表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソラミミ  作者: k_i
第5章
22/46

5-2.わたしたちこれから どうするの2

 組長室の方へ逆戻りすると、扉の前に出ているのは、草里のようだ。草里を前に、生徒ら。

 随分長く話していたな。草里……無事だったんだろうか。

 

「草里? ごめんなさいちょっとトイレ」

「ソラミミ。皆も聞いてくれ。組織と話はついた。悪くない条件で、全員組織に雇ってくれるってことになった」

 ……よかった。ひとまずは、居られる場所が確保された、ってことか。

「それから、組織はすでに学連とも話をつけた。だから、戻りたいなら、学園に戻るのも自由だ」

 

 えっ。

 生徒らもそれを聞いて少し、ざわつく。

「けど、草里、わたしたちは学園の先生だって切ったりひどい目に合わせたし、学連相手にあれだけ……それに、入間(いるま)さんのことも」

 わたしはもじもじしながら、色々聞きたいことを整理するが、まとまらない。

「そういうことひっくるめて全部、もう話が済んでるんだ。雲の間に学園の先生も一部入れ替わっている。赤居も。三馬鹿の代わりもすでに。それから、入間の父親はもう学連にはいない」

 いない、って……?

 でもそこ以上は言葉に出して聞けなかった。

 もしかしてここ、すごい権力を持った組織だったりする、の……?

「本当に、何のペナルティなしにもと通りに戻れるってことですか?」

 一人が聞く。

「そうだよ。但し草里楓は除いて、っていうのは条件だけどな。他の生徒は皆、草里に加担させられていた。そういうことだ」

 ここまで付いてきた生徒らだが、これを聞いて少し安堵している様子の者らもいた。

 

 わたしも……少しそうだ。

 けど一方で学園に戻るなんて、そんなことってあるのだろうか。という思いもある。

「だから、……ん。どうした、ソラミミ? なんか落ち着かないな」

「ごっごめん。トイレ」

「あ、わたしも」「安心したら何か」さき付いてきた二人もそう言った。

「行ったのじゃないの? あっちにあるあれ、そうじゃないのか」

 

 わたしが行ったのと反対方向の通路の遠くに、ピンクっぽい灯かりが。行ってみると、そうだった。けど変な灯かり……青っぽい空間のなかなのでわかりやすいのはいいんだけど。

 

「あの、ねえ……あの、どうするの?」

 事を終え手を洗いながら、一緒に来た二人に、聞いてみる。

「そうね……」

「わたしは、学園に戻ろうと思う」

「本当?」

「草里さんの持つ考えは、もっともだって今も思う。けど、わたしたちが犠牲者を出してまでした今回のことそれだけでも、すでに意味はあった、と思うの」

 このたった数日に起こった色んなことを思い出す。

「わたしには、草里さんのような才能はないってわかっているし。ほとんど、……死んでいった皆のように戦いもできなかったけど、意味のあることに参加して、それに草里さんを組織まで送り届けることができた、って思うようにしようと思って。上手く、説明できてないかもしれないけど」

 わたしも、これからここでやっていけるって自信はないな。

「……そう」

「空丘さんは、草里さんの片腕として是非彼女を傍で助けてあげて」

「そ、そんな、片腕……だなんて」

「そうよ。あなたと草里さんとの仲は、皆知ってるんだから」

 

 え……どういう意味だろう? 入間の部屋でのことを思い浮かべてつい赤面してしまう。郡さん、もしかしてわたしのいない間に言ったんじゃないよね?

 だけど……どうしような。本当に。

 

 

 さっきの子たち含め三人が、すぐに荷物をまとめた、って持って来た荷物なんて何もないな、気持ちをまとめたってことだけど。 

 例の小さな男がまた来て、地上まで送り届けてくれるという。

「おまえは、帰らないの?」

 そうわたしに言う小男。

「え、あ、はい」

「ふぅん」

 ちょ、ちょっと何よ……帰れってかよ。感じ悪。と思いつつ、

「わたしは、見送りです」

 微笑しておく。暗がりなので、ひくついてても悟られはしまい。

 三人を、見送る。

「草里さんによろしく」

 草里は来ていない。というか見送りに来ているのはわたしだけ。だからさっきああ言われたのか。

 小男は、小さな丸い部屋で、想馬さんがしたのと同じようにまじないじみたことを始めた。この部屋にはあらかじめ、魔法陣の模様が刻まれて、薄く発行している。小男が準備を終えると、光が強まり、三人は姿を消した。無事、戻ったのかな。そしてまた前と同じように学園に通うのだろうか。

