10 Ordinary World
枝は絡み合い、刺突の棘を四方に延ばし、幹の中心を籠と変えた巨大な蛇のように変化を遂げていた。
もちろん町行く者達にそれが見えるわけではないが、根を張った樹木と、枝を獣に変えた敵は、駅前に続くバスロータリーの中央を陣取り、目の前に広がった公園にいた二人の男女を絡め取っていた。
『悲恋万歳、ドラマというはいいね。人間の感情を、哀楽激しい物のあり方を良く教えてくれる』
水晶の間、円陣に並べた真ん中に座るニギラは、赤い眼を輝かせて得物を見ていた。
互いのすれ違いを元に言い合いを繰り返していた恋人達が、感極まって作られたブラックハートは程よく熟れた果実、枝が目指す先に輝いている。
『別れる? 別れない? 一時的に心を打ち合わせるだけの事に、こんなにも重くなれるなど愚の骨頂だね』
部屋そのものをコンパクトな結界に使う方術。
並ぶ十個の水晶が増幅と操作精度を決める、それ以降の力の配分をニギラは受け持ちながら、逃げ回っていた男女を枝の籠に掬いあげた。
狭い隘路に逃げた二人はすでに混乱の状態で、ブラックハートの鮮度を優先し一直線の採取が行われた時だった。
光の使徒は枝の根に対して重い一撃を打ち付けた。
「好き勝手な事しないでよ!!! 」
幹に重なる枝の群れをガラス細工のように粉砕する。
破片の間を割って、一つの竜巻のごとくアイレシオンは飛び出す。
降りかかる木くずなど、今燃えている心で火を付けられる程の勢いで。
「許さないんだから!!! あんた達は人の心を傷つけて!! 」
枝の先、刺突の束に貫かれ、抜き取られたハートは前と同じようにさらなる闇に投げ込まれようとしている。
「止めて!! 待って!!」
声を挙げ運ばれるブラックハートを取り返そうとするアイレシオンは、敵の切っ先に迫り走ろうにも、その間を縮める術がなかった。
枝の混線は足場を想像以上に悪くしており、未だ飛べないアイレシオンを前に進ませる事を阻んでいた。
しかも言葉に力を合わせられない現世愛の使徒。
この状態を恐れる理由などニギラにはない。
『力無き救世主。無駄なあがきだよ、しかしここに来てくれたんだ……おもてなししよう』
闇に輝くルビーの瞳は無機質過ぎる輝きの下で横一線の瞳孔に秘めた悪意を大きく見開いていた。
水晶に写る熟れた果実であるブラックハートのために、採取の壺を開く操作を軽くこなすと、大木と化した枝の上空に黒い大きな穴が出現し、風を吸い込むがごとく鼓膜を打つ重い振動が響く。
『泉!!残った半分の愛を取れ!! それが先っちょ!! 』
「そんな事より盗られたのを取り返す!! まずあれを壊す!! 」
ポン様の声を振り払ってしまう感情の激震で開いた穴を睨んだ泉は、飛べない体を前に押し上げるために幹に亀裂を入れる足踏みをして走り出した。
『泉!! アレを倒すために必要な愛を取らねばならんっちょ!!』
『愛乃泉!! 話しを聞くルルン!! 』
アイレシオンの白銀に変わった髪と、背中に続く羽根飾りにしがみついた二匹のペンギン。
必死の声で、相手に抗う術を伝えるポン様だったが、泉は苦しみや悲しみで混濁した精神状態。
普段以上に自分を抑えられない状態になっていた。
友達の事、友達が大切にしている家族の事、祖母の事、何もかもが一緒くたに混ざりそれぞれの持つ色を破壊した濁流に呑み込まれた感情。
その中でただ一つになり燃え上がった怒りに身を任せすぎていた。
『話しを聞けっちょ!!! 』
すれ違う轟音に合わせた衝撃は額に穴を開けていた。
髪にしがみついていたポン様は、前のみを見る泉の顔に飛びついていた。
怒りに尖った泉の目を一瞬で白紙にして、意識を復旧させる痛みを与えるために。
「ポン様!!! 」
『落ち着け!! ものには順序がある、この枝の中を備えもなく飛ぶのはやばいっちょ!! まずは愛の欠片をとらないと……』
突然アイレシオン、ポン様、エルル、三人の体は大木の幹からはじき飛ばされていた。
『おそいよ、精霊王。ここは僕のテリトリーだ』
頭に響くニギラの声。
同時に開いていた暗闇の穴の向こうに浮かんだ赤い瞳
警告灯のように煌々と輝く目は、朱色一本の瞳孔に笑みを浮かべていた。
『招待するよ神の牧者。闇の底に……現世に戻れぬ旅に』
頭に響く声で、それが海に現れた氷の結界を張ったウサギである事はわかったが、次の瞬間には対処の出来ない衝撃にアイレシオンの体は投げ込まれていた。
