第十二話
焚き火を焚いて、持っていたパンをかじる。
この辺りは寒いので焚き火を焚かねば凍える。
父さんから貰った紙は折りたたんで、封筒に入れてあった。
『母さんの職業は違法だった。
父さんもじきに軍へ連れて行かれる。
魔界に伝手がある、そこへ向かって匿ってもらえ。
もう連絡はとってある。
しっかり働けよ。』
拙い字だった。
やっぱり、母さんは連れて行かれたのか。
ふと、左手の中指につけられた指輪を見る。
軍は何も悪くない。
悪いのはあんな仕事をさせた魔王や魔物だ。
きっと脅されていたんだ。
俺は絶対に、母さんの仇を討つ。
勇者になって、いつか絶対に、魔王を討伐する。
そう決心して、屑みたいな星が散りばめられている空を見上げた。
今宵の空に、月は無かった。
⸻
魔界らしいところに着いた。
この建物に繋ぐところがないようなので、馬から降りて、リードを握る。
何か変わった様子もない。
しばらく歩くと、繁華街らしいところに着いた。
魔物、初めて見たな、耳が尖ってる。
ふと、昔飼っていたフクロウを思い出す。
(たしか、フーちゃんにもこんな耳がついてて……あ、フーちゃんは魔物だったのか……? お母さん……元気してるかな、罪状は覚えてねぇや……)
昔のことだからあまり感情は無い。
魔物は、普通に買い物をするものもいれば、親子連れも多かった。
魔物の中には、馬をみて驚く者もいれば、罵声を飛ばすものもいた。
(なんだよこいつら……)
魔物に対して憎しみを抱きながらも、あのころの記憶が鮮明に蘇った。
義母が連れていかれたこと。
義父に家を追い出されたこと。
ヴェンルは目を拭った。
目的地がなかなか見つからない。
ここに馬はいないからか、と1人で納得していた。
諦めて、あの建物の外に括りつけてもらうか。
そう思って、来た道を戻ろうと振り返る。
向こう側から、体格のいい魔物が何十人も走ってきている。
(んだよ、あれ……)
「道を開けろォォ」
魔物達がどよめいている。
(あっ)
ヴェンルに向かって来ている。
事態の緊急性に、やっと気づいた。
(俺、なんかした?)
急いで馬に跨り、あの建物に全速力で向かう。
魔物は、馬が走って来ていることに気づくとすぐに道を開ける。
あの建物の辺りに着いた。
来た時とは違って、魔物がなにかしていた。
「あのー、こんちはー」
「ん?あぁ」
なんだろう、不機嫌そうな顔をしている。
魔物は宙に絵でも描くように手を動かした。
「え……攻撃魔……」
そこから意識がない。




