陰謀
その夜は王宮に泊まったマクシミリアンとセシルは翌朝もめていた。
マクシミリアンは積もった思いを成就して颯爽としていたが、セシルはベッドに撃沈していた。
「マクシミリアン、程度ってものがあるでしょ。もっと労りなさいよ!」
「ちゃんと手加減しました。すぐに結婚式をあげましょう。」
もう待ちきれないとばかりに、マクシミリアンが予定を立てる。
「今日、帰国して明日は結婚式ですから、先代王陛下に連絡せねばなりませんね。」
「はあ、バカじゃない。女王の結婚式よ、明日な訳ないでしょ。」
セシルの否定に、マクシミリアンは無理です、待てません、今すぐ式を挙げたいぐらいです、と譲らない。
「ああ、それにしてもセシーは美しい。
愛してます。」
マクシミリアンが我慢できません、とばかりに抱き締めてくる。
それをセシルは手で払い。
「お腹すいたー!
朝ごはんにしたい。
今はマクシミリアンより朝ごはんの方が魅力的よ。」
朝ごはんの下に置かれたマクシミリアンはショックを隠しきれない。
マクシミリアンを放置してベッドから降りたセシルは服を着るため裸体で歩いて行くのを、マクシミリアンが慌てて追いかける。
「誰かに見られたらどうするのですか、私だけのものです!」
「じゃあ、早く服。ご飯に行くんだから。」
マクシミリアンが魔法でセシルの服を持ってくる、しかも着付けている。
「私が服を着る間に、自分で髪をとかせますか、大丈夫ですね?」
相変わらず母親をしている。
セシルはウンウンと頷きながら、髪をとかしている。
食事を済ましたセシルとマクシミリアンは王に挨拶に向かう。
「おはようございます。」
執務室の扉を開けると王太子がセシル達を迎えでた。
「私達はこれで帰国しようと思うのでご挨拶にきました。」
マクシミリアンがそう言いながら、
「そうそう、これは役に立ちますか?
鏡のお礼と言ってはなんですが、セルダンの街で手に入れたものです。」
取り出したのは小麦の納品書である。
「何ですか?」
王太子は紙を受けとると内容をあらため始めた。
「これは!」
すぐに王にもそれを見せマクシミリアンに向き直った。
「どこでこれを?」
「セルダンの街の雑貨屋の壺の中にあったのです。」
マクシミリアンはその時の状況を説明した。
「今、我が国では小麦が高騰しており、市民の生活に支障をきたすほどです。
豊作ではありませんでしたが、高騰するほどの不作ではありませんでした。
どこかで止められているのです。」
「それがこの納付書と関係あるということですね。」
マクシミリアンも王太子の説明で気が付いたのだろう。
この納付書は隠されていたのだ、処分されないように隠されていたということだ。
ここには納品した小麦の量と日付、価格、受取人の印まであるのだから。
「いくら財力があろうと、国に流通する小麦の価格を調整するほどの買い占めはできないでしょう。」
マクシミリアンの疑問に王太子は訂正をいれる。
「これは売買記録ではないのです、納品したというだけで、まだ販売されていない。
価格があがるまで待っているのです、どこかの倉庫に貯蔵されていると思われます。
先導している人物につられて、たくさんの人間が小麦を高く売ろうと貯蔵していると推測してます。
この何百倍、何千倍もの量でしょう。」
「それでけでは、ありませんね。」
マクシミリアンの言葉に王太子はセシルとマクシミリアンに資料を見せる。
セシルも一目見てわかった。
周辺国の武力の報告書である、隣国の武器購入が著しく増えている。
「この受取人は我が国の国務大臣である伯爵です。
そして、隣国と繋がりがあると報告があがっています。」
「そこまで、私達に言っていいのですか。」
王太子がニヤリと笑ってマクシミリアンに答える。
「私達は秘密を共有する同志だと思っております。
もちろん、手伝ってくださると信じてますよ。」
きゃー、とセシルがマクシミリアンに抱きついて興奮した顔をあげる。
「これって、歴史的大事件よ。
魔族と人間の共同戦線!」
大人しくしていて欲しいセシルが口をはさむ。
「セシル、私達は帰って結婚式をする予定です。」
マクシミリアンは早く魔界に帰りたい、結婚式をあげたい。
「私が女王よ。宰相、策をねるわよ!」
仕方ない、とばかりに天を仰いだマクシミリアンがセシルの手をとりキスをする。
「仰せのままに、我が女王陛下。」
「つまりは国務大臣は、小麦の流通を止めて国民に不満を与え、それに乗じて隣国の軍を引き込もうと言う事ですね。
多分、小麦の高騰で得た膨大な利益は隣国の武装に回されている。
隣国が征服した後に、貯蔵してある小麦を提供することで国民の支持を得るつもりでしょうね。」
「多分そうだろうね。」
王太子は今さらながらと、驚きもせず続ける。
「国務大臣は、とても上昇志向が高いというか、権力欲の高い人でね。
断っても断っても娘を私に押しつけて来る。
方向を変えたみたいだね、私でなく、隣国を操ろうと。」
嫌なタイプですね、とマクシミリアンが言うのを、だろう、と王太子が答えている。
「どうするつもりですか?」
マクシミリアンが王太子に問いかける。
「相手が陰謀でくるなら、こちらは正々堂々、正面から行くつもりです。」
言いながら王太子はマクシミリアンに手を差し出す。
あはは、と笑いながら、いいですねとマクシミリアンが王太子の手を取る。
「ちょっと!女王様を飛ばして話を進めないでよ!!」
無理やりセシルも割り込んでくる。