巨大な渦は天の穴に発生し、吸い上げるように三人を持ち上げる。
強く体の四肢を引く力に意識が遠のく泉に、二匹がしがみつくが、力のないペンギンに何ができるわけでもない。
出来る事は泉の意識を保たせる事ぐらい、泉自身も押しつぶされる圧力と引かれる力の中でもがいていた。
「許さない……から……」
息を詰まらせる突風は天に向かって立ち上がり、アイレシオンと二匹は抵抗やむなく穴に突き上げられていった。
『そこで闇に埋もれていくといい、永遠に後悔というブラックハートを作り続けてくれ』
冷静すぎるニギラの声は淡々と耳に残り、徐々に大きくなる風にかき消され。
町の姿は深い闇に消えていった。
自分達を吸い込んだ穴から手を伸ばしながらも、アイレシオンは闇に溺れ消えていった。
「今、揺れなかった?」
愛乃乙女は覚めた視線で話をそらす一言を、娘瞳に言った。
サマーストールを肩に、髪を右に流したラフとはいえ貴婦人らしい出で立ちで、静かに揺れる電線を見ていた。
愛乃家の一軒家は古町の高台にある。眼前は駅に繋がる大通りで、夜になれば街灯が続く一本の光の川のようにも見える場所で見晴らしは最高だ。
今は夕暮れ前の黄色い日差しが、屋舎の影を長く伸ばす時間帯。
玄関ドアを開けて、外に出た乙女の後ろを、娘である瞳はサンダルを履いて追った。
「お母さん、話しを聞いてくれています? 」
「聞いたわよ、貴女の言い訳は」
白髪の母の言葉には触れれば刺さる棘があった。
泉が祖母を駅に置いて帰り、翌日も顔を合わさず学校に出てしまった事で、瞳は母の督促にあい、仕事場から家に帰ってきていた。
慌てた足で家に入った途端に、乙女からの叱責を受け言い合いになりそうだったところで、地面に響く軽い揺れに逃げられたところだった。
「言い訳じゃないの、泉は確かに、少しばかり気むずかしいところをもった子だけど……」
「貴女の教育がなっていない証拠ね。それを子供の心持ちのせいだなんて……見苦しいわ」
聞かないという顔。
年老いても、涼しげな切れ長の目線は自分の娘の顔を、眼鏡を外し、苦悶を浮かべた額を指差すと。
「礼儀のない子に育ったのは、貴女が家を開けて仕事ばかりに熱中していたからでしょ……貴女の自分本位な生き方が誠さんを家から遠ざけて家庭を壊し、泉の教育をおろそかにした。私は間違った事は言っていませんよ」
「お母さんに言われたくないわ、家庭を壊したのは……お母さんの方じゃない」
「不思議な事を言わないで、私はきちんと貴女を教育してきたわ」
「教育なんて……どうしてお父さんの事忘れてしまったの? 大切だった人を不必要になったと言ったのよ。泉の前で、私の前で、私はそれから教えたらいいの?」
初めての反抗ではなかった。
母に対してこの言葉で責め立てても、思い出せない人の心を叩くのは、大きすぎる湖の小さな波紋にすぎないと失意を募らせるものだが、瞳の言いたい事はそれしかないのだから仕方の無い事。
十年前、母は変わってしまった。父が召されたあの日の朝、母は父の記憶の大半を失い、大切だった日々を捨ててしまった。
あの日から何度もこの問答を繰り返したが、二度と母の心がかつての輝いた時に戻る事はなかった。
「なんの話しをしているの?」
「お母さん……本当にお父さんの事忘れてしまったの?たった十年前の事よ、お父さんと過ごした時間はその倍以上なのに……どうして忘れたの?」
瞳は教育の根源というものを問うていた。
人間に大切なものを欠落させたまま、何を教えて良いのかと。
愛する人を、居なくなったと忘れる事を、どうして自分の娘の泉に教えられるのかと。
欠落してしまった思いのまま、瞳は自分を不思議そうに、同時に怪訝な目でみる母の姿が悲しかった。
愛した夫が召されたのは、寿命もあった。いや天寿であり大往生だった。
その日までを満ち足りた愛の中で過ごして逝った。
母が終わりに向かう父との日を懸命に過ごした姿を見てきた。なのに……
「ねえ、本当にお父さんを忘れたの? それを教えてよ、それが解らないと……私は」
声を詰まらせる娘に、乙女の態度は変わらなかった。
首を傾げて、いつもと同じように言い返した。
「いなくなった者の事なんて……」
「こんばんは」
胸の前で手を押さえた泣きそうになっていた瞳と乙女の間に入ったのは、ビジネスシーンでの活躍を絵に描いたようなパンツスーツ姿。髪を綺麗に結い上げた頼子だった。
厳しく尖った目は瞳に小さくお辞儀をすると。
