第22話 宅配便
「どちら様でしょう?」
彼女は部屋の扉を開けて僕を見てそう言った。
最初は仲間の誰かが来たと勘違いしたのかもしれない。
そして僕は一言
「宅配便でーす」
僕はガムテープで止められた小さな段ボールを両手で持ち、彼女を見つめた。
先ほどまでの冒険者装備は脱ぎ、ラフなワンピース姿だった。
女性は目を開いて驚いている。
「サインを書く頂く紙もありますし、中に入ってよろしいでしょうか?
お仲間に話すのは、状況を確認した後の方が良いでしょうし」
最後は小声でそう伝えた。
女性もそう思ったのか僕を中に入れ、扉を閉めた。
宿は普通の1部屋だった。
ベッドが一つ、そして机。
傍には武器や鎧などが置かれている。
「こちらが紙です」
僕は依頼主から渡された紙を彼女に渡した。
「日本語」
紙には日本語で記されている。
転移者は、言葉は勝手に通じてしまうので何語で話しているのかが分からない。
しかし文字は違う。
普通に読める物は読めるし、読めない物は読めない。
何語だかが確認できる。
「ってこれ、受け取りのサインじゃないじゃない。
こんな内容を書くのは、お母様でしょう」
そして紙のタイトルにはこう書かれている。
誓約書
僕が作ったわけではないですよ。
「依頼主から渡された紙ですので。
あ、段ボールの中身も確認してください。
これも指示されたことですので」
女性は段ボールを開け、喜んだ後に顔を赤くした。
「中身は見たの?」
彼女は僕に低い声で話しかけてきた。
目が怖い。
「いえ、スマホと身につけるものと聞いていますけど、違いましたか?」
ちらっと見えた中身は、下着に見えた。
なるほど、身に着けるものというのは間違いない。
この世界、着る物は何とかなっても下着はなかなか難しいらしい。
ライブ配信からそう予想して入れたのかもしれない。
「ならいいのよ。このスマホ、つながるの?」
「ええ、今ならつながります」
女性はスマホ越しに会話を楽しんでいた。
異世界に着て一週間。
無事に過ごしてはいたものの、当然ながら家族には連絡できていなかった。
最初は本当につながるのかびくびくし、つながって安心し、異世界の説明で戸惑いそれでも最後は安心した。
長くなりそうだったので、途中で一度切って後でかけなおすことにした。
冒険から帰ってきたばかりで、まだ食事もしていなかったからだ。
「まさかあんなことを考えていたなんてね」
「ほんと、お父さんと九条のおば様で考えたのかしらね」
僕だけでなく、ネグリジェも予想外だったようだ。
依頼を完了させた僕は、既に開拓都市に戻っている。
今回届けた先の転移者の女性は九条楓、20歳の大学2年生。
ユニークスキルは弓術家。
一緒にPTを組んでいる仲間達も紹介してもらった。
もう一人の女性はシャーリー、20歳の大学3年生。
ユニークスキルはダンサー。
酒場で紹介してもらったけど、明るくエロい。
シースルーはあくまでダンサーを演じていた女優。
シャーリーは本物のダンサー。
途中で酒場の舞台に立って踊っていた。
僕も含めて5人の飲食代がタダになった。
二人の男性のうち、片方がエル、19歳の大学1年生。
ユニークスキルは建築家。
材料が必要だけど、やはりスキルで建物とかを建てられるらしい。
もう一人の男性がハムラダ、20歳の大学3年生。
ユニークスキルは商人。
アイテムを鑑定できるらしい。
僕の飛竜の革防具一式に驚いていた。
まだこの世界に着てから一週間程度。
既に金貨10枚を装備に充てられるだけの稼ぎがあるということに。
その後、指輪に気が付いたらしく絶句していた。
価値は限界突破と表示されたらしい。
どういう意味かな。
4人は、しばらくはこの町で冒険者として楽しむということだった。
この国なら大丈夫だろう。
念のため、魔法王国側には注意するように伝えておいた。
いつか僕の開拓都市にも遊びに来るかもしれない。
「まぁ、おかげで地球に戻った時の気が楽になったかな。
影分身を使って高校卒業に関しては何とでもなると思ったけど、大学に関しては悩んでいたから」
これが今回の依頼の報酬だった。
元々ネグリジェの家族の頼みなんだから、報酬がなくても引き受けたんだけど。
私立鳳凰学院大学
富裕層の子供達が通う大学。
入学試験が難しいというわけでもなく、関係者からの推薦だけでも入学できる。
ただし、どちらにしても学費は超高額。
さらには卒業後の就職なども特に力を入れているわけではない。
お金はどうにでもなる人達が通う学校。
富裕層同士のつながりの為の社交の学校。
この学校への推薦と、卒業までに関係する費用の全額負担。
これが九条家からの報酬だった。
普通に億の単位らしい。
すごいところだ。
なんでもこの大学の理事長をやっているとのこと。
ネグリジェの父も理事の一人。
ネグリジェも当然、この大学に一緒に入学する。
「ふふふ、正式にお嫁さんになったしね」
ネグリジェが喜んでいる。
こっちは早乙女家からの報酬というか、いつの間にかそうなったというか。
一般人である僕が、鳳凰学院大学に入っても完全に浮いてしまう。
そこで高校卒業後に僕とネグリジェは籍を入れることになった。
大学入学時には夫婦となっており、ネグリジェの関係者として僕も入学したという雰囲気を出すらしい。
それによって、学院内の寮も一戸建てを使用でき、二人の秘密をばれにくくするそうだ。
「その分、影分身は3体地球側へ出しっぱなしになるし、小型ゲートも九条さんのスマホにつけっぱなしだけどね」
「その分レベルを上げればいいのよ。
相手をできるニクの数が減ってしまうと、皆暇になるんだからね。
その分ユニットを増やして、迷宮にさらに向かわせればいいのよ」
僕とネグリジェだけでなく、九条楓さんの分の影分身も地球に送ってある。
その分今は、手元の分体の数が減っている。
そしてさらに3日が過ぎた。
途中で影分身の別の使い方を思いついた。
地球側の人の影分身を、異世界に招待する。
あくまで関係者だけだけど。
最初に来てもらったのは、沢木さんと小池さんの弁護士組。
空飛ぶブルーシートで開拓都市を上空から案内した。
次に僕のお父さんとネグリジェの両親、そして従姉のサユリさん。
同じく空からの案内をした後、サユリさんだけは別行動をした。
サユリさんは、城に住んでいる女性陣の下着や洋服などをそろえようと考えていたらしい。
そのために、サイズの測定をしたかったそうだ。
まずはネグリジェ、シースルー、マイア、サーヤ、そしてマイアの仲間達の合計15人。
そのうち108人のお姉さま方の分も用意することになるかもしれない。
ネグリジェは新たなネグリジェ以外に、ベビードールまで頼んでいた。
さらにセクシーさに磨きがかかる。
もう夫婦になるんだし、良いでしょ、とか言いきっていた。
異世界といえども平和でゴロゴロとした日常。
ゴロゴロしながらもみもみしていると、ネグリジェが声をかけてきた。
「ねぇニク、異世界のユーチュ〇バーって知ってる?」




