↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
β版白雪姫物語  作者: 鹿島きいろ
26/35

宮仕えロビンの仕事と恋7


ようやく処々の段取りつけ、領へと戻る。


ジェファ―家の屋敷に戻る前に、

一旦殿下の元へと報告をしに、彼が潜伏している屋敷へと向かう。




「殿下。ただいま、王都より戻りました。」


「お疲れ、どうだった?」


「はい。私の祖父の方で、預かることになりました。」


「そう、良かったね。将軍の元であれば、大丈夫だろう。奥方も、おっとりした方だし、クリス嬢と合うだろう。滞在先が決まったとはいえ、何か僕が必要になったら、言ってくれ。」


「もったいないお言葉。まことにありがとうございます。」


なぜ、うちの祖母とクリスが合う確信を、持って言っているのか、気になるが、そこはキニシナイでおこう。

うん、その方が良い気がする...。


「こちらの方もね、みんなのおかげでね、だいぶカラクリが見えてきたよ。

 今、メリンダが隣国側の間諜に接触してる。

 あと数日すれば、締め上げて証言とれると思う。

 そしたら、ジェファー卿を糾弾出来るだろう。」


「承知しました。

 王都に戻った際に、兵の準備は整えて参りましたので、殿下の号令が下り次第、こちらに向かうかと思います。」


「了解。助かるよ。」




ジェファ―家の屋敷へ行き、

すぐにでも彼女に話をしようかと思ったが、彼女を見つけることが出来なかった。


気がつけば、外は厚く真っ黒な雲に覆われ、雷が鳴り始めたと思ったら、

バケツをひっくり返したように雨が、降ってきた。


そこに、やっと廊下を走る彼女を見つけた。


「やあ、お姫様、元気かい...ってオイ!一体どうしたんだ!」

彼女は、夫の不貞現場を目撃した日以上に酷い顔をしていた。

上から下まで雨に打たれてびしょ濡れで、服も顔もずいぶん泥で汚れていた。


「ごめんなさい。ちょっと急いでいるのよ。そこどいてもらえるかしら?」

尋常じゃない様子に思わず、手を掴んでしまった。


「ちょっと、離して!急いでいるの!!」


掴んだ手は、とても冷たかった。

訳を聞いても


「ごめん。後で話すから、本当に通して!」

と手を振り払われてしまった。


そして、彼女は、廊下の奥へと急いで消えてしまった。




振り解かれた手を茫然と見ていると、後ろから数人が走ってくる足音が聞こえた。


「ハァハァ…ロビン様。カメリア様をお見掛けしませんでしたでしょうか?」


いつも無表情なロンバートが、珍しく慌てた様子で聞いてくる。


「いや...見ていないが。どうしたんだい?」


「いえ、まずは、エドワード様に報告してから。」

と言って足早に去っていった。


何か嫌な予感がする。


なんだ?何が起きている?



直ぐにロンバート追って、いや、カメリアを探そうと走り出そうとした時だった。

服の袖をつかまれた気がして、振り向くとそこには、

マリーが立っていた。


何か、

彼女は   知ってい る…?


「マリー、君は何か知っているのかい?」


「わ、わたし、見たんです!

 森の中でカメリア様がクリス様を殺したのを!!」


「!!!

 なんだって?

 詳しく話を聞かせてくれないか!

 さあ、落ち着いて。」


彼女の要領を得ない話をまとめると

様子のおかしいカメリアの後を追っていくと、森の小屋に行きついた。

覗くとクリスがいて、リンゴを食べたところ、

苦しみだして、カメリアが何かを飲ませたとたん、動かなくなった。


という事らしい。


「クリスは、カメリアが持ってきたリンゴを食べたんだね。」


「はい、そうです!カメリア様がリンゴを用意したのも見ました!」



おかしい。

あんなにクリスにもイーサム家にも、カメリアはリンゴを避けさしていたのに。

なぜ、彼女がわざわざリンゴを持っていく?

それに、クリスは本当に死んだのか?

いや、マリーの話が本当ならば、

カメリアはリンゴを食べたクリスに、何かを飲ませたと言っていた。

何かとは...たぶん、俺にも、念のためと言って渡してくれた解毒剤のはずだ。



てことは、

クリスは、まだ生きている?