「旦那様が居なくなったのは十年前の事ですか?」
濁りも躊躇いもない声は、乙女と顔を合わすと菱型に尖った目で聞いた。
思わぬ客に涙を隠した瞳の顔は、毅然とした顔でいきなり心を抉った頼子を見直したが、頼子は瞳ではなく乙女を見つめていた。
ここに来るまでは、愛乃泉の母がバルキュリア・ルーノだと思い込んできた。
頼子は高台の町まで歩き、角を曲がったところで二人の会話を聞いて、それは間違いであると確信を得た。
失った者と時間と、愛おしい記憶。
会話の端々にある、行き違い。
取られたブラックハートで愛の半分を失った人達の姿、それに重なったからだ。
「初めまして愛乃乙女さん……お久しぶりですバルキュリア・ルーノ」
「飲み込まれた……」
泉を追って町を歩いていた有紀と鳩子は、頼子の後を追っていた和美達と駅前で鉢合わせ、泉の家に向けて共に走っていたが火急を知らす輝き、フラワーハートに映ったアイレシオンの危機に足が止まっていた。
出てこない姿に懸命にメダルを振る鳩子は、焦った顔で
「どっどうなっちゃったの……」
二人のフラワーハートでしか見られないアイレシオンの姿、それが闇の穴に吸い込まれ消えたのに思わず有紀は和美に飛びついて聞いたが、和美も今まで見た事のない敵の姿に目を丸くして困惑の顔を返すのが精一杯。
柴原も加賀野も、状況の規模こそ理解はできなかったが、頼子の焦りはこういう事が待ち構えているという心配から起こっていたと認めざるえなかった。
感じる不安、町を揺らす他次元の慟哭に全員張り詰めた表情で、眼下に広がる駅の様子を見た。
有紀と鳩子のフラワーハートに映る巨大な木。
闇の枝が集合して作り上げた大きな敵の中にアイレシオンは抱き込まれるように飲み込まれていた。
その巨大過ぎる力で現世の空間は揺れ、歪みは機能しないフラワーハートを持つバルキュリア達にも伝わっていた。
敵は確実な方法でアイレシオンを閉じ込め、仕上げに向かって動き出している。
「わからないは、こんな状況私達でも見た事がない」
ナビを構えていた加賀野は、自分達を案内してくれていた二人の顔を交互に見た。
十年前の戦いでは見られなかった敵の動きを、何であると教える術がない事に唇を噛んで、それでも先を歩いた者として冷静に考えて。
「今の状況を私達は知らない。そしてこのままの私達の力ではアイレシオン届かない……この状況を好転させる何かが、私達にはない」
輝きのないフラワーハート……
今輝くフラワーハートとの差はそこにある。
闇に吸い上げられたアイレシオンに声を届ける事が、もし出来るのならそれは有紀や鳩子の持つフラワーハートに限られるだろうという予想。
それでも、それがあっても届くかどうかも未知数の敵に加賀野は憶測でものはいえないと首を振り、万策無しと俯いた。
「私達には……他次元に干渉する力がない」
「私は泉を信じる」
静まってしまった一行の中で有紀は声を大きくして言った。
「難しい事はわからないけど、私は泉とこのフラワーハートで繋がっていると信じている。だから私の声は届く!! 」
恐怖がない、そんな訳がなかった。
フラワーハートが映した他次元の世界を行く敵は、巨大な食虫花のような大きな物体だった。
抗うこともままならない状態で飲み込まれた泉を思えば、アイレシオンであっても太刀打ちできぬ強さだとわかる。
その敵に、生身で挑むという無謀にも近い。
でも二人は止まって泣くことの方が出来なかった。
自分達の心を、愛を助けた友達をなんとしてでも助けたいという想いが大きく背中を押していた。
「泉が私達のために戦ってくれた事をフラワーハートが教えてくれた。だから私達は繋がっている!! 私は泉が戻るために戦う覚悟がある!!」
「私も行くぞー!!」
おもちゃをたくさんぶら下げた鞄を、有紀に習って無理矢理背負おうとした鳩子の姿に和美が手を伸ばした。
「鞄は預かるよ、早く行ってあげて」
始まってしまった緊急事態、何も見えない元バルキュリアにも使命があった。
ここで止まってはいられない。自分達にもあった繋がりをもう一度取り戻すための始めの一歩に縋るしかない。
各々の使命に真っ直ぐに動く必要を認め合った。
有紀と鳩子は、現世のアイレシオンにとって唯一力に成れる存在。
有紀の鞄を預かった和美は、愛しい後輩達を抱きしめ額を合わせると
「行きな、私達の問題は私達でかたづける。その後、必ずあんた達を助けに飛ぶ。だから先に泉ちゃんを助けに……あんた達は行きな」
