15 蝗害。
こんな事をするなんて聞いて無いぞ!
争いを見せつけるなんて野蛮だわ!
こんな事をするなら税を軽くしろ!
もっと他に使い道が有るだろ!
無駄遣いを止めろ!
こんな事は無意味だ!
事故が有ったらどうするんだ!
誰が誰を攻撃するって言うの!
私達善良な領民を疑っているのか!
《そう、ではアナタ達は誰にも守られ無くても良い、憲兵に助けを求める事はしないのね》
「西の方、それとコレとは」
《関係有るわ、正しい暴力、正しい手段に性別は関係無い。それを知らしめる為、庶民の女性とて力と能力が有れば認められる、王の傍に居られると示す手段の1つ》
「ですが、この様に見世物にするのは」
《あら、不思議だわ、意義や意味が書かれた紙が随分と前に掲示されている筈。あぁ、文字が読めないのね、でも読み上げて頂けば。あぁ、そうなさって下さる方が、身近にいらっしゃらないのかしら》
《そんな風に言うだなんて、やっぱり領民を疑っ》
《警護や警備とは、当然の守りであり、防衛手段。ネズミに食糧を荒らされない為に蔵を作り、樽に入れ守る。ではアナタの家は戸を閉める事も無く、大事な場所に鍵は掛けず、どの様に怪し者も家に招き入れもてなすのね》
《そ、それは》
《あら、何処の誰かも分からぬ者に警戒などなさらないのでしょう?同じ領民なのだから、と》
『で、ですが、この様に』
《この東の地でも、道の整備をなさっている筈。現に、ココへの道は舗装され、馬車での往来にも問題無い筈。それも税よ?》
『それは、そうですが』
《若い女性が羨ましい、のかしら。嫌だわ、嫉妬如きで他人の足を引っ張るだなんて、それでも良い年をした男なのかしら。奥様はなんて仰っているの?お子様は、お孫さんは、何と仰っているのかしら?》
『そ、それとコレとは』
《あら、独身でらっしゃるのね。ではご結婚をなさった事は?》
『ですから』
「あぁ、守りは要らぬから優遇措置を行え、そうした要求なのだろうか」
《あぁ、そうなのね》
『そ』
《遠慮なさらないで、東のフェルナンド候補は要望を無碍になさらない、そうでしょう?》
「あぁ、無論だ」
《それに、私がココまでに言った事は当然で当たり前、言わずとも想像すれば分かる事。なのだけれど、あまりに愚かで、態々ここまで言われないといけないなんて本当に可哀想な方々。きっと村では、碌に働く事も出来ず、さぞ苦労なさっているのでしょう》
そう言えば、アイツら見た事が無いな。
隣村の奴らじゃないのか。
いや、隣でも見た事が無いぞ。
えっ、じゃあ、何処からか因縁を付けに来たって事?
イヤだわ、暇人にも程が有るじゃない。
本当、誰にも相手にされないからって、邪魔しに来るなんて。
あんなのと関わっちゃダメだよ。
そうよ、字も読めず読み上げてくれる者も居ないそうだし。
こうやって因縁を付けられちまったら、堪ったもんじゃないからねぇ。
「い、いや」
《違うの》
『私達は』
一体、何処の村の奴らか、しっかり聞かないとな。
あぁ、家の戸も閉めず、大事なモノに鍵もしてないか確認しないとな。
それに憲兵の事もだ、領主に言って引き上げさせてやろうぜ。
そうね、疑われる事がさぞ嫌なそうだし。
さぞ、善良な村なんでしょうから、助けてあげないと。
しかも字も読めないのだし、私達が訴え出てあげないとね。
「領主が主導していたそうだ、家族を処された恨み、らしい」
《まぁ、大変でしたわね。では、どの様なご処分をなさるのかしら》
「あやつらが望む場所で、望むように、暮らして貰うまでだ」
そこは、村と村を繋ぐ主要な道路から離れた僻地。
その村へと続く道は1つ。
その道と同様、その行き詰った村には鍵は無く、憲兵も居ない。
《おぉ、ココが、平和な村か》
『おいおいおい、おかしいな、確かに戸は無いが布で隠されてるぞ』
「そうなるとおかしいな、憲兵すら必要としない、善良な村人ばかりが居る筈の村だよな」
