2-5.なにそれ気持ち悪い。禿げなんてきらいよ
また草里が来ている。
あれからまた人数を減らし、以降は五人で行うようにしてパレード潰しを二回行った。その二回で、また小象は死んだ。
草里やそれにわたしも徐々に戦い慣れてきたこともあり、連れていく仲間は、死なせずに済むようになってきた。それでも内一回に一人が、死んだ。その回に死なずに済んだ二人と、みたび参加した郡さんとの五人で行った五回目のパレード潰しは死者を出さずに済んだ。
だけど、小象は死んだ。規模の大きなパレードの巨象の大きさとは比べるべくもないのだ。
わたしは自ら進んで夢に入り、象を連れ戻した。なるべく早く小象をわたしのもとに置きたかった。間違いなく、この子は同じひとりの子で、巨象に潰されて消えてしまうけど、わたしが夢に入ることでこの世に戻すことができているんだ、と確信するようになっていた。
その度に、小象は大きくなった。
「なるほど、小象もこれだけの大きさになれば、パレードを潰せるかもね」
「そう言うけど、草里。草里は本気で、パレードを潰そうとしたいのだよね。だけどこれまで見たパレードの象はもっと、大きかったんだよ。今の象でも全然、大きさが足りないでしょう」
「三回目だけは逃げられたけど?」
「あのときは、象そのものがいなかっただけでしょう? パレードの象は必ず、この小象なんかの数百倍ってくらいはでかいじゃない」
「そうね……そうかもしれない。ともあれ」
草里は真剣な表情になり、続ける。
「ソラミミ、そろそろ、気づいてもらわないと。象の操り方次第なのよ。つまり、あなた次第ってこと」
え?
「今度のパレード潰しは、二人でしましょう」
草里は軽くそう言い捨てた。
「そんなっ」
だけど、草里の言い方には別に諦めや自暴自棄が感じられるわけでもなかった。
「今の人数でも苦労しているのに、いきなり二人なんて……郡さんは? もう一度頼んだら?」
これまでのメンバーの死を目の当たりにして、これ以上死なせたくない、という思いもあって、二人で行くことに少し安堵もしている自分がいる。これ以上死なせないという自信もない。草里が首を横に振るのにも、そうだわ。それでいい。わたしだってわかっている。と心で返事している。何故か、しっくり来ている。
「もうピエロには苦労しないさ。だからあとは象だ。ま、小象はまた死ぬかもしれない」
「ほらあ」
「けど、今度は小象を思うように操ってみることを課題にしよう」
「しようったって、わたしがするんでしょお」
「うん。そうだよ」
「って、ほら、……いいよもう」
草里のさき言ったこと。自分次第、か。そうなのかもしれない。象がどうやって生まれ自分のもとに来たかを知ってから、自信を取り戻してもいた。あのことは、誰にも言っていないけど……勿論、今の段階で先生には言えないことだったし。
草里には言っておいた方がいいだろうか。あの、奇形じみたパレードのことも気になっていた。あいつらに会ったのは一度きりだけども、それ以降も、夢のどこかにいる気配を感じていた。どこかであいつらが、わたしを見ている。もしかしたら小象を取ろうとしているかもしれない。
「草里」
「何。さっきのはもう決定事項ね。他の質問なら受け付ける」
「その……」草里なら知っている。
ピエロじゃない禿げのどうぶつのパレードっている? って聞いてみた。
すると予想外に草里は急に面白くなさそうな顔をして、は? いるわけないじゃない? と返してきた。
「えっ」
「そんなの、気持ち悪い。わたし禿げなんてきらいよ」
「……そ、そう。そうだよね」
何だろう。何故か知らないけれど、自分が否定されたような気分。だけど、そうね。あんなパレードの存在って、なんだか許せない。あいつら、わたしの象をとっていこうとした。もしまた見つけたら、それこそ潰してやりたい。そうするべきよ。
「も、もし」
「うん?」
「もしそんなパレードに出遭ったらすぐ、潰してしまおう」
「そんなパレードは……存在しない」
う。存在までも、否定するのか。何故、そしてわたしは自分の存在が否定されたわけでもないっていうのに、心に釘が刺さるみたいなの。
「じゃあソラミミ。いつにする?」
「うん。そうね……」
わたしは無理に笑顔を取り繕った。
「また今度の休みでいいんじゃない?」
「オーケー。じゃ、いつもの場所で」
颯爽と身を翻し去っていく草里楓。
あんなパレードいないんだ。この憎しみのようないとおしみのような感情はなんだ。わたしは一体……。わたしは今、なにかと戦いたい気持ちでいっぱいだった。なんだろう。悲しくて。なにかが、張り裂けそうで。パレード、潰してやりたい。すべてのパレードを。




