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ソラミミ  作者: k_i
第4章
19/46

4-4.想馬灯

「はぁ、はぁ……」

 あんなに息切れしていたのに今まで息、してなかったのかな。そう思えるほど、苦しく、いっぱい息を吸い込んだ。

 すぐ辺りを見回すと、千切れ雲が流れている。峠に近い。小象は、草原に着地する。

 誰だったんだろう。わたし以外に、あのパレードが見える人……いたんだ。草里は存在すらも否定した、パレード。

 

 小象は、のそのそ歩き。もう、峠のお菓子屋さんが見えている。

「よっと! ちょっと、先に行くね。すぐ追いついて」

 小象にぽんとタッチして、走る。小象がぱぽと吠える。安心感のある声。大丈夫だな。さっきの子も、近くにいるはずだ。

 一応の警戒はしつつ、お菓子屋さんのドアを開ける。

「こんにちはー……はっ。あ……え、ええっ」

 奥で倒れている人影は間違いなく、お菓子屋さんのおっさんだ。

「ちょっと」

 予想外のことにきょきょろ見回し、一度後退りするが、ドアのすぐ向こうに小象がもう来てくれている。

 そう遠くはないおっさんのとこへさっと身をかがめ移動し、

「うえっ」

 吐きそうになる。死んでいる。顔の曲がり方が、変だ……明らかに変だ。うええっ。

 誰かの気配を感じ、わたしはありもしないピエロ斬りを地面に探した。

 

「何してる」

「ううっ……あなたが?」

 さきの夢の空に見た少女、だと思う。少しだけ違うように見えるけど、遠隔操作と言っていたし。夢の中では形も少し違って見える。

「この人はすでに亡くなっていた」

「そ、そう」

 

 だいぶ前に、死んでいたのか。学連の刺客の仕業、か。

「案内して。急ごう。草里(そうり) (かえで)……のことは、聞いている」

「わ、わかった」

 

 この人、どこかの地下組織のメンバーなのね、きっと……それよりも、さっき助けてくれたときに思ったよりも、優しげじゃないな。わたしは少し、戸惑ってしまう。

 

 お菓子屋のおっさんは、そのままにするしかなかった。小さく、手だけ合わせておく。

「そうだ、時間は」

 外に出て、小象の向きを変えながら尋ねる。

「あ、それと、お名前は……? わたしは、空丘耳穂」

想馬(そうま) (あかり)

「想馬、さん、ね……どうぞ小象にお乗りくださいな」

 

 

 

 時間は、館を発って一日近く経過してしまっていた。こればかりは、仕方がない。草里(そうり)たちは、今頃どうなっているだろう?

 

 帰りの夢は、静かだった。

想馬(そうま)さんは、その、どこかの地下組織から派遣されて?」

「そうね。迎えに。先、あの場所に着いていたんだけど、あなたがピンチそうかなって察知してこの夢に寄った」

「お菓子屋のおっさん、あ……おじさん、は?」

「おそらく学連に事が知れて、殺されたんだろうね。わたしは一度も話したことはない。交渉関係は役目じゃないから。一足遅かったか……まあ、時間の問題だった」

「うん……」

「けど、すでに地下の連中には連絡はちゃんと来てて、どの組織が草里を迎えるか、で幾らか揉めてたらしいね」

「へえ」

 

 何だか、感心した。

「草里ってやっぱり、すごいんだ……」

「草里楓は確かに、地下で最近けっこう話題になっていたけれど」

 想馬さんは少し不機嫌そうに思えた。こういう感じの人、なのかな。

「ねえ、想馬さん……」

「何?」

「ありがとう。さっき」

「ああ」

「お礼、言い忘れてたから。助けてくれて、どうもありがとう」

 想馬さんと一緒だからだろうか。夢は今とても穏やかで、何かが起こりそうなんて気配は微塵もない。

「そうだ。ねえもしかして、前にもここ……わたしの夢の空で、わたしに語りかけてきたことって、ある?」

 えっ? と想馬さんはそれが何のことかはわからないようだった。

「あなたにコンタクトを取るのは、今回が初めてだけど」

 違うのか。あの空耳……。 

 想馬さんに聞きたいことは色々あった。あの、パレードのこととか……でも込み入った話は、ゆっくり時間のあるときにしよう。

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