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峠を越えた世界  作者: Making Connection


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第四十八駆

練習終わりに寺の境内の中で冷房をつけてクールダウンをしながら一つの議題について話していた。

最近では蓄積型熱中症というやつがあるらしく、身体の中に日中浴びた熱が残ってしまい思いがけないタイミングで発症する事があるらしい。そのため、身体の熱を冷ます事は大事で冷房で外部からの冷却、常温かそれより少し冷たい水で体内から徐々に冷却させておく必要があるらしい。

少年の身体の熱を冷却する時間のついでにただ座ってるのも暇だったので、必要な話をしていこうとなった。

そこで議題になったのが、『当日の衣装と自転車の装飾について』だった。

骨髄バンク登録者を増やす事も目的に加えたため、それをわかりやすい形で表現するためにはどうすればいいのかを話し合った結果、服にメッセージを入れたり自転車が重くならないようにしながらメッセージを入れていく事が決まった。

ここまでは誰でも思いつきやすい形だったのでスムーズにたどり着いたわけだが、ここからが難航した。

『どんなメッセージを入れるか?』だ。

少年は一般の部で出場するので自転車にメッセージを貼ったりするのはロードバイクとかよりは簡単だ。

でも、タイムトライアルである事と少年が優勝を目指している事も合わせるとスピードが速すぎて観客の人達の目にとまるのは一瞬の出来事になる。

その一瞬でメッセージを見て貰い興味を持たせなければいけない。そうなるとメッセージは強力あるいは記憶に残るようなものでなければいけない。

高校生の少年、寺の住職、建築会社勤務、エンジニアと職業柄で良いキャッチコピーを思い付ける人材がいない。少年の若さ頼りで良いのが出ないかと期待したが少年もあまり得意ではなかったため議論は難航したのである。鈴木さんが

「う~ん、『あなたも誰かの助けになる』とかは?」

それを受けて私が

「それだとボランティアの募集感がありますね。

あと押し付けがましいかもしれません。助けてやってるみたいな。病気で苦しんでいる人側にも配慮がないといけない気がしますね。」

田中さんが

「それなら直球で『骨髄を必要としている人達がいます。骨髄バンクへの登録をお願いします。』くらいにしておきますか?」

鈴木さんが

「長すぎないか?一瞬で全部見て貰うのは難しい気がするぞ?」

私も

「そうですね。自転車に貼る文としては良いかもしれませんが、もう少しコンパクトにした方が良いかもしれませんね。」

鈴木さんと田中さんが声をあわせて言った。

「住職は?」

「そうですよね、偉そうに指摘してますが私もあまり得意ではないので……。

そうだ!『明日を願う人がいる!』とかどうですか?」

「住職、それ明日にも死にそうだって言ってるみたいで配慮ができてないぞ?」

鈴木さんに言われて私もその通りだと思った。

田中さんが

「でも、それくらいコンパクトなら一目で見れますね。

情報誌とかが無料で配られるのでそちらに詳細を掲載したりして少年の衣装とか自転車の装飾は誘導に使う程度に押さえた方が良いかもしれませんね。」

「…『明日のために全力で闘っている人がいる』…」

少年がボソッと呟いた。

「おお、少年それ良いね。」

「確かに闘病中の人達に向けたメッセージになるのが良いね。それに見てる人に『何と闘っているのか』を思って貰えたら興味をひけそうだね。」

「うん、良いね。

服に入れるメッセージとしては短くて印象にも残せそうだね。自転車の装飾にはもう少し詳しく説明を入れたりもしよう。」

こうしてメッセージの方向性が決定した。

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