表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソラミミ  作者: k_i
第5章
21/46

5-1.地下組織へ

 薄暗く、どことなく青っぽい。静けさと、かすかなつめたさに包まれている。

 トンネルみたいな円形筒状の通路を、黙々歩いていく。

 

 想馬(そうま) (あかり)さんに案内されて、と言ってもずっと一本道を、単に想馬さんの後ろに付いてぞろぞろ歩いているだけなのだが。

 所々にライトが点灯。トンネルは段々と広くなってきてちらほら扉も見えてきて、いつの間にやら人が影のように時々行き来している。

 この人たちは、組織のメンバーなのだろうか。とくにこちらに関心を示す様子などはない。

 

 想馬さんのとこに、通路の脇に侍っていた誰かが来て少し話し、それからいちばん後ろを歩いていたわたしのところへ来る。暗さのせいで、影のようにしか見えない。

 

 小象を指差して、この子はこの先へは行けないから、ひとまず預からせてもらうわね。と言う。大人の女の人らしい。声が、トンネルっぽいこの場所のせいなのかどこか曇って聴こえる。きちんと責任を持って預かる。と、想馬さんが付け足す。そこのところは安心してね、ともう一人の影の女の人が言う。

 わたしはコクリ、と頷く。

 小象が行ってしまうと、皆はまた「こっち」と言って歩き出した想馬さんに続く。

 

 わたしたちはこれからどうなるのだろう?

 どんなとこなのだろう、ここは。厳しかったらどうしよう。やっていけるのだろうか。それにもう、もとの世界には戻れないのかな。

 今は誰も口を開くこともなく、わたしも黙っている。

 やがて、通路に分岐が現れ、幾つかの分岐を右へ左へと進む。迷路って程ではないかもだけど、普通に迷子になりそう。

 内部全体がほの暗い印象なのは変わらないけど、最初の通路より幅は狭まって、学園とか、いや病院と言った方が印象が近そうだけど建物のなかだというふうには思えてきた。それから階段を、三度程下りる。青が少し深まる。十五分くらいは歩いた気がする。

 

「ここが組長の部屋よ」

 通路の脇に一つある扉の前で止まり、想馬さんが言う。

 く、組長……だって。まあ、組織、なんだからその長で組長ってことになるけど。何だか響きが。……やっぱ恐そう。来なけりゃよかった?

 トントン、と扉をノックしてから、想馬さんは、

「では、わたしはわたしの任務が残っているので、これで。また会うこともあるでしょう」

 去り際、

「草里さん」

 一度振り返る。草里が、軽くそちらを見る。暗いトーンの青のなかで、二人も、周りの皆も、ほとんど影絵だ。

「言い忘れていたわね。歓迎するわ。ようこそ組織へ。……健闘を祈るわ」

 想馬さんは去っていく。草里はフン、といった様子だ。

 扉が少し開き、フードを被った小さな人が半分姿を現す。全身ローブ姿だ。

「そこで少し、待て」

 また扉は閉まる。

 どことなくどんより沈んだ空気。重たい。相変わらず、女生徒らは誰も口をきかない。草里からは何となく早くしてくれないかなみたいな気配を感じるけど。皆はやっぱり、緊張しているのかな。

 さっきの小さい人が出てくる。

「入るのは、草里(そうり) (かえで)一人でいい」

 これも場所のせいなのか、どこか人間じゃないような、膜の張った声。男の声のようではある。

「後の者は、待機していろ」

 そ、そんな……草里、大丈夫かな? 何かされたりしない? 草里に限って大丈夫だろうと思うけど、けど、地下組織の組長だなんて、とんでもなく強そうで恐そうじゃない?

 草里は躊躇もなく入っていく。

 小さな男の方は、草里が入って扉を閉めると、部屋には戻らずどこかへ行ってしまった。

 

 取り残された七人。

 喋ることもない。はあ……そうだ、もう、(こおり)さんもいないんだね……残ったのは、七人、か……。郡さんがいない、と、ふと思ったけど、そのことの実感がイマイチわいてこない。当たり前みたいになってしまっている恐さ。その恐さというのもまた実感がない。ただ、当たり前、か。そうじゃないのに、ただあの子は、あの子たちはどこかへ引っ越したりしていなくなってしまっただけなんだ、という実感の方が近い。死というものが、わからなくなってしまいそう。

 

 扉の向こうからは、かすかな話し声も何の物音も聴こえてこない。

 他にここを通る人もいないし。

 十分は経った? もしかしたら三十分くらい? 時間の感覚がわからなくなる。なんだか、むずむずしてくる。これは……

「ちょっとその……おトイレって、どこにあるのかな」

 尿意というものの実感はあるわけで。わたしは、生きている、ということか。

 壁にもたれたり、半ばしゃがみ込んだりしていた皆が、わたしの方を見る。

「あ、まだ、かかりそうかどうかも……全然わかんないよ、ね」

 影絵の皆。何も言わない。

「えへへ……ちょっとその辺、探してくる」

 何となくこの空気の重たさに、耐え切れないや。

 あ、わたしも行く。わたしも。と、一呼吸遅れて返事が来て、歩き出していたわたしに二人が付いてきた。

「あ、うん。なんだか、待ちくたびれちゃうね?」

「うん。行こう」

「行こう」

 

 ようやく沈黙が破れて、まるで学園で友達と一緒にトイレに行くような雰囲気で、緊張が解れる。

 通路はやっぱり、暗く、長い。

 誰も、また口を開かなくなる。

 ふう……。

「あ、誰かいたら、わたし聞いてみるね? トイレの場所」

 うん。と、一人が短く応えた。

 また同じくらいしばらく歩くと、小さな人影がこちらへ向かってくる。あれ、さっきの組長の部屋から出てきた人? だよね。たぶん。

 ああよかった、ちょうどよかった!

「あ、あの、すみません」

「何している。ここは、勝手に来られては困る区域だぞ」

「え……」

「組長とおまえたちリーダーとの話が今しがた、着いたそうだ。戻れ。早く」

 えっ。そうなの、じゃあ。と後ろの女の子二人は言い合っている。え、トイレはいいの皆さん……

「え、あ、あの」

 とりあえずわたしは本当行きたいんだけど。

「なんだ。もぞもぞして、気持ちの悪いやつだな」

「ト、トイレ……」

「トイレなど、この区域にはない。早く、戻れ」

 うっ。そ、そんなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