第33話 異世界とミナ
「マイケルさんももしかして乗り込んでくるつもりですか?」
「通れるようになったらな。流石に戻れないうちに転移魔法陣で移動してしまうには立場がまずいからなぁ。というわけで、ミナ。頑張って言葉を勉強するのじゃよ」
「はい、おじいさま。頑張ります。ニクさんよろしくお願いします」
こうして言葉の通じないミナを預かることになった。
「こちらがミナさん。地球からの依頼でエリクサーを渡した時のおじいさんの孫娘。実際にエリクサーで回復した人です」
ここに居るのはネグリジェ、シースルー、マイア、サーヤの4人。
普段から僕の周りでのんびりしているメンバーだ。
イーちゃんとアルちゃんのゴーレムチーム、そしてスライム君は、他の武装ユニット達と共に迷宮に行ってもらっている。
いつの間にかレベルも上がっているし、戦利品もいろいろ増えている。
サーヤ以外のマイアの付き人は城の中でいろいろやっている。
でも掃除とかもいつの間にか勝手に終わっているからよくわからないことが多いらしい。
僕の家っていつの間にか補充品も補充されているし、訳が分からないんだよね。
「ミナです。よろしくお願いします」
ミナさんはそう言ってお辞儀をした。
よろしくお願いしますと自己紹介を返すネグリジェ、シースルーに対し、マイアとサーヤは戸惑った顔をしていた。
「マイアとサーヤは言葉が通じてないよね」
「はい、ネグリジェ様とシースルー様の対応で自己紹介をしたのは分かるのですが、ミナ様の言葉は分かりませんでした」
「そう、転移者と地球人というのは厳密には別でね。
召喚によって転移の部屋の転移の女神にあった後にこの世界に来た人が転移者。
そうじゃなければ普通の地球人。
とはいっても科学技術とかその辺は同じ世界だからね。知識とかは一緒だよ。
特別なユニークスキルと、言葉が通じるという部分を転移の女神からもらってないだけで」
「なるほど、知識の源泉は同じなのですね」
「そういうこと。職業によるスキルはたぶんそのうち覚えるんだと思う。
まだステータスを見れないみたいだから」
ステータス画面を見ようと念じても見れなかった。
アイゼンが言うには、この世界の魔素を取り込めば見れるようになるということなので、しばらく様子見だ。
「しばらくは僕達3人の誰かが通訳をしながら、言葉の勉強をしてもらうことになるかな」
「翻訳こんに〇くがあればいいのよ。ニク、作れない?」
シースルーが某国民的アニメのふしぎ道具を要求してきた。
無茶な話を。
「食べると言葉が通じるというのはさすがに無理があると思うけど」
「ニク様は翻訳の魔法は使えませんか?」
シースルーに無理だろうと返事を返すと、マイアが質問してきた。
「翻訳の魔法?」
「はい、翻訳の魔法は広く知られている魔法で、亜人との意思の疎通に使われています」
「そんな魔法があるのか、魔法があるなら使えると思う。
ああ、それでマジックアイテムを作ればいいのか」
なるほど、翻訳という魔法がるのならそれがいいか。
「なら私達と同じ指輪にすればいいとおもうわよ。どうせミナもニクの囲いに入るのよね」
シースルーがあっさり爆弾を置いてきた。
「僕の囲いって」
「異世界の男の元に、かわいい女の子を一人で行かせるなんてそれ以外ないでしょ」
「はい、愛人候補です」
シースルーの言葉にミナが断言した。
「ほら、私と同じになったでしょ。なら早いうちに身内として同じ状況にした方が楽なのよ」
そう言ってシースルーは仮面を外した。
「そうね。一緒に暮らすのにずっと仮面をつけているのも大変だし」
ネグリジェまで仮面を外した。
「しょうがないか。確かに家の中で迄仮面をつけて暮らすのは面倒だし。
ミナさん、特に僕とネグリジェの顔の事は秘密ですよ。
転移者のリストにも載せてないし、地球側で動いてもらっている人にも影響してしまうので。ばれているところにはばれていますが、それでも公にはなって居ないので。
ばれると関係者の誘拐とか普通に起こるでしょうから」
僕も仮面を外した。
「分かりました。誰だか探るようなことはしません」
うん。まぁ探ってもマイケルさん迄で止めてくれると思うけどね。
