第三十三駆
展望台を出発してまた一人で走り始めた。
まだ登り坂が続いているので、今回はペースを調整しながら進んでいく。休憩を挟んでいたけど坂の傾斜や足の疲労もあって息が上がるのが速い気がする。
やっぱり先ほどの無理なペースが影響してきている。
とにかく無心でこぎ続けるしかないからこぎ続ける。
『お前、あそこの高校いくの?』
あいつが聞いてきた。僕は少し気まずい感情で
「成績的にはもう少し頑張らないといけないらしいけど、頑張れば行けそうだって先生が言ってくれたから。」
『そうか~、あそこの高校は野球も強いよな。おれも頑張ろうかな』
あいつの学力なら無理じゃないし、高校も一緒に行けたら楽しそうだと思う反面、一緒にいると比べてしまうのが自分的に嫌だった。誰かに比べられるとかじゃなくて勝手に劣等感を感じているだけだから自分次第ではあるのに僕はそれを割りきれずにいた。
あいつは正社員ではあるけどシングルのおばちゃんと二人で暮らしてて、進学に関してもお金のかかりそうな私立は選択肢にすら入れていなかった。
野球で選ぶなら確実に私立の高校になる。
そこを選ばずに公立高校を選ぶ所があいつらしい所ではある。勉強を頑張って偏差値とかも高校に入ろうとしてるのも本当に凄いことだと思う。
「そっか、一緒に行けたらいいな。」
僕は半々の気分でそう言った。あいつは笑顔で言った。
『そうだな、おれもめっちゃ頑張るは。』
あいつの笑顔は眩しかった。
そもそも高校の野球部からスカウトが来てたら特待生とか入学金の問題とかもなかった。
実力的にはスカウトとか来てもおかしくはない。
でも、僕らの中学はあいつだけがすごい選手で他がパッとしなかった。ベンチにも入れなかった僕が言うのもおかしいけどあいつだけがヒットを打って、エースとして良いボールは投げたのに守備のミスとかで失点があり一回戦で負けたから活躍をスカウトに見て貰う事もできなかった。野球は一人で勝てるスポーツじゃない。
いくらヒットを打っても次の打者達が続かないと得点に繋がらない。ピッチャーが良くても全ての打者を三振にできるわけもないし、打球を一人でさばく事は不可能だ。いくら活躍できる実力があっても注目されるまで活躍し続けないといけない。
二回戦とか三回戦まで進めてたらスカウトされてたかもしれない。僕らがもっと野球が上手かったらとか意味のない事を考えてしまう。
ベンチ外の僕が決して言ってはいけない事だと思う。色々とタイミングが合わなかったとしか言いようがないけどあいつにはもっとチャンスがあっても良かったと思う。高校は一緒の所に行けたけどまさかあんな事になるとは思っていなかった。
そんな事を考えてるうちに下り坂に突入した。




