第十話
初日からしばらく経った今日はリシェルに適性魔法検査というのをしてもらった。
「明日には結果がでるわよ」
嬉しそうに微笑んでいる。
「ヴェンルはなにかしらねぇ」
魔法には基本的に火、水、雷、物理、肉体強化、光、闇などがある。適性魔法検査はそのどれかを確かめるものらしい。
夕飯の時間になり、リビングに入る。すると、すぐに香ばしい香りが漂ってきた。テーブルの上には脂がたっぷりのった肉の皿と、大盛りの白米が盛られたお椀が3人分、置いてある。
「さぁ、夕飯ができたわよー」
リシェルのつくるご飯は美味しい。それゆえに、食事の時間は楽しかった。
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次の日。
ヴェンルは起きてすぐにリビングに向かった。
予想通り、リシェルとアレクシスが話していた。
「あら、ヴェンル、おはよう」
「ねぇ、結果は?」
2人は顔を見合わせる。
「結果は闇属性だったよ。闇属性は闇に潜むような魔法が得意なんだ」
アレクシスが、微笑みながら小さい箱を渡してきた。
「開けてみなさい」
中には、指輪が入っていた。
「ヴェンルに合うように特注した。受け取ってくれ、いつも頑張っているだろう」
指輪を指にはめる。
「わぁっ、すごい」
指輪には、黒の中に虹色が光って見える宝石がはめ込まれていた。
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ヴェンルの12歳の誕生日の、1週間前の日だった。
「ぎゃあああああ!」
母の叫び声で目を覚ます。カーテンの隙間から漏れる陽が心地よい。リビングから物音が聞こえる。
ヴェンルは耳を塞ぐように毛布にくるまった。でも、体は起きてぴんぴんしている。もはや、下腹部の尿意すら気になってしまう。
冷たい外の世界に足を出した。のそっと起き上がり、急いで着替える。未だにリビングで騒いでいるようなので、刺すように冷たい廊下をぺちぺちと歩いていく。
扉を開けると、母が走り回っていた。母は「それ」に釘付けになっていた。この、かさかさ動きまわって、人に向かって突進してくる、黒いやつ。
アルバーン家にとっての最大の脅威、その名は「ゴキブリ」。
油断すれば、この家を巣窟にされる。
ヴェンルはそれに向かって手をかざした。ゴキブリの影はより一層深くなり、範囲がじわじわと広がっていく。
黒いものは、ぽとり、と闇に落ち、飲み込まれた。
「あ…ヴェンル、ありがとね」
「うん、母さん」
すぐにヴェンルは立ち去った。尿意は着実に、限界が近づいていた。




