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β版白雪姫物語  作者: 鹿島きいろ
23/35

宮仕えロビンの仕事と恋5

秋が始まる頃、俺はまたトルタイム領へと向かった。


任務がなければ、この時期祖父母と一緒に過ごして収穫祭を祝うが、任務中は任務地に滞在するようにしている。祭りは、人の心が浮足立ちやすい。そのせいか、口は軽くなり、ボロも出やすい。今回もそういう理由で収穫祭の期間を叔父の家で祝う事にした。


うちの領で数少ない店が立ち並ぶ道を観察していると、彼女を見つけ思わず顔がニヤケる。

そして、仕事も忘れ声をかけた。


「やあ、お姫様!こんにちは!」


「珍しいわね。街中で会うなんて。

 また、先触れもせずに、こっちに来たの?」


良かった。

彼女、元気そうだ。

間違いなく、原因は解決していないだろうが、

前回の全く笑顔がなくなっていた彼女の顔に、

元気が少しは戻っているようで、ひと安心した。


その後、彼女と露店のドーナッツを買い、食べながら街を散策したりした。

まるで、デートみたいな時間だった。


だから、多分、俺は、だいぶ浮かれていたんだと思う。

彼女が何をしようとしていたのか、この時の俺は全く気付いていなかった。



□□■□□■□□■□□■

数日後の収穫祭当日、ジェファー家当主主催の宴に俺も参加していた。


領内のワイナリーではなく、王都で人気だというワインが出されていた。「せっかくの社交の場なのだから、領内のワイナリーのワインを出せば良いものを。」と不満に思いながら、会場を観察していると、彼女は叔父と一緒に挨拶回りをしていた。


どうやら今日は、奥方としてちゃんと扱ってもらえているらしい。

「良かったな。」と呟いていたが、心の奥底では、もやっとしていた。

その思いの正体は、とっくに気づいていたが、気づかないフリをする。


今日の彼女は淡いピンクのフリフリのドレスを着ていた。


一体誰があんなドレスを選んだんだ?

彼女には、もっと似合うドレスがあるだろうに。

俺だったら、もっと色のはっきりした...。


段々空しくなり、途中で考えるのを止めた。



宴では、領内の名士達も呼んであるようで、俺が前領主の息子だと気がついた参加者達は「昔、君のお父さんにお世話になってね。」と代わる代わる話かけてきた。そして、年ごろの娘を持つ者からは、もれなく「うちの娘はどうかね。」と紹介される。鬱陶しい事この上ないが、有益な情報源になりうると頭を切り替え、笑顔の仮面を装着し対応することにした。 気がつくと、彼女を見失っていた。


自分の周りにいた人たちが、少なくなった頃、

彼女が一人で立っているのを見つけた。

やはり、結局叔父に放っておかれているらしい。

叔父はというと、招待客の数人と話が盛り上がっているようだ。


なぜ、知り合いもいない宴で、彼女一人にしておくんだ。

しかも、主催なのに、壁の花とは一体どういうつもりだ。



いらないなら、俺が貰うぞ。



気が付けば、彼女の元へと足が向かっていた。


「やあ、お姫様!ご機嫌麗しく!」


「ろ、ロビンこそ。」


「どうです?一曲、私と一緒に踊っていただきませんか?」


「ありがとう」と言いつつ、もっと若い娘と踊って来いと、

遠回しに断られてしまった。

全然おばさんじゃないのに。

そして、さして知りもしない若い娘なんかより、俺はあなたと踊りたいのに。


尚もお願いすると、躊躇しながら、

「まだ、叔父と踊っていないから、踊れない」と小さな声で話してくれた。


はぁ?

宴も終盤だというのに、叔父は彼女と踊っていないのか?

本当に叔父は何を考えているのだ!

夫にダンスも誘われず、放置されているなんて、

噂好きな奴らの格好のネタじゃないか!


許可なくとも思ったが、彼女の今後も考え、みんなの前で叔父に許可を貰い、

改めて、彼女にダンスを申し込んだ。

最初は、戸惑っていた彼女も、徐々にダンスを楽しめているようだった。

俺とのダンスを楽しんでくれたなら、どんなにうれしいことか!


だからちょっと魔が差したんだと思う。

いや、どうしようもできない今の関係に、焦燥感に駆られていたのかもしれない。

数日前、街で会った際、彼女が手に取っていたあの服を思い出して、言ってしまった。


「この前、手に取っていた狩人の格好は、今日はしないんですか?

 あの格好をしたあなたも、きっと魅力的でしょうね。」


結果、彼女はドン引きだった。


しまった...。


ちょうど曲が終わり、挽回する余地もなく、

彼女は礼をして、さっさと俺の元から去って行ってしまった。


後に、この出来事を知った殿下は、

「もう、完全にアレじゃない!弟的地位!

 そんでもって、性癖誤解された。そんな感じだよね!」

と大爆笑されてしまった。


お願いだから、ダマって...。



□□■□□■□□■□□■


そして、翌朝クリスが消えたと聞かされた。




前日の自分の失態の恥ずかしさなんて、すぐに消えてしまった。


なぜ、クリスが消えた?

生粋のご令嬢が自ら屋敷を出たとは、考えにくい。

じゃあ、誰が?

昨日は、宴で色んな人が出入りしていたし、何かに紛れて、連れ出されたと思う方が自然か?

今回の任務と何か関係あるのか?

あいつら、もう何か情報掴んでいるだろうか?



そして、なぜか叔父は彼女を疑っているようだった。

彼女の性格から考えたら、誘拐なんてしないだろう。

あんなにクリスと仲が良いのに、誘拐する意味がない。

ああ、そうだった叔父は「何も知らない」のだ、彼女の事を。


それにしても、久しぶりに見たな、叔父の仮面がはがれた顔、一瞬だったけど。



懸命に捜索したが、俺が領にいる間、クリスは見つからなかった。

カメリアの体調不良も気になるが、

俺は殿下にクリス失踪について報告に、一旦王都へ向かった。



ちなみに、殿下にバレたのは、屋敷に入り込んでいた内偵が

殿下の命を受け、ちゃんとご報告してたからです。


その後、内偵者には、金一封が出たとか出なかったとか...

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