互いの目を合わせ、必ず共に苦難を乗り越えようと誓う声。
走り出した有紀の後ろで鳩子は大きく手を振ると
「和美さん!! 待っているから!! 私達絶対に泉を取り戻して待っているから!!」
一刻を争う戦いはまだ始まったばかり、手を合わせ誓い合ったバルキュリア達は各々の戦いへと走り出した。
息が細く自分の口から漏れる。
冷たくも暑くもない、ただぼんやりと灰色の森が続く世界にアイレシオンは落とされていた。
広がる森の木々に枝葉は、粉末を固めてデコレーション、少しの力で触れたら世界の全てが崩れるように脆かった。
目の前に走るノイズ、灰色で何もかもに生気のない景色が続いている。
「ここは……」
吸い上げられた時は、自分が獣になったように大声で叫び、許さぬ心をさらけ出していた事が嘘のように泉は意気消沈していた。
それどころか、白い砂上に体を放り出し仰向けに寝転んでいた。
虚ろに染まった目が、遠い虚空の何もない空を見回すために静かに動き、細く呼吸だけを続ける。
『闇の回廊ちょ、深みがなくいつまでも曖昧な世界ってところっちょ』
寝転んだ泉の体に座り込んだポン様は、落ち着いた口調だった。
知らない世界はない、そういう目は置かれて居る状況に慌てる事なくすましていたが、エルルの方は必死の様子で、泉の頭の回りを飛んだり跳ねたりと忙しくしていた。
『なんたる事ルルン……何をやっているんだ!! アイレシオン!!』
足踏みも大きく荒い声を嘴から飛ばしたエルルは、寝転んだままの泉の胸の上に飛び乗ると、見下ろす尖り目で聞いた。
『貴様にはアイレシオンであるという自覚は無かったのかルルン!! こんな場所では……愛を得られなければ、ここから脱出する方法はないんルルン!! 何故ペンギンの言う事を聞かなかったルルン!!』
色違いのポン様を羽根で指差して、立腹のエルルは足踏みで泉を蹴る。
痛くはないが、煩わしいと払いのけると
「……だって……許せなくって」
『許せないにしろルルン!! こちらが手順を教えているのに聞かなかったら意味がないルルン!!』
「そんな事言ったって、いつもそうじゃない愛を救えって……だから走って……」
顔を背け、話し合う事から目を背けて泉の姿にエルルの怒りは絶頂だった。
ブンブンと羽根まで振り回すと、自分達がここから出られなくなってしまった事を説教し始めた。
『お前が私達の言うことを聞いて最初の欠片を拾わなかったから……こんな事に……こんな無様な事に』
空虚な闇の回廊。
ここには愛がない。アイレシオンの戦いは、奪われた愛を取り戻すために残された愛の力を使う。
だからポン様も最初に愛を拾えと指示したのに、泉は冷静さを失いがむしゃらに奪われた側の愛を追ってしまった。
結果、愛の御座に力として収まるハズだった、欠片の愛は無く、見事に敵が作った虚空の次元に突き落とされてしまった。
愛を戦いの原動力とするアイレシオンの力では、現状この空間を壊せないという絶望的な結論だった。
行き場を文字通り無くしてしまった一人と二匹。
エルルの怒りは炎のごとく高く燃え上がったが、説教も今更で脱出の術がない間では長持ちもしなかった。
項垂れた嘴は、ポン様に聞いた。
『やい!! 精霊王とやら!! どうしてこんな役に立たない、理解も足らないうえに、言う事聞かない者をアイレシオンに選らんだルルン!! そこが最大の間違いルルン!! 』
「そうよ、ポン様……どうして私を選んだの?」
エルルの怒声の後、泉は体を起こすと小さな声で聞いた。
何故自分を選んだのか、もっとマシな人いたんじゃないかという悔恨を初めて口にした。
愛なんて自分にはまだ遠すぎるという想いがあった。自分は十四才で、深い愛を知る事もない身なのに。
振り返って、なんで自分が愛の使徒に選ばれたのかを知りたかった。
「どうして私だったの?」
『泉は、真の愛を知る人間だからっちょ』
羽根で示した答えにエルルは猛反発を示した。
『馬鹿げてルルン!! 愛ならばもっと純粋な人間を選べば良かったルルン!!』
「そうだよ、もっと純粋な人がいたはずだよ。私みたいにひねくれてない……」
激しい叱咤に、泉は同じような思いを口にした。
自分はそれ程に純粋な愛など持ち合わせていないという事を。
