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峠を越えた世界  作者: Making Connection


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第五十二駆

「あれ?その格好ってもしかして自転車乗ってきた感じ?」

「えっ?あっそうです。」

「おい、いきなり話しかけたら怖いだろ。

ごめんね、こいつよくデリカシーないって言われるんだよ。」

「ええ?そうなの?俺言われてるんだ…」

大学生くらいの活発そうな茶髪の人と落ち着いた雰囲気の人は楽しそうに話している。

茶髪の人が

「悪かったね。今度の大会に出るための練習してたの?

実は俺達も出るための練習してたんだ。

去年は3区までしか走れなかったから今年はもう少し記録伸ばしたいんだよね。」

「3区でリタイアしたのはどうしてですか?

あっ、すみません。僕は初参加なので経験しておられるなら聞いておこうかなと思いまして。」

「う~ん体力不足?熱中症?」

「いや、準備不足だね。ノリで参加してペースとかも考えずにとばしすぎたのと暑さでバテバテになって諦めたんだよ。」

「なるほど……」

僕が二人のリタイア理由について考えていると落ち着いた雰囲気の人が

「君は結構準備してる感じだね。

どこかの高校の自転車部とか?」

「いえ、僕は個人的に練習して出ようと思った感じです。」

茶髪の人が

「やっぱノリで?それともなんか理由あり?」

「実は……」

僕は大会に参加する理由や『何のために頑張るのか』について悩んでいる事などを話した。

茶髪の人が

「いやノリで参加しようとしてた自分が恥ずかしくなるね。でも、やっぱ楽しんだ方がいいんじゃない。

何かを背負って頑張るとかすごいけど疲れそうだしね。」

落ち着いた雰囲気の人が

「ごめんな、こいつ言い方が悪いよね。

でも、間違ってはないと思うよ。

プロ野球選手とかがスポーツメーカーからスポンサー受ける話しとかあるよね。詳しくは知らないけどああいうのって、自分のメーカーの道具を使って活躍してる人に声をかけて関係が成立すると思うんだよね。

それで言うとさ、スポンサーが欲しくて活躍するんじゃなくて、その選手が頑張って活躍してたからスポンサーが付いた…が正しいわけだよね。

そりゃあ中にはお金稼ぎたいからって露骨にアピールする人とかもあるかもしれないけど、基本的には自分がより活躍したり良い成績を残したりチームが勝つために一生懸命に頑張ってた人が評価されて、そういう話が来るんだと思う。

君が頑張ってたから周りの人達は無償でも助けたいって思えたし、友人のために何かしたいという熱意が強かったから運営会社もお金だしてでも君の頑張りを届けたいと思えたんじゃないかな?

何のために頑張るのかは悩まなくても既に多くの人に影響を与えてるし多くの人を動かしてるんだからもうどうでも良いと思うよ。

あとは君が大会に出てどこまでできるかを自分で確かめるだけで良いんだよ。

優勝するでも良い、最後まで走りきるでも良い、タイムトライアルチャレンジなんだから良いタイムで走るでも良いんだよ。

頑張る理由はやり始めた時に必要であって、結果を試す時には必要ないと思うな。」

「なるほど…そういう風に考えた事はなかったです。」

「こいつが難しく言ったけど、要は楽しめば良いんだよ。グダグダ考えて一歩がでないと前には進めない。

とにかく一歩踏み出してまた一歩踏み出しての繰り返し。そしたらいつの間にゴールに着いてるよ。」

茶髪の人が力強く言いきった。

僕は落ち着いた雰囲気の人と顔を見合わせて笑った。

茶髪の人は何を笑われたのかわからないようで僕達を見た。その後も少し話をさせて貰った。二人はこのまま大津の方まで進むという事だったのでこのコンビニで別れた。

二人の話を聞いて、僕の背中にのしかかっていた何かが消えてなくなったような気がした。

大会まであと一週間くらい。

僕は大会を楽しむためにも必死に練習する事と今まで避けてきた問題に向き合う覚悟を決めて彦根に向かって走り出した。

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