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峠を越えた世界  作者: Making Connection


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第五十一駆

僕は彦根港から近江八幡までの湖岸道路を走っていた。

当日のはじめの約20㎞の区間を往復して練習していた。

1時間くらいかけて走る道を今では40分くらいで走れるようになっていた。

平な道が続いているところなので、体力の温存や速さの調整などを繰り返していた。

今日は住職も鈴木さんも田中さんもいないので熱中症には気をつけて行こうと思いながら、僕は考え事をしていた。誰も話しかけてこないのでひたすら集中して走り続けるので、周りを気にしながら考えていた。

このまえ、住職が言っていた『僕の本当に望む事」についてだ。小さい頃から一緒にいたあいつの背中をずっと追いかけてきた。

追いつけないくらいに差がついて、ただ眺めるだけになってしまったのが悔しかったし寂しかった。

それでも変わらずに接してくるあいつに苛立ちとかはなかったけど引け目を感じた。

野球では勝てないし追いつけないなら、他の事で…とも考えて勉強を頑張ったりもした。

同じ高校に進んだという事は学力でもあまり差がなかったのかと少し落ち込んだ瞬間もあった。

長い付き合いだからこそお互いにわかっているようでわかってない事もあったのかもしれない。

あいつと野球部に入らない事でケンカしたあの日、あいつはとても寂しそうだった。

あいつはあいつで僕と同じ高校に進んだら一緒に野球をすると思っていたのだと思う。

試合に出て毎日一生懸命練習してたあいつとベンチにも入れずに練習もレギュラーとかのサポートしかしてないような僕では野球に対する思いとかも全然違ったはずだ。僕は練習もまともにできない状況が楽しくなかったから野球に対する熱も冷めていた。

だから野球部に入らない選択になった。

確かにあいつにその事を伝えた事はなかったから僕が野球をやめるのは初耳だっただろう。

その選択をした事に何も後悔はない。

あいつが病気になった時、僕は頭が真っ白になって何も言えなかった。想像もしてなかったし元気なあいつの姿しか知らなかったから意味を理解するまでに時間がかかったし、理解できてもその場に適した言葉が僕は持ち合わせていなかった。

優勝したいかと聞かれたら、ここまでサポートして貰って色々して貰ったので優勝してお返しがしたい。

初めこそ賞金で少しでも治療費の助けができたらとか思っていた。住職達のサポートが続くなかで僕の中で漠然とお金が欲しいから優勝したいというところからサポートに対する恩返しのためになった。

住職も言っていたが僕が優勝してもあいつの病気が治るわけでも爆発的に骨髄ドナーが増える訳でもない。

なら、僕はいったい何のために優勝したいのか。

優勝しなくても松木さんの会社のおかげで宣伝効果はたくさんあるから必ず優勝しなくても良いのではないかと思う。

では、僕が頑張る意味って何なんだろう?

僕でなければならない理由は?

なぜ僕は今自転車で走っているのだろう?

彦根から近江八幡までの道のりでは答えは出ず、更なる疑問が生まれた。とりあえず休憩のために近くのコンビニに入って飲み物を選んでいると僕と同じような格好の二人組が話しかけてきた。

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