3-1.離反
朝のホームルーム。担任の赤居が入ってくる。いつもと変わらないような少しだけ不機嫌のような。この先生は大抵感情をあらわにしないけど。
そうだ。また死者の報告でもするのかな。そう言えばもう何人……
「皆さんに、お伝えすることがあります」
最初に死んだ四副、瑠備姉妹、草鳥ら三人、それからこないだの……
「パレード潰しをした人がいる」
えっ。
「先週また一人、隣のクラスの生徒が亡くなっていますが、上の学年も合わせて七人。皆、どうやらパレード潰しに関わって死んだ。いいですか、皆さん」
わたしは草里を横目でチラリと見る。赤居はまだ続けている。どうする? 草里。草里はわたしに目もくれず、いつもと変わりない。かったるそうな表情。
あれからも草里は、永眠画廊や裏町の業者とかにも通っていたそうだけど、もしかしてどこかから漏れたのか……仮にそうでなくても、この一ヶ月程で七人、死んでいる。わたしたちにはどこかあたりまえのような感覚になっていたけど、考えれば、普通ではない。
「草里さん。このあとすぐ、職員室に来てください。一時限目は自習になります。以上です」
赤居はそう終えた。草里……草里は、変わりない。次の瞬間。
「待った!」
草里が立ち上がった。
教室を出て行こうとしていた赤居が、立ち止まる。
「草里さん……あなたを学園でも常に上位の、優秀且つ思慮深い生徒だと思っていましたが、今のあなたは違うようですね? それが、あなたの本性なのですね」
「わたしには」
草里は至って平静な、だけどよく澄み通った声で切り出す。クラス中が静まり返った。
「声なきものたちの声が聴こえる。
学園が救えるのは、一部の選ばれた者にしかすぎない。わたしは、違う。わたしは、この目に見える全てのもの、ともすれば人の目に映らぬままに見落とされてしまう全てのものたちを、救いたい! 学園は」
「草里さん」
赤居が草里を睨みつける。そこまでにしなさいと。
「学園は事が起こったときにしか駆けつけない。呼ばれなければ応えない」
語調はそのままに、草里の声が周囲をそのテリトリーに縛り付けるように強まる。赤居は少し、顔を引きつらせている。
「だが、声をあげられないものもいるのだ。声をあげられないがため、救われないものがいてもいいのか。わたしはそのものたちのために、全てのパレードを潰す」
赤居が、つか、と草里の方に一歩詰め寄る。座っていた生徒らが、一人二人と、次々に立ち上がった。生徒が赤居を阻み、何事が起きたのかと怯みを見せた赤居を今とばかりに掴まえ取り囲んだ。草里がピエロ斬りを持って赤居を見下ろす。
「草里……それは、まずい」
わたしは必死に草里を止めるが。
「黙っていろ」
ひゅんっ。振り下ろされたピエロ斬りに、赤居の服がぱっさりと切れて裸体をあらわにした。
「ひ、ひいい!」
草里は何も言わずにピエロ斬りを仕舞うと、教室の戸に手をかけた。
「先生。わたしは、草里さんの言うことが正しいと思う」
「わたしも草里さんと行きます」
二十人に満たない一クラスの、半数近くが草里について学園をあとにした。
わたしも……草里をこのままほうっておくわけにはいかない。すぐ彼女たちのあとを追った。
どうするの、草里? これから、わたしたちどうなるの。




