明日輝く
突入というほどもなく、獰猛だが魔力は魔族には足元にも及ばない獣と人間達。
そこには他にも魔族がいたが、魔力は宰相補佐官達に遠く及ばず簡単に捕まえられた。
「俺らでも人間相手なら、魔力で勝てる。」
人間の国を乗っ取ろうとしていたようだが、協力者の人間と指導権争いで分裂したようだった。
魔力は魔族の方が優れていたが、争いは人間の方が慣れていた。
はるか昔、人間と別れた魔族は異端児であった。
何代にもわたって自分達の身体に魔術をかけ続け、寿命までもが大きな違いとなった。
魔力が強い者ほど寿命は延び、魔王は4~500年、平民でも魔族は200年近く生きる。
寿命が長くなり出生率が落ち、一時期、爆発的に増えた人口は大きな変動がなくなった。
もう人間とは別の種族であり、人間に興味を失った種族である。
興味を失ったのは人間にだけではない、様々な事が魔術でできるようになると、いろいろな事に興味を失った。
「すごい、人間の国を乗っ取ろうとするなんて。」
セシルが目を丸くして言う。
「そんな面倒な事しようとするなんてバイタリティあるわね!」
だって~、とセシルは続ける。
「人間って魔力があるのは一部の人間だけだし、魔力も小さいから念話できないのよ。
言葉で説明って大変だと思うわ。
人間の国を統治するって、考えるだけで大変よー。
魔術だと一瞬でできる畑の管理も牛の世話も手作業よ。」
偉いわねー貴方達、と他人事である。
捕まった魔族達も協力者の人間達と上手く出来なかったことから、身にしみて分かったようだった。
魔族は魔界で己の魔術を高めることを鍛練したが、長い時間平和であった。
その間に人間達はいくつもの国が滅び、新たな国がつくられ、切磋琢磨してきた。
例え魔力に大きな違いがあろうとも、平和ボケした魔族に対し過激な競争を繰り返してきた人間達が負けるはずがない。
魔術でない部分では、魔族は人間に太刀打ち出来ない。
「ほらほら、早くはきなさい、痛い目に合いたくないでしょ。
人間側の協力者をさっさとはきなさい!」
セシルはマクシミリアンの部下である宰相補佐官達に、鞭はないの?と聞いている。
「セシル、鞭は人間の道具だ、魔族の拷問は違うぞ。」
「痛ければ何でもいいのよ。彼らに希望を聞いてみる?どっちの拷問がいい?」
残念ながら、セシルの希望は通らなかった、捕まえた魔族達が簡単に口をわったからだ。それは、今回の旅で知り合った王族達に伝えられ、任せる事となった。
これから魔族にも人間との接点が増え、女王セシルには様々な対応が迫られるだろう。
成るようにしか成らない対応のセシルと心配性のマクシミリアン、胃に穴が開くのはマクシミリアンの方だ。
「根性なし!」
マクシミリアンに抱かれて魔界に戻る間ずっとセシルは文句を言っていた。
余程、彼らで遊びたかったらしい。
「セシー、そんなことより結婚式の準備を始めましょう。」
マクシミリアンは喜びを隠せない、もう待つ必要がないのだ、セシルにも異存はない。
「ドレスを選びたい、マクシミリアン一緒に選ぼ。」
「もちろんですとも。」
「マクシミリアンの頑固者!!!」
王宮にセシルの声が響く。
「どんなに言われても譲りません。
そんな露出の大きいドレスはダメです、背中が大きく開いているではないですか!」
「どうせヴェールで隠れるじゃない!」
大人になったセシルは子供では着れなかったドレスを着たい。
「女王命令です!」
「陛下の間違いを正すのも臣下の努め。」
マクシミリアンも一歩も引かない。
大人になったセシルは会議にも出席し、名実共に女王だ。
いかんせん、頭の出来はマクシミリアンに及ばないが、決定権はセシルにあるはずなのだ。
ガォー、と火をはきそうなぐらいのセシルがマクシミリアンに魔術を仕掛けていく。
実力行使に出た段階でセシルの負け確定である。
魔術の出来もマクシミリアンに及ばない。
ヒクヒクと泣きながらマクシミリアンの膝に座って、身体をあずけているのはセシルだ。それは子供の姿の時と同じままである。
自分は女王なのに、マクシミリアンに勝てるところがない。
「そんなに着たいなら、それも作りましょう。ただし、それを見るのは私だけです、セシルの背中はキレイですからね。」
「ねえ、マクシミリアン、真っ赤なドレスも着たいの。」
「もちろん、私のためにですよね。いいですよ。」
セシルがねだれば、マクシミリアンは直ぐに落ちる。
正面から堂々と対決してはセシルに勝ち目はないが、色仕掛けでいけばセシルに敗けはない。
立派に悪の女王に育ちつつあるセシルだ。
セシルの瞳は野望に満ちて輝く。それは世界制覇ではなく、未来の夫を尻に敷くことだ。
魔界と呼ばれるオデッセア王国で荘厳な結婚式が行われ、初めて人間の王族が招待された。
セシルの父である先代の王がセシルの手をひき、マクシミリアンの元へ届ける。
聖堂と呼ぶべき巨大な教会にはたくさんの人々が並び見守っている。
セシルとマクシミリアンはお互いに誓約を交わし神父の祝福を受け、夫婦となった。
「普通の結婚式で驚いた。」
呟くのはランベルトだ。
トアルコ、グロリアーノ、ワインデルの3ヵ国の王太子が招待された事は、各国にいろいろな意味の衝撃を与えた。
魔界に興味のない国などない、3ヵ国が先駆けした形になっている。
「マクシミリアン、これから人間達と積極的に交流するの?」
ね、ね、世界乗っ取っちゃう、って手もあるわね、面倒くさいけど。
横にいるウェディングドレス姿の美しいセシルに見とれながら、マクシミリアンが答える。
「全ては女王陛下のお心のままに。」
これにて完結となります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
読んで下さる方がいる事が励みとなり、完結まで書くことができました。
再度になりますが、ありがとうございました。