 

 三人が行って、小男と二人になる。

 小男は何も言わず、元来た道を戻っていく。わたしはそれに続く。

「おまえ、なんでついてくんの?」

 ……ちょっとイラッと来つつも、わたしは微笑よ。

「あの……道、わかんないんですけど」

 来たばかりなのに、あたりまえじゃん!

「おまえ、腹減ってないの?」

「あ、そう言えば」

「残るやつらは、食堂に飯用意してあるからってアナウンスしたんだけどな。ちゃんと場所も教えたし」

「わたし、聞いてないんですけど」

「ふぅん」

 ふぅんじゃないっ、こいつ、絶対わたしをカモにしてる。

 ああ、じゃあ今頃草里たち、残る人皆で食事してるんだ……なんか悲しい。

「食堂、ここ」

 小男が指差す。

「あ、ありがとうございます!」

 

 なんだ、一応案内してくれたんだ。急ぎ足で部屋に入ろうとするとフン、と後ろで声が聴こえる。何よあいつ。ああいう嫌なのがいるんだよな。まったく。

 ようやく、明るいっぽい部屋に来た。思ったより全然小奇麗な食堂だ。トイレなんか真っ暗だったのに。この組織へ来て初めての明るい部屋に、心が照らされるように安心する。

 皆の顔が見える。残ったのは、草里入れて五人、か。で、わたしで六人。

 

「ソラミミ。トイレ長かったな」

「え……ええ。あ、それから、聞いた? 三人……」

「ああ」

「草里によろしく、って」

「ん……ありがとう」

 草里が食べているのは、うどんか。皆もうどんかラーメンか。何か、安っぽい学食くさいなあ。

「食券あっちで」

 草里が箸で指す。

「あ、うん」

 ええっと。ラーメン、うどんとも三種類ずつくらいある。あ、ハヤシライスあるや!

「ごちそうさま」「草里さん、お先に」「空丘さんも、おやすみなさい」

 わたしが食べ始める頃にはもう一人二人と食べ終えて、食堂を出て行く。

 おやすみなさいだって皆、もうここに馴染んだみたいな感じ。そんなものかな。

「皆、どこへ?」

 草里はうどん二杯目だ。小さい体なのによくぞそのように。

「一人一人、部屋が割り当てられてるよ。まだ仮部屋って言ってたけど。おっハヤシだ。あったの?」

「へえ。あっ、ハヤシね。うん隅っこにあったよ」

「ハヤシかあ……あったんなら一番、食べたかったな。でもうどん二杯食ったし……ソラミミ半分もらっていい?」

「だめ! は、半分もまだ食べれるの?」

 

 その後は黙々、食べた。それからまた少し、他愛のない話を二人でしてた。 

 久々に、草里と二人で普通に会話した気がする。でも、もうこれはあの学園での日々ではなく……

「じゃあ、今日はわたしも休むよ。明日、ここに残るんなら、組長がソラミミたちにも会ってくれるって」

「ああ、そうだよなあ。会わなきゃなんないのか。ねえ……」

「うん?」

「組長って、どんなだった?」

「ええ、別に、普通の……でかくて、髭の」

 げえ……普通じゃない絶対。最初の強そうで強面なイメージがまたぐんぐんわいてくる。

 

 食器を片付けて、通路を歩く。

「わたしの部屋は番号からするとこの階段上だな」

「わたしは、この階をつきあたりみたい」

 幾つかの部屋が、等間隔で並んでいる。扉から明かりや音はもれてこないけど、他の皆もこの辺なのかな。

 草里は、じゃね、おやすみ。と行ってさっと階段を上がっていく。

「あ、おやすみ」

 おやすみ! と姿の見えなくなった草里の声が響く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