第十四話
昨日、ヴェンルは部屋をもらった。
部屋と言っても、小さい箪笥一つだ。
だが、収縮魔法をつけられたヴェンルにとって、十分な広さではあった。
その箪笥は木でできていて、三段ある。
埃まみれで汚くて、小さい。
でも、やはり家具は無かったから、掃除の準備は楽だった。
というか、当たり前に家具を置けるほどのスペースでも無かった。
家具の中に家具を置くなどありえない。
それでもヴェンルの体は小さいままだったので、普通の掃除並みに時間はかかった訳だ。
さて、これからどうするか。
(箪笥の足と床のスペースは使わないよな)
(やっぱり一段目は生活スペースにしよう)
ヴェンルは早速きれいになった一段目の部屋に小さい家具代わりを置いていた。
まず、ベッド。
生活必需品だ。
布切れをカウクにもらったので、それで代用する。
次に、机と椅子。
机は小さい椅子を代わりに、椅子は何に使うのかよくわからない立方体の木を代わりにした。
やっと生活環境が整ってきた時だった。
出入り口にしようと、昨日がんばって切った箪笥の穴から、カウクが覗いていた。
「おい、人間、行くぞ」
カウクの声がぼやけて聞こえる。
昨日、ヴェンルを連れ去ったときの服装と荷物を持っていた。
「どこにだよ」
「お前にタダ飯食わせる訳にもいかねえからな」
食料が入った袋を漁って、
「もう食料も尽きそうだしさ。これだと一週間しか持たねえ」
(一週間分もあるなら行かなくていいじゃん)
意外とマメな性格らしい。
「お前のその小さい体、生かしてみろよ」
嘲笑うように口角をニッと上げた。
「はぁ?お前が小さくしたんだろ?」
「ぅら、行くぞ」
カウクはくるりと背を向けた。
(しゃーない、しばらくはこの家に住み着くか)
そう思い、肩のあたりにしがみつく。
よじよじと登って心地よい体勢を見つけた。
薄い扉を開けると、ヴェンルはカウクの手に鷲掴みにされた。
「うわっ」
ぎゅんと落ちる感覚。
次に、体が温かいものに挟まれた。
どうやらカウクは乱暴に胸ポケットにでも突っ込んだようだった。
カウクのポケットに包まれて、5分ほど経っただろうか。
「おい、そろそろだ」
カウクにそう囁かれる。
上から手が降りてきたので、しがみつく。
たぶんこれで合ってるはずだ。
(あー、これから魔物と、魔物から物を盗るのか)
なんか複雑だ。
上に引き上げられながら思う。
(いいのか悪いのか、わからんな)
「ほら、これ見ろ」
手のひらを水平にして、その上にヴェンルが乗っけられている。
カウクはもう片方の手で指差した。
その壁には、ちょうどヴェンルほどの大きさの穴が空いていた。
「ここから入れと?」
「ああ、そうだ。ここから入ればストックヤードに繋がってる。お前の魔法で全部持ってこい」
「え?」
魔法を使えるのがばれているのか。
「ざっと1ヶ月分はありそうだ」
「なんで、お前、俺が魔法使えるって……」
きょとんとしたヴェンルに対し、カウクは鼻でふっと笑った。
「お前、さっき魔法使って檻から出てたじゃん」
そう言って笑いを堪えていた。