『ふん、それがそもそも考え違いだっちょ、愛にはフラワーハートの側とブラックハートの側が必ず存在するっちょ。純粋だけが愛ならば、表と裏の存在はいらないハズ。だが愛には二つの局面がある。愛は時に豊かさを人はあたえるが、それ故に愛によって傷つく時もある。それらは二つとも必要だから存在する』
「二つ、真の愛……私は知らないよ」
髪にかかった灰を見つめていた空虚な目に少しの光が戻る。
変わらず、隣に座っているポン様はジト目の顔を向き合わせると。
『泉、お前は知っている。愛の強さと脆さを。それを知っていたからこそ友を救ってこれたっちょ』
「強さと脆さ……」
『そうちょ、今日までお前は、有紀の無気力に泣き、鳩子の涙に答え、美志の悲しみ苛立った。それは全部、痛みの愛を知っていたからこそ出来たことっちょ』
「痛みの愛……」
今日までの戦い。
色々な愛があったが、無くせば自分の半分を失う痛みを泉は知っていたとポン様は告げた。
泉はゆっくりと体を起こし、被っていた灰を払う。
自分の前に立つポン様に泉は不可思議と首を傾げて見せると
『泉、お前は知っていた。祖母が悲しみの果てに愛を失った事を目の前で見ていた。それを見て愛の裏面を知った。だからこそ、傷と痛みを助ける愛を知る事ができ、失った事で苦しむ友を助ける事が出来た。ただ純粋なだけの愛を知る者ではアイレシオンには成れぬ。深い痛みも抱きしめられる者でなくては。だからこそ、お前こそがふさわしかったっちょ』
静かに額をなぞる羽根、いつもは黒いポン様の目は金色に輝いていた。
冠の煌めきが、灰色の世界でも失われない事で、言葉の重みと真実に泉は深く頷くと、もう一度だけ聞いた。
「私に出来るの」
『我が選んだ。お前にしか出来ぬ』
静かながらも自信に満ちたポン様の後ろで、エルルは驚きで固まった顔のままで場を見つめていた。
『……』
『そのままにしてろっちょ』
何かを口にしようとしたエルルを、ポン様は気にする事なく飛び上がると肩に乗って、虚空の空を差した。
『よし、答えは出たっちょ。ここから外に出るっちょ。愛を掲げろ!!』
ポン様が差し出したのは、エルルが運んで来た祖母の愛の欠片だった。
透明で、カットラインしか残っていない、ペンダントロケットに納められたそれを、泉は今一度ゆっくりと残された部分を見直した。
中身を失っても、形を残していた意味を探した。
精錬されたメダル、フラワーハートの外殻、いつも美しくしている祖母の後ろ姿と重なる。
気持ちは否応なく高まっていた。
蹲っていた足腰を叩いて立ち上がる。灰だらけだった髪を振り、愛の御座を掲げた。
『泉なら出来る、信じる事で祖母の愛を取り戻せるっちょ!!』
「おばあちゃんの愛……」
錫杖を左手に、右手に渡されたペンダント。
祖母がいつも肌身離さず持っていたこれに、祖父の姿がなかった事に傷ついた。
母も自分も、でもここにあったそれは奪われて消えていたとするならば……
泉は目を閉じ、記憶の遙か向こうにいた祖父の影を思い出していた。大きな手、白い髪、優しい声。
隣に並んだ祖母の顔を。
「笑っていたよね……」
微かに浮かんだのは二人がお互いを見て笑い合っていた……白い影。必ずあった優しい姿。
「おばあちゃん、貴女の愛を力に、私に勇気を!!」
愛の御座に下ろされた欠片に、息を吹き翳した。
白銀の髪は踊り、背中の白い羽根が大きく開く、灰色の世界に待った灰を金色の粒にかえ、御座に宿った愛は少しずつ炎を上げる。
「私は信じるよ。おばあちゃんが、おじいちゃんの事を、本当に愛していたって事を!! 私は信じる!!! 」
息の音、言葉の力は光を伴って空を打つ、ページをめくるように世界は色を取り戻し、遠くまでを囲い続けていた灰の樹木は崩れた。
燃え上がる愛の御座とともに崩れる世界を蹴飛ばして泉はついに飛んだ。
大きく開いた羽根を背に、自分達を閉じ込めた闇の回廊を討ち崩す刃風の一撃を音高くぶつけた。
「愛を取り戻す!!」
『何?』
作り上げた空間の亀裂はニギラの足下の水晶を破砕していた。
真円の美しき宝玉は、あっけなく真ん中から割れ、二つになって転がったのを見てニギラは繊毛の足を素早く引いた。
破砕はさらに細かく水晶を割り、幻想を崩すように細かな粒と変わり川砂のように吹けば飛ぶほどの粉となったものが示すのは、闇の回廊が完全に破砕されたという意味。
『ばかな……闇の回廊に愛はない、何故だ?』
「ニギラ!!」
部屋に留まり事の成り行きを見守っていたアルンは、別の水晶を指差していた。
そこに映る白い羽根を開き、翳すだけで黒き枝を打ち倒すアイレシオンを。