 

「私、その時のカメリア様の顔が、怖くて、怖くて...」


色々考えていたら、目の前のマリーの事を忘れていた。

ガタガタ震えて、目を潤ませている彼女。

何かウソっぽいっているか、大げさっていうか。

何か違和感を感じる。



それよりも、カメリアだ!


はっと目線を変えると、遠くの方で、叔父の私兵に連れていかれる彼女を見つけた。


「!!」

まずい!遅かった...。

落ち着け、俺。

何か、何か出来るはずだ...。

今俺に出来る事は何だ…考えろ。


犯人の確保の後は…

被害者確保!


急がなくては!


踵を消す俺は馬に乗り、急いでイーサムの家に向かった。




「クリス!生きているか!」

ドンッとドアを開けると、

ちょうど、イーサム一家は荷造りをしている所だった。


「っ!驚かせないで下さい。ロビン坊ちゃん!」


「す、すまない。クリスがリンゴを食べたと聞いて。」


「はい。クリス様はリンゴをお召し上がりになりましたが、カメリア様の解毒剤で一命をとりとめました。今、奥の部屋でお休みになっております。」


「よ、良かった...。でお前達は何をやっているんだ?」


「はい。カメリア様のご命令で。

 もし、今後不測の事態がおきたら、すぐに荷造りをし、追手のかからないうちに、自分の事は気にせず、別の場所へと逃げるようにと。」


「さすが彼女。抜かりないな。」


「はい、全くです。そ、そのカメリア様は...。」


「叔父の私兵に捕まっている。

 叔父が彼女を何を思ってどう対応するのか、まだわからん...。」


「なんと!」


「カメリアとクリスを目撃したという侍女と直前まで、俺と話をしていたが、叔父の私兵たちが、その侍女の案内の元、ここに来るのも時間の問題だ。俺は、先に彼女を連れ出すから、お前たちも準備が出来次第、すぐにこの家を出ろ。」


「承知いたしました。」


「クリスは、とりあえず、俺の仲間の所に連れていく。」


「し、しかし!」


「ここがイーサムの家だとわかるのも時間の問題だろう。カメリアがいくら”白を切れ“と言ったって、お前とクリスが一緒にいたら、どっちにしてもクリスは屋敷に連れ戻される。であれば、一旦、お前達とは関係のない場所に保護すべきじゃないのか?」


「おっしゃる通りです。」


「お前たちも、トランスバール邸に業者を装って、来い!一緒に保護する。」


「承知いたしました。」


奥を見ると、イーサムの奥方がほっとした顔をしていた。

やはり、不安だったのだろう。


クリスがいる部屋に行くと、クリスは涙で顔がグシャグシャだった。


「わ、わたし、約束を破って、リンゴを食べてしまったの.!」


「クリス!クリス!良く聞いてくれ! 

 ここが叔父上にバレるのも時間の問題だ。すぐにここから脱出する。

 なあに、イーサム達もすぐに来るから、安心しろ。」


「うん。

 あ、あのロビン。

 お母様は?」


「わからない...。わかったら、ちゃんと知らせるから、

 今は良い子で、俺と一緒にここを出てくれ。」


クリスは再び泣きそうになりながらも、グッと堪えているようだった。


そして、俺はクリスを念のため、シーツで包み荷物に偽装して、殿下が滞在しているトランバール邸へと向かった。


トランバール邸は、俺の母方の親戚筋に当たる商人の別荘だ。両親の事件の後、事件現場となった屋敷には、自分の気持ち的に近寄れなかったが、どうしても領に戻りたくなった際、度々利用させてもらっていた家だった。そして、今回、この任務が決まった時、長期で借りる事にし、拠点として、しいては、殿下の滞在場所となっていた。



「殿下、すみません!」


「なあに?騒々しい。」


「一時的に、クリスの保護をお願いいたします。」

殿下の形の整った眉が、くいっと上がる。


「クリスが、リンゴを食べて倒れました。

 カメリアの解毒剤で一命をとりとめましたが...。」


「が?」


「カメリアが、クリス殺害の容疑で捕まりました!

 クリスが食べたリンゴを持ってきたので、鑑定をお願いします!

 それから、この後、森の民であるイーサム家が参りますので、

 併せてこの屋敷で保護をお願いします!」


「ぅ、うむ…」


「あ、あと別の部屋で、クリスが休んでいますが、決して、手を出さないように!!

