第十五話
今、ヴェンルは怪しいパイプみたいなものの中を這いつくばっていた。
息をするたびにぼーっと音が鳴る。
カウクに入れと言われたからだが、やめておけばよかった。
狭くて真っ暗闇な上に、とんでもなく臭い。
焦げたような刺激臭が鼻を刺す。
じんじんと鼻の奥が痛んだ。
闇属性の特性のおかげで、かろうじて視界は明るかった。
カウクによると、魔力を通すパイプらしい。
ここの魔物は炎魔法や毒魔法の使い手だろうか。
「あ……」
声はよく響き、想像と違う声を背中に受けた。
パイプは真上に続いていた。
(カウクは知ってたのか?)
カウクは空間魔法を極めているらしい。
あくまで自称だが。
だからストックヤードにつながっているのもわかったのだそうだ。
空間魔法は、空間を認知しても色は見えないという。
それなら、それなりに精度はいいはずだ。
じゃあ……
(あいつはそれをわかって行かせたのか)
だんだん憎たらしくなってきて、眉間にしわを寄せた。
(ここは魔法を使えと?)
すうっと闇に消えると、落ちるように上昇した。
体の感覚がないまま見えるものだけが変わるので、妄想のように錯覚してしまうのはいつものことだった。
陰に変わった体がぴりぴりする。
光に近づいている証拠だった。
(あー、痛い)
それでも減速はしない。
早く終わらせたかった。
(痛い痛い)
全身に電撃が走るような感覚になった後、ヴェンルはバックヤードに投げ出されていた。
パイプを抜けたらしい。
(こっから帰ればいいんだな)
自分が出てきた穴を確認する。
バックヤードの物を床の闇に落とすと、ヴェンルは脳内でざっと仕分けした。
終わったのでパイプに飛び込み、闇に変わり、全速力で元の道を辿った。
(いててて)
またぴりぴりし始める。
それでも構わない。
このままならカウクになめられてしまう。
そう思って飛んでいると、外の日光に触れてしまったようで、闇の体が弾けた。
「うっ」
左肩で床を受ける。
地面にばら撒かれた石に体を擦った。
「よくやった」
カウクの声だった。