愛の炎と光の翼が奏でる猛り調べに、ニギラが作り上げた枝の結界は大きく軋み、各所に歪みを発生し始めていた。
大きな力に押され内側からの膨張を押さえられなくなっている証拠に、ニギラは苛立ちの鼻を鳴らした。
『錫杖に愛が? それに羽根? おのれ小賢しい!!』
赤い眼に疑問は浮かんだが、策士でもあるニギラの思考はすぐに迎撃に切り替わっていた。
隣で慌てるアルンを押さえ、ウサギは跳ねると円座の水晶をコントロールし始めた
幾層にも重なった赤い水盤の上で、真の姿にまた一歩近づき、羽根を開いて舞踊る使徒に対し、闇の巨大な力を駆使する戦い。
『……やはり精霊王が選んだ使徒、一筋縄ではいかないか。しかしまだ僕の方が優位だ』
殻を内側から破らんと、錫杖を燃やすアイレシオンに対して、枝の刺突剣は轟音と共に殺到した。
自らの身を串刺しにする勢いは、幹に複数の穴を開け、さらにそこから氷のごとく鋭く尖った枝を打ち込む。
足下を切り崩す衝撃の中をアイレシオンは蜂より鋭く、鳥より軽くすり抜ける。
『泉!! この枝の真下に置かれて居るのが闇の根ちょ!! 愛を燃やして打ち砕けっちょ!!』
変わらず髪の毛にしがみついたポン様は、景気の良い声を挙げて短い羽根を震う。
一方的だった攻撃から、攻防入れ替わりの激しい戦いに大地は揺れ、他次元の外、現世にいるバルキュリアにもその姿は伝わっていた。
泉を心配して、駅前のロータリーまで来ていた有紀と鳩子は各々のフラワーハートに映る泉の姿に歓喜した。互いの手に輝きを取り戻したメダルを抱えて、人には見えなくとも歪む次元の境界にフラワーハートの光を流し込んで。
「闇に光りを注いじゃるぅぅ!!」
「こっちが出口だって教えないとー!!」
内側の圧力、外側の敵に、巨大な影の樹木は時空を歪める悲鳴を上げ始めていた。
宿る愛の錫杖は、振り上げるだけで自分に向かう牙を折り、打ち付けるたびに炎を舞わす。
古木の内側のように、黒塗りの分厚い壁となっていた結界はひび割れ崩れていく。
『こんな所で……』
予想外の強さだった。
むしろ相手を「飛べぬ使徒」と侮りすぎた結果でもあった。
飛び出し来た無策な若輩戦士を、闇の回廊に落とす事で無力化し、見えぬ出口によって絶望を作らせアイレシオンからさえブラックハートを取ろうと計画したニギラの考えは、脆くも崩壊を始めていた。
『何故だ……愛など欠片もなかったハズなのに……』
円陣の水晶は、使徒の攻撃に呼応するように亀裂を入れていく。
激しい刃風と打撃に結界の内側が保たなくなっている証拠だった。
動揺は顔にこそ出ない人形の目だが、忙しく足を動かしても対応ができない程の力にニギラは天を仰いだ。
『やむを得ない、結界壁を圧縮。アイレシオンごと吹き飛ばす!!』
自分の後ろに置いてあった、一回り大きめの水晶に残りのコンソールを映す蹴りを入れると
『その幹の中で潰されるがいい!!』
カウントダウンを映す鏡、ニギラの決断に幹の中は溶岩口のように色を変える。
黒から溶ける熱を織り交ぜた赤に。
巨大な幹を絞り上げるように筒へと変えて、逃げられぬように枝をライフリングに変えて的を絞り込む。
大きな大砲と化した黒木の絶望結界は、アイレシオンが向かう先に煌々と力を溜め、溶岩を浴びる弾丸を作り出している。
「ポン様!!」
『負けないっちょ!! 羽根を信じて真っ直ぐ飛べ!! あれを打ち抜いて脱出ちょ!! 』
「わかった!! 負けない!! 信じる!!」
熱を帯びた坩堝に溜まる枝の弾丸に向かい、錫杖の炎を振りかざす。
銀の髪、銀の羽根、足の翼と黒杖の頂に真っ赤に燃えた愛を携え、アイレシオン自らが弾となって突き抜ける。
響き渡る震動は、影の向こう側にいるニギラにも伝わっていた。
『弾き返せ!!!』
『撃ち抜け!!!』
ぶつかり合う光と影、赤い弾丸の頂点をアイレシオンの錫杖が突き刺ささった時、愛の炎は御座より飛び出し筒の内側全てに伝播した。
もはや結界を維持する事も弾を発射する事も、ぶつかり合った力と力の押し合いにその身を持たせ、機能を果たす事などできなかった。
枝先までを火に染めて、激震は一度全身を悪ほどに響くと町を覆った巨木の幹は破裂した。
黒い枝の破片を星色に変えて、煌めきの波動を繰り返し寄せる波のように幾重にも撒いて、暗くなった町の空に金の欠片を降らせてアイレシオンは空に姿を現した。
復活の愛に燃える錫杖に涙を浮かべて。
「おばあちゃん……」
