一年生十二月:年末年始③
「小学生の二人、可愛らしいですねぇ」
目を輝かせながらヨスガとゆえの小学校の卒業アルバムをゆかりが読む。
「今はこんなに大きくて文句も多い男の子になって」
泣き真似をしながらゆえがからかう。
「この時から背の順で一番後ろだっただろ」
ヨスガのツッコミを肴にゆかりはページを捲る。
「というか、二人が一緒に写ってる写真結構多くないですか?知り合ったのって五年生でしたよね」
「あれ、本当だ」
ゆかりの指摘にヨスガも卒業アルバムを覗き込む。
確かにクラスを跨いだ学校行事の写真では一緒の画角に入る事が多かった。
「あ、そっか。クラスが隣で背の順で一番前のゆえと、一番後ろの俺で、クラスを跨いで整列すると俺のすぐ後ろにゆえが来るのか」
ヨスガはそのからくりに気づく。
運動会での入場や、校外学習で道路を歩く時など、様々なところで近くにゆえがいた。
「ん?てことは前々から俺の事知ってたのか?」
ヨスガはゆえに訊ねる。
「うん。でかいのがいるって思ってた」
「全然気づかなかった……」
ヨスガは頭の中で小学校に入学してからゆえと知り合うまでの四年間を思い返すが、まったくゆえの事が思い出せなかった。
「ヨスガは背が高いから、後ろを振り返っても私なんか眼中に無かったんだよね。しくしく」
「泣き真似にハマるんじゃない。間接視野には入ってたよ。多分」
何に意地を張っているのか自分でもわからないまま、ヨスガはゆえに言い返す。
「まぁまぁ、謎は解けたと言うことで、続きを見ましょう」
ヨスガ達の卒業アルバムのページが捲られていき、最後のメモスペースへと到達した。
「かなり混沌としてるな……」
ヨスガの卒業アルバムのメモスペースは、当時の友達からの一言や落書きで半分くらい埋まっていた。
小学生レベルの下品な書き込みも中にはあり、ヨスガはそれを両親に見られたら自分が怒られると思って必死に卒業アルバムを見せなかった時期があったのを思い出した。
「わたしも一応持ってはいますけど、書き込みあうくらいの友達はいませんでしたね。だから、どうしてそういう気まずそうな顔するんですか」
「お約束かなって」
ゆえが悪びれもせずにゆかりに応える。
ヨスガも頬を膨らませるゆかりに手を合わせて謝る。
「まったくもう。そういえばゆえさんの書き込みは無いんですか?」
ゆかりがゆえの書き込みを探すが見つからず、二人に訊ねる。
「そこの何も無いスペースにあったんだよ。なぜかデカデカと校章を描いてたけど、知らない内に消されてたんだよね。ほら、ペンの跡が見える」
ヨスガはメモスペースの空白部分にうっすらと残る凹みをなぞりながら説明する。
「どうやって消したかは企業秘密」
「手段より理由の方が気になるけどな。まぁいいや、中学時代のも見るよね?」
ヨスガが聞き終わるよりも早く、ゆかりは目を輝かせて頷いた。
「青春に飢えすぎてるなぁ」
ヨスガは苦笑いしながら中学校の卒業アルバムを取り出した。
ゆかりは黙々と中学校の卒業アルバムを捲り、ヨスガとゆえを探す。
「あの、二人は今まで一緒のクラスになった事無いんですよね?なんだか、大体の写真に二人で写ってませんか?」
「あー、そう、だね。合唱コンクールとか、クラスで完全に独立してる催し以外はゆえに張り付かれてたかもしれない」
歯切れが悪そうにヨスガが言う。
「ヨスガが心配で仕方無かった時期。今は反省してる」
ゆえも言い辛そうにゆかりに話す。
「ゆえが俺の入ってたクラブチームを襲撃してから三年生まではずっとこんな感じだったよな」
「ゆかり、別に悲しかったり暗い話じゃないから、悲しい顔しないで」
ゆえがゆかりの両頬を揉みほぐそうと手を伸ばす。
ゆかりはされるがままにマッサージを受けた。
「高校も同じ所にするってヨスガに言ったら、ちゃんと自分のために選べって怒られて、そこからヨスガ離れを頑張ってる」
「結局一緒になったけどな」
「それはヨスガが後から櫻先生の勧めで決めたからじゃん。私悪くない」
ムッとしながらゆえがヨスガを睨む。
ゆえはヨスガの恩師である櫻コーチの事を先生呼びしている。
「それは本当にごめん」
「わかればいい。あ、ゆかりまた顔が硬くなってるよ。柔らかくなって」
ゆえがゆかりの頬を左右に引っ張る。
「いひゃいでしゅ」
ゆかりは両頬をひっぱるゆえの両手を包みながら押し戻す。
「色々あったってだけ。今はゆかりもいて楽しい。はっぴー」
ゆえがゆかりの背後に回り込んで抱きしめる。
「ほら、メモスペース見よ。小学校のアルバムよりひどいから」
「どんなセールストークですか」
ゆえの言葉にゆかりも思わず笑う。
その姿にヨスガもゆえも胸を撫で下ろした。
ヨスガとゆえの思い出話は夕方まで続いた。




