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進むべき場所(1)
家に帰る気にもなれず、教室で呆けていると影が伸び始める。見回りの教員に帰宅を促されたのは時間にして五時半を過ぎた頃だった。
「おっ、絵馬。どうかした?」
夕暮れ時には翠の姿があった。
部活終わりだからか、普段はしっかりと着こなしている制服を軽く崩している。
その姿を見て安心したのか、久しぶりに笑えた気がした。
「制服の着崩しは二八点の減点らしいぞ」
「なんだよ、その判定基準は」
「後輩が言ってた」
「それよか、絵馬は部活もないのにこんな時間まで何してんの?」
ぱたぱたと服の中に風を送りながら言ってくる。
「俺は学校が大好きだからな」
「思ってもないこと言うなよ。絵馬に一番似合わない言葉だろ」
「嘘つけ。君のために頑張ったよ、の方が似合わない」
「それもそうだ」
けらけらと笑う翠といつもと変わらない他愛もない会話。
それが不思議と落ち着けた。
「なあ翠、一緒に帰ろうぜ」
普段はこんなことは言わない。
流れで一緒に帰っていることが多い。
それでも今はこの何もない会話が温かく感じた。
とにかく誰かと話したかった。




