気が滅入る。上を見上げても、水の上に陽がありその光が差し込んでいるという印象はない。どこまでも一様に暗くどろどろとしている。

 

「ここは一体、なんなのでしょうね。先輩」

「依頼主の夢だ。ひとことで言えばな」

「え、そんなとこに勝手に入り込んでいいのでしょうか?」

「馬鹿か。依頼を受けてやっているに決まっているだろうが。だから依頼主と言っているに」

「他人の夢に入る……そんなことが」

 

 わたしは、わたしの夢に潜る力があるわけだ。おそらくわたしと同じタイプの力を、そういうふうに使える人が、いるんだな。と考えたところで、わたしはあの子のことを思い出す。想馬 灯。あの子は、わたしの夢に入り込んできた。

 

「実際には、その依頼主の夢そのまんま、ではなく、簡単に言えばその再現なり反映なりといった、そんなところのものだ。今回みたいなケースはな。実際にそのままの夢に入るのは、もっと難しい仕事だ」

 あのマンホールの蓋みたいなのはゲートホールと言って、それを別室で管理しているオペレーターにあたる使い手たちが管理しているのだという。

「とすると、そこでなくした記憶、というのもまた、本物ではないということですか?」

「ふむ。その辺は実際はかなり説明が込み入るのだが、そうとも言える。なくした記憶そのものを精密に思い出す、ということはそもそもできないと言っていい。依頼主にしてみれば、おおよそこんなだった、というレベルで記憶を取り戻すことができれば納得がいくだろう? 記憶自体、徐々に薄れたり形を変えていくものなのだ」

 ううん。何となく釈然としないような。

「ええと……だったらですよ」

 と言いかけて少々、奇乃の顔色を窺った(と言ってもローブのなかの表情は見えないのだけど)。そろそろうるさいと来るかなと思い直したのだが。

「なんだ。急に止まりやがって」

「え、ええ。だったら、こんなふうに、いちいちまず夢を再現して、そこまで来て、そんな曖昧で広大な場所から落し物を探すなんてことをせず、記憶そのものを作り出す、というふうにはできないのですか?」

「あのなあ。どういうものかわからないものを、どう作る?」

「そ、そっか。そうですねすみません」

「ただ、そういうことをする輩も、いるにはいる。贋物をでっちあげて、渡しちまうんだ。けどそんなことをしたら相手はどうなると思う。下手すりゃ頭がおかしくなって、廃人になっちまうぜ。まぁ地下にはそういうトンデモ業者もいるってことだ」

「へぇぇ。恐いですね。うちは、まともな組織だったのだなぁ」

「あたりまえだ!」

 

 おーい、いつまで気ままに休憩してんだ。と樽辺さんの声がする。護衛のメンバーは、少し離れたところを巡回している。あまり近づくと、明かりや探索に影響するからだ。探し物は慎重にしないと、探し物そのものが隠れたりしてしまうこともあるというふうに教えてもらった。

 

「よし。おれの講義はためになったろ。仕事するぞ」

「あ、はい」

 嫌なやつだけど、先輩としては確かに優秀なのかも。

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