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悪魔貴族譚~ノビリタス・ディアボロス~  作者: 中谷 獏天
第17章 蝗害対策と家族。
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16 蝗害。

 急に、来るものですね、人手って。


「紹介したい者が居る」

『ロズモーヴシクィイ辺境伯家よりコチラに配属され、侍女長(オールワークスメイド)としてフェルナンド殿下により命を受けました、ソフィアと申します。どうぞ、宜しくお願い致します』


 ロズモーヴシクィイ?


『ロズモーヴシクィイ家は近隣の辺境伯ですね、人手不足の解消にと託された者です、帝国経由で』

『おぉ』

「だが、お前と一緒にしてくれるな、主な理由は秘密婚だ」


 秘密婚。

 秘密婚って、確か。


『では、辺境伯の方と』

『はい。ですが、その』

「不本意だそうだ、令嬢では無くなったと言うのに、だそうだ」


『では後ろ盾を得に』

『いえ違うのです、出来れば、坊ちゃまには目を覚まして頂きたく』


『ですが、帝国からの後押しが有る』


『はぃ』


 消え入りそうなお返事を。


「フィオナと言う令嬢について、覚えているか」


 確か、帝国から派遣されている方で、貴族の内務調査をしている。

 でも、少し前は南に居た様な。


 いや、魔法陣を使っているから移動が自由自在って事ですよね。


『はい、ですが、何故?』

「ソチラからの要請も有っての事だ」


『成程、つまりは凄い信用出来る、と言う事ですね』

「あぁ」


 嬉しそうですね、殿下。


『あの、決して背信行為などは考えてもいないのですが、私に侍女長(オールワークスメイド)など。とても』

『いや若人が多いですし、殆どは素直で真面目ですから、諦めて貰いたいのでしたら是非にも頑張って下さい。ウチの殿下は意に沿わない結婚であれば、きっと助力して下さる筈ですから、ね?』

