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峠を越えた世界  作者: Making Connection


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第三十一駆

「よし、少年。気合いを入れていこう。」

住職の声を聞いて、僕は勢いをつけるために思いっきりペダルを踏み込んだ。

海津大崎を出発してつづら尾崎展望台をめざす。

奥琵琶湖パークウェイに入り、山道を進んでいく。

住職はさすがにきついという事で田中さんと車で移動して展望台で待機して貰っている。

この山道は一人で走る。

まだ道も緩やかに登っていく形だが、これから先は急な登りとか登りがずっと続く所もある。

山道で気を付けるべきは先を考えすぎない事だと三人で話し合って確認した。

とにかく無心でこぎ続ける事をしていく。

しっかりと奥琵琶湖パークウェイの入り口からどれくらいの時間がかかるかを別に計って貰う。

距離と時間でどれくらいの速度が落ちるのかを計測していく。

18.8㎞の山道をどれくらいのスピードで走れば良いのかをしっかりと感覚として覚えておかないといけない。 

登りながら少し坂が急になると立ちこぎをしながら登っていく。

無心でこげるまで少し時間がかかる。

昨日は休んだので、体力があるけど本番当日は走り続けているので疲れとかもあって余裕がなくて無心になるまで時間がかからないかもしれない 。

ランナーズハイの状態に入れたらいいなぁとか思いながらこぎ続ける。

『いつまでやってんだよ』

あいつの声がする。

中学の部活の練習で素振りを続けていた時にあいつが笑いながら言った。中3の春、秋の大会からレギュラーがあまり固まらない中でチーム内で紅白戦をしてレギュラー決めをする事になった。チームの勝ち負けよりポジションの活躍や打撃とかを見るための紅白戦だった。

あいつはエースで4番だからレギュラー決定で余裕もあったけど僕は全然ダメだったから、最後のチャンスだと思ってた。そのため練習も人一倍頑張っていた。

『気張りすぎてもダメなんじゃね?』

あいつには僕の気持ちなんてわからないと思ってた。

だから、「今が一番頑張り時なんだよ。」と僕は答えた。中学になってからは試合に出る事もできないし、練習もサポート役みたいな事がほとんどで楽しかったかと言うとそうでもなかった。

だからこそ、この紅白戦が最後のチャンスだと思い込んでいた。実際は守備での活躍も特に目立つものはなく、打撃も散々だった。

アピールもできずにレギュラーどころかベンチメンバーにもなれなかった。

僕の努力が実を結んだ事はなかった。どれほど真剣に頑張っても結果に繋がらず意味を見いだせない事が多かった。僕は息切れしながら嫌な思い出を吹き飛ばすように立ちこぎでスピードを上げた。

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