王の想い
画家の男は、たくさんの警護兵に囲まれても動じた様子はない。
「我が愛を姫に捧げます、どうか私について来てくれますか?」
男が姫に囁くと姫は、嬉しそうに見るものを幸せにするような微笑みで返した。
「エディとならば、どこへでも。」
クレメンティーヌは、覚悟ができているのだろう、動じることなくエディワルトを見つめている。
「私の名はエディワルト・リッチー・オデッセアと言います。」
画家がクレメンティーナを抱きながら、公爵に向かって名を告げる。
それに反応したのが、マクシミリアンだ。セシルは朦朧としていて反応が薄い。
「やはり、セシルの先祖でしたか。」
え、と声をあげたのは王と王太子。
「公爵、貴方には申し訳ないが、クレメンティーヌを拐わせてもらう。」
愕然とした感だった公爵が、その言葉で我に返ったようだ。
「オデッセア、魔族の王家。」
この頃は、魔族もまだ人間と接触があったらしく、公爵のように名を知る者もいたようだ。
王と王太子がセシルを見ている。
「私は貴方達が魔界と呼ぶ国で宰相をしており、セシルは女王、魔王と呼ばれています。」
「トアルコもグロリアーノもそれを。」
問いかけてきたのは王太子だ。
マクシミリアンは頷くことで返事にする。
「姫は私に拐われたと王家に伝えるがいい。」
そう言ってエディワルトはクレメンティーヌを抱いたまま姿が一瞬で消えた。
「クレメンティーヌ!」
公爵が手を伸ばすが、そこには何もない。
辺りが一変し、そこは王宮のようだった。
ガッチャーン!!
グラスが床に叩きつけられて割れた。
「カリエ公、クレメンティーナが出て行ったではすまされないのだぞ、式はもうすぐだ。」
王の前に立つのは、クレメンティーヌの父であるカリエ公爵、顔色は悪く、クレメンティーヌの失踪を報告しているようである。
「ですが、王。私は側室をとる時に反対したはずです。
婚約者の父として、娘を持つ者として受け入れられないと。
クレメンティーヌがそれで、王への信頼は無くなりました。」
「だからといって他の男に走るとは許せない!
その者を牢にいれろ!」
王は護衛兵達に指示をし、部屋を出て行った。
王が向かった先は、クレメンティーヌの部屋になるはずの部屋だった。
既にたくさんの家具や装飾品が運び込まれていた中に肖像画があった。
王はその前に膝まずくと肩を落とした。
「クレメンティーヌ、嫁いでくるのを待っていたんだ!」
クローゼットからドレスを取りだし投げつける。
王がクレメンティーヌの為に用意をしていたのだろう。
「側室を取った時に悲しそうな瞳をした、わかってたんだ。
だけど大臣達の娘を取り込むことを、わかってくれると思ってたんだ。」
いろんな物が壊れる音が響く、王の手は傷で血まみれになっている。
「陛下。」
王に声をかける者がいた、側室の一人だろう、豪華なドレスを着ている。
「陛下、どうかお気を静めてください。私も王子もいますわ。
式ならば、私が立ちます、王子を産んだのですもの資格はあります。」
側室を見る王の目は血走っている。
「誰がこの部屋に入っていいと許可した。
ここはクレメンティーヌの部屋だ!」
王は側室の腕を掴むと引きずるように歩きだして向かったのは執務室。
そこには多くの大臣達がいた、公爵の更迭と結婚式がなくなることの対応をしていたのだ。
王はそこに側室を放り出すと、
「この者も息子も放逐しろ。側室は全て放り出せ、子供もだ。
逆らうものは牢に放り込め。」
「陛下。無謀です!」
大臣達が叫ぶが、王の怒りは治まらない。
「側室達に一切の金品を出すな。国の財務のかかった物は取り上げろ!
直ぐに門下に放り出せ!子供もだ!!
あんな者がいるから、こうなったのだ。
逆らうものは王家への謀反とみなす。」
「兄上、言っていることがめちゃくちゃです。」
王弟なのだろう、王の前に立ちはだかる。
「クレメンティーヌがいない、いないんだ!」
「兄上の子供です。」
「欲しくて作ったのではない、私の子供の証拠もない!」
「兄上、それはあんまりです。」
「子供が出来ないように魔術を使っていた、出来る方がおかしい。」
王弟が目を見張り、では誰の子供だ、と王に詰め寄る。
「誰か連れ込んでいたんだろ、私には側室などどうでもいい事だった。
だから王子も王女も魔力を持ってないだろう、王家の血を引いてないからな。」
それを聞いていた大臣達の顔が引きつっている、自分達の娘を側室として上げていてのだ。
クレメンティーヌが子を産めば、いらない存在だ、何人いようが興味なかった。
「兄上が王子達を可愛がらないと思ってました。
そうだったんですね。
魔力がないのも納得しました、側室達は上手くやったつもりだろうが、王家には魔術がありますからね。」
王弟が納得したように、大臣達を見る。
「そんなはずはない、娘は側室として王の子供を産んだのだ!」
側室の父親であろう、大臣が慌てて否定をする。
答えたのは王でなく、王弟だ。
「側室達は王の子供を産む必要があるのに、出来ないとなると考えたのでしょう。相手は平民か、下級貴族でしょうね。
王家に生まれたなら必ず魔力がでるのです、我が子には魔力を与えるように魔術がかかってます。
不義を働いた側室は放逐が相当でしょう。
兄上はこの為に側室達を放置していたのですね。」
「それは、代々の王家の伝えです。秘密裏に魔力の伝授が今も行われています。
私も多少の魔力があります。」
王太子がそう言って、見ているものを肯定する。
人間も魔族程でないが魔力のある者が多くいる、そしてそれは王家の力ともなっている。
この王家は呪いに秀でた一族でえあるのだな、とマクシミリアンは推測する。