 俺、これから屋敷に戻って、情報収集してきますので、

 あとはよろしくお願いいたします!

 では!」


言うだけ言って、俺は、急いで屋敷に戻った。



屋敷に戻ると、まだ屋敷内は慌ただしいままだった。

途中、捕まえた侍従によると、

クリスが死んだと聞き叔父は、カメリアを捕まえた後は、部屋から一向に出て来ず、

代わりに執事であるロンバートが采配しているとの事だった。


という事は、全体を把握しているのは、ロンバートか。




「ロンバート、忙しい所すまない。

 今、この屋敷で起こっている事を、教えてくれないか。

 なあ、叔父上には、もう報告したんだろ?」


「ええ、まあ。」


「なあ、頼むよ。俺も力貸すからさ。」


はぁ~と大きなため息をついた後、ロンバートは話し始めた。

今の彼の直接の主は叔父だが、俺は元領主の息子だ。それに、そもそも貴族である俺にロンバートが逆らえるはずがないだろう。

ひょっとしたら、部屋に籠ったっきり出て来ない叔父が役に立たず、頼れるものが欲しかったのかもしれないが。


「本日、ある侍女より、カメリア様がクリス様を殺したところを見たという報告が上がりました。旦那様に報告した後、カメリア様の所に出向いたところ、彼女が薬のようなものを手に取っておりましたので、そのまま身柄を拘束いたしました。」


「どこに?」


「屋敷内の牢でございます。」


「そんなのこの屋敷にあったっけ?」


「はい。ロビン様が生活していた時は、あなた様はまだ小さかったので、ご存じないかったのだと思います。」


「ふーん。で罪状は?」


「クリス様の殺害容疑でございます。」


「クリスが見つかったってこと?」


「いえ、まだ見つかってはおりません。今、件の侍女を連れて、目撃したという小屋まで兵たちが向かっております。」


やはり、クリスを連れ出しておいて良かった…。


「まだ、死体も出ていない、証拠もない。

 その侍女の証言だけで、姉さんを牢に入れているの?」


「いえ、カメリア様には、クリス様誘拐の容疑もございまして。」


「それも、その侍女の証言?」


「はい。旦那様が判断し、決められましたので、私共はそれに従ったまでです。

 捜索隊も出ておりますし、クリス様のご遺体は、時機に発見されるでしょう。」


ある侍女って、絶対マリーの事だよな。

マリーは領主と関係がある。

叔父の今までの行動を見るに、

カメリアよりもマリーの方を全面的に信用している。よな...


あー、クソッ!



「“裁きの場”は設けるんだろ?日程が決まったら、教えてくれ。」


「承知いたしました。」


「何か俺に出来る事ある?」


「いえ、今のところは。」


「そう。しばらくは、居ると思うから、何かあったら声かけて。」


「承知いたしました。」


ロンバートのいる部屋を出て、自分が与えられている部屋に戻ると、

大きく深呼吸をする。


とりあえず、今聞き出せるのは、この位だろう。

叔父たちは、マリーの証言だけで、全容がわかっているわけではないし、

ここで俺があまりしゃべって、ボロを出すわけにもいかない。


牢って、いったいどんな奴だ?

罪人とはいえ、領主夫人なのだ、

そんな手荒な真似をしていないと思うが...。

とりあえず、勝手に刑の執行をしないよう、釘はさしておいたし。


この国では、領主に領内で起こった事件に対し、刑の執行権が与えられているが、勝手にバンバン行わないように、ちゃんと“裁きの場”を設けるよう制限している。


まあ、その裁きの場が、どれ位公正かつ正当性があるのか、疑わしいが...。



とりあえず、中央に繋がる俺がいる限り、勝手に刑の執行は行わないだろう。

その前に、彼女を助け出さなくては…



<ロビンが殿下にクリスを預けた後の会話>


殿:「僕、彼の上司だよね?

   言うだけ言って、去っていったけど…。」

ナ:「そうですね。」

殿:「...。ねぇ、

   クリスに話しかける位は、許されるかな。」

ナ:「どうでしょう。」

殿:「話しかける位は、良いよね。

   きっと、彼女も不安だろうし!」

ナ:「あと、知りませんよ。」

殿:「...。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。