「泉……」
駆けつけた和美達が見たのは、膝を折り前のめりに倒れた愛乃乙女の姿だった。
もしかして頼子が、水門闘争の時のように手をあげたのではという危機感で思わず手を掴んだ和美の顔に頼子も驚きの目を晒していた。
「お母さん、大丈夫?」
現れた客頼子の言葉にも母は顔色を変えなかったが、その後に伝わった振動と……空に現れた星の波を見た時に乙女は自分の胸にいつもあるハズだったペンダントを探していた。
「私の……私の……愛……誉さん」
空を切る手、胸に飾られたペンダントに、心に居たハズの人の名前が零れた。
娘瞳にとって十年ぶりになる父の名前に駆け寄った。
「思い出したの? お母さん……?」
「私……なんて事を……」
肩を抱く娘の顔に、涙を浮かべた乙女は、その後ろ事の成り行きを見守っている者達が元バルキュリアである事を理解出来ていた。
崩れたまま、自分ではなしえなかった愛を受け止めた泉の姿を、空を舞い涙する孫を見つめて。
「ああごめんなさい、誉さん。貴方を忘れてしまおうだなんて」
押さえていた胸に光りと共に戻るフラワーハート。
同じく駆けつけていたバルキュリア達のフラワーハートも、かつての輝きを取り戻していく。
そこにバルキュリア・ルーノが抱えた悲しみの愛の記憶を宿して。
静かな病室シーンに。春風に揺れる薄緑のカーテン、木漏れびと鳥の囁きの中に乙女と、その夫誉はいた。
すでに自分の足で歩くことも出来なかったが、意識だけが強くこの世に残ろうと努力をしていた。
旅の終わりの日は、静かにやってきて。
白髪も美しく整えた夫はベッドの隣で自分を支えていた妻の胸に頭を付けると、優しく下がった白眉と、薄くなった目を向ける。
「困ったな……やっぱり君が好きだ」
最後の言葉だった。
弱り先に行く事になった時、置いていく妻に残した誉の言葉は、乙女には辛すぎた。
自由に生きてきた、若い頃からモデルをして、仕事に生きて、家族を持っても愛の使徒としてバルキュリアとして勤めた。
それを許してくれる人がいた。
愛する人が最後まで自分を見ていてくれたという思いに、心は押しつぶされ悲しみの愛を受け入れる事が出来なかった。
「なんでこんな愛があるの!! こんなに苦しい思いをどうして支えられるの? こんなものはいらない!!」
誉を亡くした痛みを抱えた乙女の思いは、バルキュリアとしては考えられない行動に出てしまった。
ブラックハートは引き抜く事が出来る。ならば自分の中からこの痛みを抜いてしまおう。
それをアルンにやらせようと。
落ちていく空。
星のない空に白銀の羽根は散って落ちる。
高く向こうに自分の抱えた悲しみの愛を奪ったアルンの姿が、解放されるという安堵の中で、大切な思い出の全てを闇に放り投げてしまった。
伏せていた瞼の裏に、今も残る誉の姿。
手を開き自分を待っていてくれた人の姿を思い出すのは十年ぶりだったが、鮮明にその優しさを感じていた。
そこに貴方がいて、共に歩いて生きてきた事を。
「私が間違っていた……悲しみも苦しみも、喜びも優しさも貴方が一緒だったからこそ全て大切な思い出だったのに……貴方の事をだけを忘れたらなんて……それを無くしたら私の中には何も残らない事に気がつけなかったなんて……」
愛する人を失う悲しみ。
耐えることのできなかった心が犯した愚行。
そこだけ切り離す事などできなかった思い出。
共に生きた夫が繋いでくれた思いは、重ねてきた全ての日々に繋がっていたと。胸を抱き、涙の告白をした母に瞳は抱きついていた。
「いいの、思い出してくれたら……そうだよ、お母さんはお父さんの事本当に愛していたんだよ。だからたくさんの思い出があったの、だから私は二人のように成りたかったの……」
生きた愛の最後を、そこだけを消す事は出来ない。
それも含めて愛であり、それ故に不滅の思いが繋がる。失う時が来る事で、無限ではない生の中で愛し慈しむ心を伝える事が出来る。
震える二人の前で、元バルキュリア達も感じていた。
小娘だった頃、絆を断ち切って消えたバルキュリア・ルーノは許せなかった。
だけど今ならばそれが解る。
自分達にも大切な人ができたから。
「……私、もし夫を失ったら同じ事をしていたかもしれない……」
加賀野は、頼子を止めようと前に立ったまま泣いていた。
柴原が支え、互いに大切な者が出来、それを失えないという愛の苦しみを知った。
和美に掴まれた手をほどいて、頼子もまた思いを馳せていた。