《あぁ、戸も鍵も無い、憲兵も居ない。誰をも歓迎しもてなす村、な筈だが》
『邪魔するぜ』
《ひっ》
「ひっ、だなんて。俺達もまた、善良な領民だって言うのに、悲しいなぁ」
《あ、あの、どうか》
《ココは第9地区、平和な村、だよな》
《そ、そうですが》
《じゃあ、邪魔するぜ》
『茶を頼むよ、ココまで長旅だったんだ』
「あぁ、茶菓子も頼むよ、善良な村人さん」
善良な村人だけが住む、平和な村、第9地区は今日も平和です。
「ふぅ、まぁまぁだな」
《あぁ、そうだそうだ、俺達はそろそろ結婚するんだ。で家を建てるんだが、ココの寝室を見学させてくれよ》
『俺達も平和を望んでるんだ、だから平和な村の寝室を見本にしたいんだ、勿論案内してくれるよな』
《そ、それは》
《あぁ、片付けなんかは良いから、そのまんまで大丈夫だからな》
『あぁ、さ、案内してくれよ。それとも、まさか、俺達が何かするか疑ってるワケじゃないよな』
「まだ、俺達は何もしてないってのに、まさか疑うワケが無いよなぁ」
《お願いします、どうか》
「どうか、何だ?」
『ハッキリ言ってくれよ』
《あぁ、疑う事を知らない、善良で平和な村の村人なんだろ》
罪や罰そのものの存在が無ければ、当然、法も取り締まる誰かも居ません。
ですので憲兵も居ない、戸も鍵も無い、勿論罪人も居りません。
「ふぅ、邪魔するぜ」
『風呂を用意してくれよ、風呂』
《誰も疑う事無く、戸も閉めず、鍵も無い平和な村なんだよな。さ、もてなしてくれよ、俺達は善良な領民。もしかすれば、アンタ達と同じ村人になる仲間、かも知れないんだからな》
「は、はい」
警戒する事が嫌であれば、警備が嫌なら、法に問題が有ると思うならば実行すれば良いだけ。
警備の居ない、警戒する必要の無い場所にすれば良い、だけ。
『あぁ、食事時か』
『あ、あの』
「邪魔するぜ、いや、邪魔なんかじゃないよな」
《この村の住人になろうって来てやったんだ、勿論、歓迎してくれるよな》
『も、もう、食糧が少なく』
「俺達、腹が減ってるんだ」
『食うに困ってるって言うのに、助け合いをしないのか、この村は』
《平和に助け合う村、安心安全な村、じゃなかったのかよっ》
『あぁ、お許し下さい、どうか』
「あぁ、気にしないでくれ、家具を壊すのも俺達なりの信頼の証なんだ」
『そうそう、俺達なりの、な』
《あぁ、信じれば悪は無い、だろ。ほら、歓迎してくれよ、村人になりたがってる者がココに3人も来たんだからな》
どんな者も疑わず、先ずは受け入れる平和な村、第9地区はいつも通り平和です。
「いやぁ、本当に凄かったな」
『正直、女ってだけで舐めてたが、流石騎士様だな』
《本当、勝てる気がしねぇや》
「お前、勝つ気だったんなら」
《いやいやいや、見るまでは、だ》
『シャルル様はなぁ、どう見ても勝てる気がしないからなぁ』
「けど勝つ気だったんだろ、腕相撲大会でも出りゃ」
《いや折れたの見たろ、腕がこう、だぞ》
『笑顔で一息で、いや本当、凄かった』
《無理無理、無理だ無理》
「まぁ、だなぁ」
『さぞ王様は安心だろうなぁ』
「いやアレは将来の王妃様用、だろ?」
『けどアレなら浮気も心配無いだろ?』
《あぁ、確かにな、騎士爵に取られたら恥ずかしいったら無いワケだし》
「あぁ、そこもかぁ」
『なのになぁ、無意味だ過剰だって、アレ何だったんだろうな?』
《な、本当に、何でだろうなぁ》
真に善良であり賢い民は、女騎士団の存在を受け入れました。
そして庶民であれ子女達は、憧れを抱き、賢く強くなろうとなりました。
あの美しく強い、女騎士達に。
ですが、そうした動きを歓迎しない者も居ました。
さて、それは何故でしょう。
「あ、分かったぞ、女を虐げたい奴らだったんだ」
《あぁ、弱くて愚かじゃないと困るしな》
『そっかぁ、女騎士に憧れられたら困るからかぁ』




