第三話
重い布団の中でうずくまる。
瞼の上から、いつもより柔らかくて白い光を受けた。
「んぅー」
(今日は、そうだ冬休み……)
冬休み残り13日。ヴェンルは全く宿題に手をつけていない。
その現実から逃げるべく、深い眠りに何度も落ちた。
でも、わざと二度寝するのは、急いでいる日の二度寝より気持ち良くない。なんでだろう……
カーテンの隙間から白が見える。
瞼を閉じたが、もう寝れない。仕方ないかと体を起こした。
全身が冷たい空気に浸かる。
「あっ……!」
(やった、やった、雪ー!)
さっきまで鉛みたいに重かったはずの体は、今や軽快だった。
滑るように、冷えた階段を駆け下りる。
「おかぁーさぁーんっ!」
下りながら、胸の嬉しさを吐き出して共有するように叫んだ。
「どしたー?」
「ゆきー!」
リビングの扉をばっと開けた。
「雪!雪だよー!」
「うん、でもお母さん雪大変だから嫌だなぁ」
「えぇーっ、楽しいのにー」
冷たい指をぎゅっとつねりながら窓に駆け寄った。
「うわぁー、積もってるよー」
「えぇー、本当?」
「ねぇ、外行ってきていい?」
窓を覗き込みながら言う。
「ご飯食べて着替えてからねー」
用意された温かいスープと硬いパンを食べる。
「ねぇ、お母さんのスープはなんで温かいの?」
一瞬戸惑ったような顔をした気がした。
「なんでって……」
「だって、給食のときにね、みんなが言ってたんだよ」
母はスープを見る。
「じゃあ、見ててね……」
サッと手をかざしたと思うと、スープがしゅーっと音をたてた。
「飲んでみて」
口に含むと、スープは冷たくなっていた。そのまま喉に流す。
「冷たいねー」
母はその冷たくなったスープのおわんを撫でるように触れた。
すると、さっきと同じようにほわほわと湯気が出てきた。
「おー」
ヴェンルはスープと母の手を交互に見た。
「どうやったの?」
母は小さく笑いながら言った。
「魔法だよ」
「えーっ、僕もやる!」
「難しいよー?」
むっと顔をしかめると、パンを口いっぱいに放り込んだ。
「そんなに口入れると喉詰まるよ」
「ゆき、とけさゃうかあね」
温かいスープを一気飲みすると、服が入った棚に走った。




