4-2.密談
「草里……いる?」
草里の部屋(元・入間の部屋)をノック・ノック。返事はないので、勝手に入る。
「あのう……草里?」
ベッドにうつ伏せている。
「ソラミミ。こっちへ来て」
「えっ。でも」
何だか、気が咎める。もしかすると、こういう草里は見たくなかったのかもしれない。
「いいから」
そろそろと歩み寄る。草里は、やっぱり、そのままだ。泣いて……
「わたしの隣に添い寝して」
「な、なんでだ!」
なんだろう。真面目に、へこんでるのだろうか。まさか。本当に、慰めてほしい?
わたしはベッドの縁に腰かける。
「草里……? 泣いているうぐっ」
突然起き上がった草里に、ベッドのなかに押し倒される。草里がわたしの上になり、見下ろしている。
「そんなわけはない」
確かに泣いてなんてまったくなかった。ただ、表情はふざけていなかった。
「ソラミミに、頼みがある。ソラミミにしか、できない」
「えっ。わたしにしか……?」
「ここへわたしたちが来るときにしたみたいに、小象でひと駆けして、地下組織に接触してきてはくれまいか」
「知っていたの? 夢を飛びこえて、来たこと」
わたしにも、時間を超えて移動したことの仕組みまではわからない。それにあんなの、偶然だし……。
「できるかどうか、わからない」
もしできたとしても、やはり来たときみたくこっちの時間の方は経過し、手遅れになってしまっているのでは、という不安もある。
草里は、黙っている。この沈黙が、嫌だ。
「第一、地下組織って何? そんなのまったく知らないよ。そもそもどこにあって、どの地下組織に接触すればいい?」
「この際、選り好みはできない、か」
草里はため息一つ、つく。
「このあわいの地区には、学園が手を出さないような事を、積極的に請け負っている組織があるんだ。もちろん、相当な力なり実績なりがなければ入れない。そこがどういうとこかは……ピンキリだな。今は、要はどこでもいい。待遇が悪ければ、あとで別のとこに移ればいいしな。
さてその地下組織の連絡網については、峠のお菓子屋に聞いてくれ。幾つか調べ上げてくれているだろう」
「はっ? お菓子屋さん? あんなの、ただのおっさんだよ」
「ただのおっさんじゃないんだ」
「わからないものだな。まったく」
草里の言うには、以前……パレード潰しを始めた辺りからもう、その件については相談していて、幾つかの地下組織を調べ上げてくれていたという。具体的な条件を示してきた相手もいたのだと。
「それが、パレード潰しの点数、だったの」
「まあな。少々事が急になったからな。ここへ来る前も、おやじには急げと言っておいたのだが。あのままあそこにいては、ばればれになってしまったからな」
だから、おやじも手を打ってくれているはず。ではある。
「しのいでいれば助けが来ることはあてにしているのだけど、いつになるかわからん」
「わかった。やってみる。行く先がわかっているのなら、なんとかなるかも。お菓子屋さんだね」
「だ」
と言って、また草里はベッドに突っ伏してしまった。
「草里……う」
覗きこもうとすると、また草里に引き込まれる。
「ううちょっと、やめってって」
あれ? 扉が開いている。そこに来ているのは、
「うわ。……あきれた」
――郡さん!
「こっこれはち、違うの!」
慌ててベッドから起き上がる。たぶん顔が真っ赤だ。
「密談をしていたんだ。郡も、来る?」
「遠慮するわよ」
「動きは?」
「今のとこない。ないけど、あなたの動きもなさすぎるから、そろそろちゃんと決めないとと思って。まあお楽しみ中ならいいけど。いいけどさすがに、あなたのとこ離れてしまうよこれじゃ」
「郡がか?」
「いや、わたしじゃないけど。他の子らが知ったら」
「郡さん、違うっていうのに……」
「わかった。ソラミミが泣きそうだから、わかった。で、どう? 皆を集めて一度話さない?」
「よし。じゃあソラミミを除いて皆を集めよう」
仲間はずれみたいな言い方。
「ソラミミは……見張り? 勿論、見張りは立ててあるわよ」
「もうすでに一つ、手は打ったんだ。今から話すのはそのあてがはずれたときの保険ってことで十分だよ」
「そんな~」
責任重大だな。それは、そうかもしれないけど。




