第三十二駆
「どうした少年?何かあったか?」
住職が心配そうに駆け寄ってくる。僕のペースが速すぎたために驚いたのだろう。
つづら尾崎展望台で待っていた住職と田中さんは繋がっていた電話の息づかいの荒さとかから何かに焦っている感じを読み取ってくれたのだろう。
「すみません。登り坂でペースを落とさない事を意識しすぎてペースを崩してました。」
「……そうか。体力的な問題とかはないかい?」
住職も僕がペースを崩した理由が他にある事もきっとわかってくれている。
そんな気がする。
その上で話を別方向で進めてくれたと思う。
「大丈夫です。本番の体力と今日の感じが違うと思うのでペースが保てるかはわからないですけど、優勝を狙うなら速く走らないといけないわけですよね。」
「まぁ、そうだね。でも、体力が尽きて途中リタイアのリスクもあるね。でもな~、この道を何回も挑戦してみて慣れるとかもしてるほど時間がないし少し離れた場所だから気軽に来るのもできないから今日のペースで判断基準を作っていこうかなと私たちは思ってた。
そこは、私たちの勝手な予定だったから少年には伝えてなかったし、少年が限界を攻めて自分なりのペースを作る予定だったとしたら意志疎通不足だったね。」
「そうですね、すみません。」
住職は一つ一つ言語化して説明して貰えたので、自分の感情でペースを上げてしまった事が申し訳なく思った。
「少年、当日まで頑張るのも当日に頑張るのも少年で私たちはあくまでサポートだから最終的に決めるのは少年だよ。だから、少年のしたい方向に私たちは寄せていくから思った事があったらできるだけ共有していこう。」
「はい。」
「ここからまだ登り坂は続くけどどうする?」
「とりあえず、登りのペースは少し速めで下りで勢いのまま進んで体力回復とかしていけたら良いかなと思ってます。」
「そうだね。下りはこぐと無駄に体力を使うから、勢いが落ちてそうと思ったら勢いを足すくらいでいいと思うよ。ただ、勢いがありすぎると危険な箇所もあるから適時ブレーキも使いながらいこう。」
「はい、わかりました。」
僕が無理矢理に頼んでサポートして貰う事になった住職、住職が繋いでくれた縁で手伝ってくれている田中さんや鈴木さん。急造のチーム……といえるかはわからないけど手伝ってくれてる皆さんのためにもトレーニングもだし普段からの生活も含めてしっかりとしていこうと思えた。人に自分の考えを伝えるために言葉でしっかり伝える大切さみたいなものも感じた。




