5-3.組長と面談
翌日、起床後しばらくすると呼び出された。
通路を一人歩く。ここは昼も夜もない、同じ薄暗い感じ。
組長室へ出向くと、扉は半分開いてて、中から入れ、と声がする。他の子らはすでに来ていた。また、小男か。「組長は間もなくいらっしゃる。このまま少し待ってろ」とだけ言い、出て行った。組長室も、通路ほどではないが少し暗くて、青みがかっている。
昨日すでに話を付けている草里を除いた五人を前に、組長が現れる。これが組長との初対面となった。
確かに、些かごつい体躯に髭の壮年男だが……髭と言っても立派なダリ髭やごわごわの髭面ではなく疎らな無精髭で、何より髪が薄いためか、思っていたような迫力は感じなかった。強面で恐いというよりはどちらかというと少し病的な印象を受けた。
組長は前置きなしに、至って真面目に話し始める。
「世界にはたくさんの澱みがある。
おまえたちのいた学園では、おまえたちも知っての通り、人の世で行き場をなくした漂う負の感情といったものから生じる様々な異形を退治する戦士を育てている。こういったものを放っておけば……ただでさえ人はそういった感情に捉われて諍いを起こすが、そういう形のないものを始末する者がなければ世の中はもっと酷いことになっているというわけだ。
学園が手を付けるのは、人に関わるものだけだ。我々が手を付けるものは、人に関わるもの、の内でより厄介なものとかの依頼を受けることもあるが、おおよそ人の世に直には関係のないものだ。だが、そういったものを放っておくと、世界はもっとおかしなことになるんだ。どこかで歪みが生じる。歪みが深くなる。結局それは廻りまわって人の世に災厄をもたらすわけだが、学園のやつらはすぐに影響をもたらさないようなものは放置してるってわけだ。
無論、こいつらは学園にいるような教師どもの手には負えない。学園で教えているような生易しいやり方じゃこいつらは退治できねえ。説明できるような方法じゃねえんだ。だからほとんど実践で身に付けるしかない。まあ俺たちはそのベテランだ。そのなかでもどういうのなら初心者の手に負えるかわかるし、勿論初心者だけではいかせねえ。ケアも尻拭いもちゃんとする。そこは安心してくれ」
組長は一度、ひと息入れる。
「何か質問は?」
皆は黙っている。おおよそ緊張しているらしい。わたしもちょっとだけ。
「入ったら抜けられないとか厳しい掟があるとかってこともない。恐がらないでいいよ。ただ、危険な仕事であることは間違いないってことだ。俺たちにだってまだ未知の領域はたくさんあるんだ。
学園のように決まった勉強をする必要はない。メシもタダ。自由だが自主性が重んじられる。
で、それでも深入りするのが恐いやつは、たまにそういうのも受け入れるが、まあバイトってことでもいいぜ。というかこの仕事自体が、仕事ごとの請負っていうのかまあそういうもんだ。おまえらはフリーのハンターみたいなもんだな。
バイトって言ったが、要は何なら、学園に通いながら暇なときにやってもいいぜってことだ。最初の内はな。だが、いずれは決めないといけない。この仕事がやっぱ無理って思うなら、しゃばの仕事に戻りな。抜けられないとかはないって言ったが、この仕事、長く続けると簡単に言えば嵌る……どうしても、深みに嵌っていく仕事なんだ。浅いところじゃもう泳げねえってことになる。それに、バイトっても仕事で死ぬ覚悟はしてくれ。恐ければ早々にやめることだ。そうなる前にな」
最後は、「質問は?」はなく、この後個人面談をするとのことだった。
結果、皆は残ることにしたようだ。わたしを除いて。
わたしはそこで三日を過ごした後、一度学園に帰ることにしたのだ。
任務というのも、そう毎日あるものでもないようだし、何となく退屈で持て余し、組織には訓練場を兼ねたスポーツ施設や、レジャー施設、売店街まで揃っている充実ぶりだったが、あの薄暗い雰囲気にはまだ慣れなかった。残った女生徒らとも会えば会話して、彼女らはそこそこ馴染んでいる様子だったが。
草里はさすがの早速の特別待遇というのか、何か特殊な訓練なりに呼び出されているということで、三日間、会うことは叶わなかった。少し、草里が遠のいてしまった感じ。これで、よかったのかな。