ミナさんように僕達と同じオリハルコンの指輪を作り、サイズ自動調整、飛行魔法に加えて翻訳の魔法を付与した。
翻訳の魔法も本人による発動型ではなく、常時発動型で付与できたので楽になった。
「ミナさん、これを嵌めてみて」
「はい。お願いします」
なんで左手の薬指を出すかな。
他の指にはめようとすると、左手が動いて邪魔をする。
むーと唸っている。
あきらめて左手の薬指にはめた。
「ありがとうございます」
ああ、いい笑顔だ。
まぁここにいるみんなも指輪は左手の薬指にはめているんだけどね。
「ニク様、さすがですね」
マイアに妙なことで感心された気がする。
「いや、他の指には嵌めないという強い意志を感じただけですよ」
「そうではありません。嵌めた直後の言葉からすでに翻訳されています」
「翻訳の指輪を装備したからじゃなくて?」
「そうなのですが、翻訳のマジックアイテムは他にも存在しています。ですがそれは持って翻訳の魔法を発動し、一定時間翻訳の効果が宿るというものです。
常時発動型の翻訳アイテムなんて聞いたことがありません。
アーティファクトだから可能ということなのかもしれませんが」
なるほど。
翻訳を魔法で使うと一定時間効果があるということか。
それはそれで魔法の練習にはいいかもしれない。
「ミナさん、もうひとつそういうものを作って魔法の練習をしてみる?」
「面白そうですね。このネックレスに付与していただけますか?」
ミナさんはつけていたネックレスを外して渡してきた。
今度は発動型の翻訳魔法を付与した。
「これでどうかな」
ミナさんは一度指輪を外し、ネックレスをつけた。
「魔法はどうやって発動するのでしょう?」
「僕は魔法は念じるだけで発動できるけど、本当はどうやるんだろう」
僕は全能のスキルやアイゼンのサポートがあるからなぁ。
アイゼンが言うには魔法はイメージという話だから、合っているとは思うけど。
「魔法の発動で困っていますか?無詠唱でも使える方はいますが、言葉に出したほうが発動しやすいです。呪文というのもその呪文を言えばこういう現象が起こる、という共通認識の上でイメージを強化しているものです」
なるほど。
マイアが言うならこの世界でもそうなのだろう。
「ミナさん、頭の中で翻訳できるという魔法をイメージするだけでも発動できますが、最初は分かりにくければ、翻訳、とか適当にイメージした言葉を言った方が発動しやすいようです」
マイアの言葉はミナさんには通じていない。
だからマイアが何を言っているのか興味津々の顔をしていた。
「翻訳」
マイアが言葉を発し、ネックレスが光った。
「光りましたのでおそらく魔法が発動しているでしょう。ミナ様、私の言葉が分かりますでしょうか?」
「はい、マイアさん。言葉が理解できます。私の言葉も通じますか?」
「はい、通じています。成功ですね」
その後いろいろと話をしていたところ、約1時間で効果が切れた。
「1時間くらいで効果は切れるんですね」
ミナさんは再び指輪をつけてそう言った。
「そうですね。使用者の魔力によってはもっと長くなったりする方もいますが、普通はそれくらいのようです」
「これは使えそうですね。ふふふ」
ミナさんが何か考えがあるようだ。
まぁ言葉を覚えないでもなんとかなるなら、やりたいことを前倒しにできるよね。
そしてその後全員でお風呂に入り、一日が過ぎた。
お風呂にはそのままミナさんもついてきて迫ってきたし、夜は夜で私だけ仲間はずれなのと言いつつ混ざりに来た。
ステータスや職業が見えないから、この影響は外したほうがいいでしょうと説得し、自分の部屋に引っ込んでもらった。
ステータスが見えるようになったら絶対にひいてくれないよね。
住民登録では増えなかった。
まぁそれはこの世界ではなく開拓都市の話だからそうだよね。
ミナさんの部屋はやはりお城の中に用意した。
流石に外に出すのはまだ怖い。
開拓都市の中でなら安全だとは思うけどね。
一夜明け、朝食をとっている時にミナさんが話しかけてきた。
「ステータスが見えました。職業は令嬢となってます」