「誰も貴女を責めたりなんてできない……私達はみんなそれを持っていて耐えられない時がくるかもしれない」
和美の目は、やっと見えるようになったアイレシオンの姿を見つけていた。
銀の髪と、愛の御座。
夜を照らすには美しすぎる愛の使徒。
「その時はアイレシオンが導いてくれる。今日のようにそれを受け入れる事の大切さを知る事になる。それを私達は今日知った」
同じ空を有紀と鳩子も抱き合って見ていた。
輝きを増したフラワーハートを二人で見つめ合って。
同じ時、降り注ぎ元の持ち主の所に戻った愛を美香子が抱きしめていた。
家の庭から見える流星の空は、とても美しく美香子の頬をつたう涙を柔らかな光で照らしていた。
「ポー……忘れないよ。一緒に居てくれた時の事……私忘れないよ……」
悲しみの愛を受け入れた妹を支える角谷、足下には新しく家族になったメルが。
「ポーがくれた優しさをメルに……」
足下に絡んだ新しい命に、ポーのくれた優しさを繋いでいく。
美香子はメルを抱え初めての挨拶をした。
「初めましてメル、これから仲良くしてね」
涙に濡れながらも、いとおしさを宿した瞳で。
妹の姿を角谷は支え、空からふる星の雨を遠い目で見続けた。
誰もが一つも艱難を乗り越えた笑みを、泉とポン様、エルルは取り戻した安堵の中で感じていた。
高い空から見える地上の星、数多に広がる世界の愛に花を捧げるように、錫杖の星は降り注ぎ、帰らずだった悲しみの愛はそれぞれの心に戻って行った。
それは空の涙、だが美しくも光る想いの滴として。
「綺麗だね……」
流星の愛の雨を、夏風の混ざる空から見ていた泉はやっと落ち着いた声で言った。
大きく開かれた翼、足の羽根と合わせ四枚。
空を駈ける力を身につけたアイリュシオンの姿は神々しく、太陽に代わり顔を見せた付きに照らされて輝いていた。
ポン様は光を納めた錫杖の上に座ると、クルリと回って泉と顔を合わせ。
『美しいだけが思い出ではなかろうて、それ以外の繋がりがりを、愛が果たし成り立つっちょ』
いつものジト目は遠く、峯の輪郭だけに残った燐光に目を細めると、改めて教えた。
『悲しみの愛は、受け取る意味と価値がある。不要な愛などではないのだ』
「そうだね、だから愛は美しい……信じるよ」
二人の姿を、後ろに控えるようにエルルは深く頭を垂れて見守っていた。
「ニギラ……」
『すまない……アルン……』
体を横たえたニギラの周りには完膚無きまでに破砕された水晶が並んでいた。
赤い水盤を突き破った衝撃は部屋の壁に亀裂をいれる程の衝撃で、部屋の中を何往復もした波動の波はコントロールを司った全ての水晶を転がし叩きつけ、まともに残った球体は一つもなかった。
ニギラ自身、人形の身に破損こそなかったが、赤い瞳には疲労をありありと写し横開きの瞳孔は潰れてしまうほど薄くなっていた。
『アルン、現世のアイレシオンにはもう勝てない……残念だ』
ニギラに言われなくても、結果そのものを窓辺で確認していたアルンは唇を噛んで逆らった。
「後一歩なのに……諦めろと?」
辛苦の砂時計は後一掬いのブラックハートで満たされる所にある。
ガラスをつたい、低下を止めている砂粒を恨めしく尖った赤い眼が睨む。
とても今下がってしまおうと、自分を抑えられるものではない。
アルンは傷ついたニギラを抱き起こすと。
「後一回!! 大きなブラックハートを採取出来ればニムル様をこの世に呼ぶ事が出来るのに下がれるか!!」
『無理だよ。……後一回とはいえ、それを補うブラックハートは悲しみのそれより重いものでなくては、まかなえない』
高く昇った満月、それが神世界と人世界を繋ぐ道となる。
合わせたブラックハートの力で貫き扉を開くには、手で見るに後一握りの採取だが、質では悲しみより重いものが要求される。
完全にはまだ遠いアイレシオンだが、四枚の羽根を持った姿には使徒としての輝きを増した力が見える。
これを押さえてブラックハートを採取するなど無謀でしかなくなっていた。
アルンは踵の高い靴を鳴らし最後の一欠片を欲する、砂時計を手で触れた。
冷たく伝わる温度。
氷の園の冷えた鏡を前にニムルに誓った復活を諦められない心は、きつく尖った目と、強く結んだ口で息を吐いた。
ここから逃げるなどアルンには出来ない事だった。
「後一つの見当はついている」
胸に光る赤い石に、手を翳して時を読む。
「必ずや復活を、この世を貴方の闇で埋め尽くすために」




