第十一話
2年が経ち、ヴェンルは14歳になっていた。
学校で友達もできた。
いつのまにか、それなりに魔法も使えるようになっていた。
人間は、辛い過去だったり、深い怨念なんかがないとそう強くはなれないらしい。
リシェルの、鍵がかかった棚の中に入っていたノートを見て学んだ。
だから、わざわざ孤児院なんかから、一番評判の悪かった子供を引き出したんだろう。
どこか寂しいような気がした。
魔物は、ほとんど全員が、強くなる素質を持っているのだそうだ。
ということは、魔物は強い邪心がもともとあるのだろうか。
そんな人間に、ここまでの魔法を教えられるのは、リシェルの職は魔界の密売人だからだろう。
ここに来てしばらく経ってからリシェルがこっそり教えてくれた。
もちろん、魔界と繋がりがあれば重罪である。
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朝。
騒がしいと思いつつリビングに行くと、義母を間に、義父、それと見慣れない軍人らしい人間が3人立っている。
父はすぐにこちらに気づくと目線で何かを訴えかけてきた。
やはりわからない。
ただならぬ事があったことだけは察することができた。
軍人は母の手首を厳重に拘束する。
「では。また何かあるようならすぐに来ますから」
(助けなきゃ、わかってる)
もうあんなこと、二度としないと、あの夜誓った。
(でも、母さんは本当に悪いことを……。いや、違う、違う、違う、魔物とはつるんでたけど、でも、悪い人じゃない)
この時、口に出していれば。
もっと違う未来を見れたはずだった。
無情にも時は過ぎる。
体は動かなかった。
軍人がその場から去ると、父はため息をついた。
そして決心したように息を吸う。
「馬に乗ってここのずっと西へ行け。……あと、これを」
なにやら巻かれた紙を渡された。
「道中で読め。もう時間がない」
「なあ、父さん、母さんは?」
母さんは、確かに軍人に連れて行かれた。
それも3人がかりで。
何かあったに違いない。
もしかしたら、またあの時のようなことが起こるかもしれない。
今はまだ想像にすぎないが、それだけでも衝撃を受けた。
「いいから、野営の支度をしろ」
「なぁ、教えてよ、母さんは……?」
父さんにも事情はあるのだろう。
頭でわかっていても、それを許す気にはなれなかった。
父さんが無理やりヴェンルを馬に投げるように乗せた。
「行け!」
馬は走る。
だんだんと父さんが遠くなった。
どうしようもなかった。
ヴェンルは、ただひたすら馬に縋りつくしかなかった。
ショックと混乱で、意識が飛びそうなほどだった。
だんだん視界がぼやけてくる。
こんな別れ、ヴェンルは望んでいなかった。




