第34話 異世界と地球
一夜明け、朝食をとっている時にミナさんが話しかけてきた。
「ステータスが見えました。職業は令嬢となってます」
はや。
1晩寝れば十分なくらいなのね。
アイゼンに確認すると、令嬢は魅力アップ、影響力アップのスキルが自動発動していて、社交魔法を使えるという。
戦闘系ではないようだ。
社交の場も、その人達にとっては戦場なのだろうけれど。
「令嬢ですか。私の姫と同系統の職業ですね」
ミナさんの発言にマイアが反応した。
「姫と令嬢は同系統なの?」
「はい、王族の令嬢が姫となります。基本的には令嬢の上位なのですが、危険な効果が一つついています」
「危険な効果?」
「はい、令嬢にはないのですが、姫には生贄効果アップというものがあります。
そのため、転移者を召喚する時には生贄に姫が使われます。
私の国を滅ぼし、私は捉えようとしたところを見ると、私も最終的には生贄に使われる予定だったのかもしれません」
なるほど。
何で召喚魔法があるのなら連発しないのかと思ったら、姫という生贄が必要なのね。
今は暴走状態だから、使われたとしても召喚できないと思うけど。
もしくはもっとひどくなるかもしれない。
1日でステータスや職業を取得でき、通常の品でも発動型の翻訳魔法を付与できる。
この結果を受けてマイケルさんが動き出した。
僕のゲートが大きくなった時にこちらの世界へやってきて、迷宮を探索する要員を集めるそうだ。言葉を習得するのには、片言の会話でも数か月はかかる。
魔法で行けるのであれば魔法で実施するという考えのようだ。
どちらにしてもゲートが大きくなってからの話だ。
沢木さんにこの話を伝えると、日本政府を巻き込むチャンスだと提案された。
「ニク君、既にいくつかの国は転移魔法陣から異世界に人を送り込み始めている」
「国が主導で、ですか?戻れないことは分かっているんですよね」
「半信半疑ではあるようだがな。何かしら戻る方法を取得できるかもしれないと考えているようだ。仮に戻れないなら戻れないでも良いのだろう」
「そうなんですか?」
「そこには地球と同じように、暮らせる環境がある。宇宙に移民先を探すよりは既にある環境を利用した方が現実的だと思わないかね?」
「でも宇宙なら戻れるかもしれませんよね」
「それこそ夢だ。宇宙のどこかに地球と同じような環境の星がある、または環境を改善して暮らせるようにできるとしても、そこは光の速さで何年もかかるような場所だろう。それこそワープでもしない限り、人が生きている間に往復など夢のまた夢。コールドスリープ技術が発展したとしても、戻ってきたときに知っている人などいない。それであれば異世界に行くのと何が違う?」
「なるほど、でもそこまですることですかね」
「異世界だって土地は有限だろう。であれば転移魔法陣のそばの土地は至急押さえたくなるものだ。そしてその周辺に展開していくことになる。だから最初は主導権争いのために急いで送り込んでいる、ということだ」
「理解しました。富士山から日本も国として人を送り込みそうなんですか?」
「いや、おそらく日本は国として大々的には送り込まないだろう。調査にしても、帰ってこれないのでは意味がない。ニク君からの情報が外部としては最初に伝わるため、他国よりは情報が真実であろうと思っているのだろう。そこでニク君がやろうとしていることが役に立ってくる」
「僕ではなくマイケルさんがですけどね」
「思惑はそうでも、実際にするのはニク君だ。それに日本は人口が減少傾向にあり、移民を送り出す必要は今のところは必要ないだろう。問題は各国の勢力が、ニク君を通じるなり、何かしらの方法なりで地球に帰ってきたときだ。その時はステータス、職業、レベル、各種能力を備えた超人達が地球に大量に帰還するかもしれない。日本としてはこれに関しては出遅れている状況だ」
ステータスや職業、レベルによる恩恵は地球側でも影響する。
それは僕やネグリジェの影分身達の基礎能力ですでに分かっている。
魔法自体は魔力の問題があるので一部の地域でしか発動しない。
それでも魔力を消費しない能力は効果がある。
地球でのネグリジェの影響力がとんでもないことになっており、あまりおかしなことは言えない状況になっていた。
このままでは僕のゲートから帰れることになったときに、確かに外国の勢力も戻ることになるかもしれない。
それまで生きていて、さらにたどり着き、そして帰りたい場合はということになるけれど。
そうなると日本の勢力は相対的に劣ることになる。
出遅れていることは確かだった。
「状況は分かりました。どのように巻き込むのが良いでしょうか」
「まずは少数の有力者に異世界を体験してもらい、実際にステータスや職業を取得してもらうのが最初だろう。その結果次第だが、おそらく多くの者が異世界で一時生活することを希望することになる」
「あまり多いと受け入れられませんよ。僕もゲートの維持を拘束されるのは面倒ですし」
「その辺はコントロールをすることになるな。例えば月に1回ゲートを開け、その時に人を入れ替えるのでもいいだろう。人数だって、ニク君の国で受け入れられる人数を提示してその人数以下にすればいい。翻訳の魔道具は貸出制にするなりなんなりやりようはある。もちろん必要な対価を出させてな」
その辺の交渉自体は沢木さんに任せることにした。
僕は僕の望む事しかやる気はない。
得られるメリットがあれば多少であれば手間はしょうがないと思っている。
交渉の状況を聞いてから最終判断する形にした。
異世界と地球の在り方。
今までは異世界側が望む時に地球から異世界に地球人が召喚され、その逆はなかった。
しかし今は、地球側の望むだけ地球人が異世界へ押し寄せることが出来る。
僕のゲートが大きくなれば、僕の都合がつく限りは好きなタイミングで任意の方向へ移動が可能となる。
つまりは異世界で召喚していた者が一方的に利益を得る立場から、地球側が利益を得られる状況に変わってきているということだ。
僕のゲートだけであればそこまで大きな変化は訪れなかった可能性が高い。しかし転移魔法陣の出現により、異世界側に渡ること自体のコントロールは出来なくなってしまった。
移民を送り出す、それは土地をめぐって領土戦争を起こすということだ。
この世界で召喚魔法を使ってきたツケを払う事になるのだろう。
科学重視の国側では穏便に済んで欲しいと思う。
魔法重視の国側とはどうせ僕も戦争に協力をするのだし、他人のことは言えない。
僕が地球に帰った後はこの国はマイアに任せることになる。
それまでにはマイアの国を滅ぼしたこの国に対しては、きっちりとケリをつけておきたい。
どのみちゲートが大きくなるのは、次の戦争の時だろう。
雪の状況が分からないが、一度ネメキスの町へ行って、いつごろの予定か聞いておいた方が良いかもしれない。
何はともあれ開拓だ。
地球側の人を迎え入れるにしても、何もかもが足りない。
異世界側の人にも来てもらわないと、この開拓都市が日本のようになってしまう。
それでは僕達が地球に帰った後でマイアが苦しむ。
あくまで異世界側の町に、地球人が遊びに来るスタンスを保ちたい。
まずはどこから手を付けていこうかな。
第1章完了です。
少し間を開けてから第2章を投稿の予定です。




