第七話
新しい学校。わくわくするような、緊張するような気がした。いつのまにか2年生になっていたヴェンルは今、教室の廊下にいた。そして、教室の中では、担任の先生とクラスのみんなの声が聞こえる。
「じゃあ、ガーストくん、入って」
先生がドアから覗いた。心臓が痛いほど打つ。
教室に、入っていく。意識が遠のきそうな程に緊張していた。
「じゃあ自己紹介、お願い」
先生が小声で囁く。
「えっと……ヴェンル、ガーストです」
「ガーストくんに、何か質問ある人いる?」
はい!、はいっ、とクラスの陽キャと思われる子たちが手を挙げた。
「じゃ、バーティル」
「好きな食べ物は?」
「好きな食べ物は……」
教室のある人と目が合った。どこかで見たことがある顔だった。
「ステーキ、かな」
質問の回答を適当に返す。さっきまでは緊張して新しいクラスメイトの顔など見れなかったけど、今は違った。医者になりたい、と言ってた子だった。
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休み時間になると、ヴェンルの席の周りには多くの人が集まっていた。
「ねぇ、どこの学校から来たの?」
「放課後遊ぼうよ!」
「好きな人とかいるの?」
質問攻めだった。
(初対面で好きな人聞くのかよ……聞いても絶対知らないじゃん)
とりあえず質問を返していくことにしよう。
それで、隙をみて、あの子に話しかける作戦。
「ファリエント西学校から」
「どこそれ?」
やたらと声が大きい、ハスキーボイスの女の子が言った。ヴェンルが苦手なタイプだ。
「どこそれ?」の質問の答えを探したが、当たり前のことしか思いつかない。西のほう、としか言いようがないように思えた。質問。次。そう瞬時に判断する。
「好きな人はー?」
「言ってもわからないでしょ」
「いるんだー!?」
坊主頭の男子がにやつく。
この辺でいいか。
がらっと席を立つ。
(もう休み時間終わるじゃん)
背中にあの「質問攻めしてくる人たち」の視線を痛いほど受けながら、ヴェンルが唯一知っていた人を見回す。
(ああ、いた)
その人は自分の席に着いて、窓の外を眺めているようだった。
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帰り道。
ヴェンルは1人だった。
西日を背中に受けて、雲が浮かぶ空を仰いだ。
もし、あのとき、早くあいつらの質問攻めを断ち切って、オリヴィアに話しかけていれば。
ヴェンルが覚悟を決めた瞬間、授業準備の鐘が鳴った。鐘を鳴らす人の性格も悪いと、ヴェンルは思っていた。




