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かごめの詩  作者: an-coromochi
三章 探索と捜索
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林道にて 2

 しばらく、二人は無言だった。道が狭くなって、鬱蒼としてきたから、死角ばかりになっていたのも、その理由の一つではあった。


 非常食のぱさつきによって、渇き切った口内を潤す水分が欲しい。どこかに小川でもないかと視線を時々四方に散らすが、見えるのは落ち葉と土、木の幹だけだ。


 どれくらいの時間歩いただろうか。十分ぐらいしか経っていない気もするし、一時間は歩いた気もする。


 …以前に比べて、かなり体力が落ちている。


 単純に年齢的な問題や、運動量の低下も原因の一つなのだろうが、精神的な体力のほうが落ちているようだ。


 オブラートに包まなければ、根性がなくなった、ということ。


 化け物に追われているときだってそう。


 鶴姫がいたから、それを支えに戦ったり、走ったり出来たが、きっと彼女がいなければあんなふうにはいかなかった。


 昔は、私の前は誰もいない――たった一人でも、走り続けることが出来たのに。

 むしろその光景が、自由のパイオニアになれているみたいで、酷く興奮していたというのに…。


 もしも、一人で襲われたとき…、私は最期まで抵抗できるのだろうか…。


 不意に、思案に耽っていたかごめの視界から、鶴姫の姿が消えていることに気づいた。


 まさか、と思いながら周囲を見渡すと、幸いなことにすぐに彼女の姿は見つかった。


「何してるの」軽トラの荷台にへばりつく、鶴姫のそばへ移動する。「いや、何か使えそうなものないかなって」


「ふうん、麦わら帽子とか?」


「ばーか、違うし」


 冗談なのだが、と思いつつ、待っている間暇なので、かごめも工具や汚い作業着でいっぱいになっている荷台を漁る。


 レンチやトンカチも武器として使えそうだが、それはあくまで、普通の生き物相手ならばである。


 こんなもので化け物を殴っても、傷一つ与えられないことは明々白々だ。


 ゴミと工具ばかりで大して役に立ちそうなものはないな、とかごめが小さく落胆を示す一方で、鶴姫は楽しそうにガラクタ漁りを続けていた。


 こんな状況で、宝探しか。やはり、まだ子どもだな。


 どこか辟易とした気持ちでガラクタの山から手を引いたかごめは、ぐるりと軽トラックの周りを旋回した後、続く道の上を見つめていた。


 もう少し上れば、一本道ではなくなりそうだ。

 いよいよ、屠殺場が近いのだろうか。


 もしも、そこにも白雪がいなかったらどうしようか、と暗がりに引き込まれそうだったかごめの肩を、コツン、と何か硬いものが優しく叩いた。


 振り返ると、色々と腕にぶら下げた鶴姫の姿があった。どうやら自分の肩を叩いたのも、ベルト式のポーチのバックル部分のようだ。


「サボり」意地悪い口調で呟くも、鶴姫の表情はどこか満足そうだ。


「誰かさんがガラクタいじりに夢中だから、見張っててあげたんでしょ」


 小言に小言で応じながら、それを受け取る。


「は?やっぱり返して」

「大体、何か良いものでもあったの?」


 鶴姫の言葉を無視して、手渡された道具を見つめる。


 工場や土木の作業員が着けていそうなボディバックだったが、ところどころ泥が付着し、変色し、鉄の部分は錆びていた。


「汚いなぁ、もう…」腰に巻くかどうか迷いながら、かごめが呟く。


「何もしてないくせに、文句ばっかり!さすがはフリーターね」


 痛いところを突かれて言葉を失ったかごめを横目に、鶴姫は勝ち誇った表情になった。それから、何の躊躇もなく似たようなバックを腰に巻くと、長さを調節し始める。


 汚れたりするのは気にするタイプかと思っていたので、意外だった。

 それにしても、ミニスカートにはあまりに不似合いなバックである。


 白い太ももに、錆と泥に塗れたバック。美しい花の茎にまとわりつく、アブラムシのような印象を受ける。


「これから先、丸腰ってわけにはいかないでしょ。ポケットに入れられる量なんてたかが知れてるし、両手にぶら下げて走るには邪魔だし」


 まぁ確かに、武器を手にするかどうかはともかく、今みたいに喉が渇いたときにペットボトルを手に持ったまま行動するのは不便だ。


 一理ある、と肯定すると、鶴姫はふふん、と鼻を鳴らした。


「…生意気だなぁ」つい、心に思っていたことが漏れる。

「何、負け惜しみ?悔しいんだ?」


 イラっとして彼女を見やると、ひらひら短いスカートの裾を揺らして歩き出すところだった。


 …今度また生意気を言ったら、あの短いスカートをめくり上げて恥をかかせてやろう。そしよう。


 鶴姫の後に続きながら、仕方がなくボディバックを装着する。ジーパンに錆が付きそうで正直、不快である。


 きちんと体に固定した後、鶴姫の後ろ姿を追いかけながら、たくさんついた小ポケットの中を探る。


 ほとんど無意識にやっていた行動だったのだが、縦長のポケットに手を突っ込んだときに、何か中に入っていることに気付いて、それを取り出した。


 鞘に入ってはいるが、中身は小型のナイフであった。念のため、柄を握って鞘から取り出す。錆かけてはいるものの、銀の縁はしっかりと夕日を反射して、赤くきらめいている。


 物騒なものを、とも思ったがないよりマシなのは確かだ。

 …だが、せめて、凶器が入っていることぐらいは教えておいてくれよ。


 坂道を上り、細い脇道に逸れてからは、目的地までそんなに時間はかからなかった。

読みづらかったり、もっとこうしたほうが良い、という意見がありましたら、是非お寄せください!


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[一言] 廃墟探索ならバールとガムテープあればうれしいんだが。
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