5-4.組長と個人面談
帰りがけに、組長との個人面談を思い出していた。
「おまえ、手わざ系なんだとな」
組長は、向かい合うとまた唐突に話を切り出した。
「えっ、はい……」
「珍しいんだ。ここへ来るやつは大体、斬るのばかりだ。荒ぶってるのとか自分の強さに自信があって試したいやつとかな。そういうのが多い」
草里のことが浮かぶ。草里はまさにそうだと、取られているんだろうな。草里もここでは、一介の新人剣士ってとこになるのだろうか。そんに強い人いっぱいいるのなら。
「おまえもあの草里に連れられてきたのか?」
「ええっと。まあ……」
「いやならやめていいんだぜ」
「そうですね。はい」
「っておい。速ええな。だがおまえその意味では、他のやつのように草里にびびってるわけじゃないみたいだな」
「びびってる?」
「ああ。あの草里ってのは、言外に人を従える力がある。皆草里にのせられてきたわけじゃないと言っているが、どこかで草里に従わされている。草里に魅入られているとでもいうか」
「草里ってそんな力あるんですか」
「ああ、そうだな。俺は久々に期待できるやつが入ったと思ったよ。ただ、本人はそういう能力には自覚も興味はないみたいだな。が、それはそれでいい。草里はとにかく腕の方だ」
へえ、そうなんだ。この組長から見てもやっぱ草里はすごいのか。
「ただ難点もありそうだな」
「難点」
「あの手のは、死に急ぐタイプってのか……」
そこは組長はぼそぼそと、明言を避けたようだった。
「あまりこういうことは言いたくないが」
「えっ?」
「おれは、おまえにも期待してるんだ」
またあ。なーんてみんなに言ってるんでしょ。
「皆に言ってるわけじゃない」
うへっ心ばれてた。
「おまえには……その草里をいずれ導いてほしい」
「へっ? わたしが草里を?」
「まあ、今そのことはいい。俺たちにはおまえみたいな手わざ系が少ないと言ったよな。当面おまえにやってほしいこと、おまえにやれることは、敵の居場所を探すことだ。おれたちは敵を倒すことにかけてはプロだが、その敵の居場所を探すことがあまり得意ではない。ま、外注に出すことがけっこうある」
「外注? その道のプロがまたいるんですか? わたし、そういうとこに行った方がいいのかな」
「ま、待てこらっ。その、やつらに出すとけっこうとられるんだ」
「あ、お金っすか」
「おまえにはしっかりバイト代を出す。いい待遇をしてやる。おまえの友達もいるんだし、とりあえず慣れるにはまずここにしな。それに外注ってったやつらはたいがいはあれだ、人間じゃねえんだ。おまえには馴染めないよ」
「えっ。そっか……じゃあ、ここには、わたしの先輩にあたる人はいるんですか? その、わたしと同じ力というか、その手の」
「そうだな。少ないが、ゼロじゃない。あまり腕がいいとは言えないし、専門は別ってやつが多いが。無論、おまえより実践はこなしているさ」
「ふーむ。それは面白そうかも」
「なっ。だろ」
「うん……ちょっとやってみようと思います」
「草里たちは前衛、おまえらは言わば後衛だ。前衛は戦うのが役目だから、敵に斬られて死んでも仕方ない。だが、おまえたちはおれたちが責任をもってしっかり守ってやるよ。その点は、安心しな」
そのような組長とのやり取りがあって、バイトということなら気もラクだし、一度学園に戻ろう、と思ったのだ。
自分の力をもっと知り、それに役に立たせることができれば、という思いもあった。
色々聞きたいことはあったが、その日以来、組長にも、草里にも会えない状態が続いていた。
このままこんなところにいるだけじゃ、陰鬱になってしまう。