「あぁ、無論だ、期限までに両者を見極めるとしよう」


『期限?』


『その、夫となる方は、まだ13才でして』

『はい?』

『既に辺境伯として当主を全うして頂いていますので、下手に婚約騒動を起こさない為にも、特別な手段が有るのです』

「そして周囲の者の署名は勿論、フィオナ嬢からの署名も有り、婚姻届出は受理されている」


 あらー。

 大変な重圧でしょうに。


『心中お察し申し上げます、分かりますよ、私も似た様な状態ですから』

『そうですね、様々な年下の方に好かれていますから』


 ニコニコして。

 あ、もしかして。


「コレをお前の直下とする、ルイーズ騎士爵は騎士団長故、指示系統はお前が最上位だ」

『宜しくお願い致しますね、カメリア侯爵』


 また、断り辛い環境でお決めなさる。


『あの』


 ルドルフ陪臣ことカヨコさんは男性ですし、かと言ってルイーズ騎士爵の直下だと、ルイス侯爵としての指示とは分離するので色々とややこしい事になってしまう。

 つまりは、ルイス侯爵の部下的な私が適任だ、と。


『分かりました、任されましょう』


 何か、この遠征で勝手に実力を付けさせられそうですね。

 嫌だなぁ、商人になりたいのに。


 あ、コレ、カヨコさんへの説明もさせられるのかぁ。




「慣れてきたか」

『あ、はい。名乗りだけでしたら、何とか』

『知らない、とは言わせない為にも、暫くお付き合い下さい』


『はい』


 この方、もう既婚者なんですよね。

 しかも辺境伯と秘密婚。


 カナコさんは盛り上がっていましたが、正直、私は複雑でした。


 だってお相手は13才ですよ。

 寧ろお伺いした時は、嫌悪感すら湧きました。


 ですが、彼女にとって本当に不本意な結婚なのだと、お会いしてやっと理解する事が出来た。

 そして、こうして離れる事で、そのウチに気が収まるのでは無いかと。


 ですが、ミハイル侯爵を見ていた私達としては、寧ろ悪手にもなり得る事を理解してしまっている。


 けれど、彼女の性根は帝国からも保証されている。

 であれば後は、歳月だけ。


 本当に、単なる元ご令嬢、なんですよ彼女。

 だと言うのに、別れる為にと、こうして大役を担う事になった。


 流石に、私も応援せざるを得ませんよ。

 どちらにしても。


『アナスタシア班、到着致しました』


「他でも無い、紹介したい者が居る、彼女だ」

『ロズモーヴシクィイ辺境伯家より……』


 知らない、なんて言わせない為の紹介、なんですが。

 つまり、コレを後2回はするんですよね。


 残りはシャルル様と、クローディア様の班。


 出来るだけ、満遍なく目を配ってはいるつもりですが、どうしても全員を把握するには至れていない。

 まだ、見極めが必要なのですよね、篩い分けられるべき者が独りだけとは限りませんから。




《何で私がココに戻されなきゃいけないのよ!!》


 何処であろうとさ、出る杭は打たれるよ。

 しかも、悪目立ちしたら特に。


『どうしました?』


「あ、あの」

《何で私が》

『アナタ、無知で愚かな盗賊や領民に、殺されたり嬲られたかったんですか?』


《でも》

『まだ反省していない事は良く分かりました、さ、行きましょう』

「は、はい」


 でも、出なさ過ぎてもダメなんだよねぇ。


 自信が無くて自身も無い、だと令嬢としては失格。

 しかもコミュ障なら、特に。


『失礼しました、何をなさろうとしてらっしゃいました?』


「い、いえ」


 個性を持てとは言わないけどさぁ。

 怯えが強いだとか、流されて言いたい事を言えないご令嬢ってさ、いつか何処かで事態を悪化させちゃう可能性が凄い高いんだよね。


『もしかしてご友人でしたか』


「い、いえ」


 例えばさ、今の状況。

 何も知らない赤の他人にしてみれば、カメリアが虐めてるんじゃないか、って見られちゃう。


 だからさ、令嬢って威風堂々としてなきゃなんないんだよね。

 相手を悪者扱いしたくないなら、特にさ。


『ご事情をお伺いしても』


「い、いえ、何でも有りません。し、失礼致しました」


『分かりました、では戻って下さい』

「はい、失礼致します」


 カメリア、優しいんだけどね。

 呆れるのも早いんだよねぇ。


『はぁ』

《お疲れ》


『アレ、何なんでしょうか?』

《篩い残りじゃない?》


『あぁ、成程』


 謙虚で控え目な事は、良い事だよ。

 出しゃばりまくって邪魔をされるよりは、遥かにマシだからさ。


 でも、だよ。


 おどおど怯えて、碌に話せない、なんて。

 ダメなんだよ、令嬢なら特にさ。




『やっぱり私、同性への同情心が薄いと言うか、そもそも興味が無さ過ぎるのでは』

《そりゃ逃げ道が有りそうな子だもん、カメリアが興味無くてもおかしくないし》


 カナコさん、まさかの肯定派。


『いや、問題では?』

《でもだって、結婚に逃げる事が出来るでしょ?とか思っちゃうと、構う気力も減るよねぇ》


『まさかのコッチ側ですか』

《ん~、って言うかカメリアの考えを聞いて、成程なと思って。だってさ、本当に必死だったら、勇気を出して何かする以外に無いじゃん。あの子、そこまで切羽詰まって無いんだよ、なのに助けるとか逆に烏滸がましく無い?》


『まぁ、そこまで突き詰めれば、ですが』

《あ、コレ、精霊種とか魔獣種とかの共通の感覚っぽいんだよね。それでも興味が湧いたら、力を貸す、暇潰しに》


『暇潰し』

《だってもう、半ば趣味じゃん、ちょっと困ってるだけで助けるのって》


『そこまで言いますか』

《何か分かっちゃったんだよね、手軽に助けるヤツの気持ちとか、理由とか》


『ほう』

《手軽に助けられるから、手軽に自己肯定感とか満足感を得られるから、要は浅く広いんだよ》


『深い自覚は、無いんですが』

《そこは感性とか性根、それこそ育ちなんだと思う。ほら、手軽に募金して、道徳の貯金箱が直ぐに満たせる派かそうで無いか。良い悪いって言うか、浅くて手軽なんだよ、だからその分広く手助け出来る。まぁ、どっちにしても、突っ込むのに線引きが有るんだよね。カメリアの場合はより深淵にまで手が伸ばせる、知ってるから、分かってるから》


『浅いから、悪いワケでは無い』

《そうそう、領分領分。深淵派か浅瀬派か、浅瀬っぽいなら浅瀬派に任せれば良いだけ、良い悪いじゃないんだよね》


『浅いからバカい、とか思ってましたわ』

《いやいや、自分が浅瀬派だって気付かないバカも居るからね、仕方無いよ。浅いと思って突っ込んだら、深過ぎて慌てて傷付けちゃうとか、逆ギレとか有るし》


 残念ですが、本当に有るんですよね。


 不細工で悩んでいます、って文字情報だけで相談したら、凄い相談に乗ってくれて。

 でも、いざ会うと、ごめんなさいって。


『深淵派になりたくてなってるワケじゃ無いんですけどねぇ』

《でも良い事だよ、棲み分け棲み分け、浅瀬は浅瀬派に任せよう》


 否定はしないし、凄い肯定してくれるんですよね。

 なのに、居心地が悪い。


『何か、批判されなさ過ぎて、逆に不安になる気持ちが分かりました。アイリス様に同情しますわ』

《嫌な癖だよね、直すには多分、凄い時間が掛かると思うけど。ほら、癖だから、ね?》


 性根とは違って、癖なら直せますからね。

 けど、コレ、本当に単なる癖なんですかね。


 あぁ、やっぱり不安になる。


『罵って下さい』

《根暗、のっぽ、男女》

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