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悪魔貴族譚~ノビリタス・ディアボロス~  作者: 中谷 獏天
第17章 蝗害対策と家族。
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13 蝗害。

 目の前でヨナ君が倒れた時はもう、どう魔法を得て貰うか、どう交渉しようかと考えていたんですが。

 糖尿病じゃなくて、本当に良かった。


『安心しましたか』


「はい、ありがとうございました」

『いえいえ、すみませんね、専門家では無いので。膵臓の病気だと思ったんですが、違いました。お腹にちょっと悪いモノが増えてまして、ですが、ちゃんとしていれば暫くは再発しないそうですよ』


 あんなにイキってたのに。

 やっぱり仲間が居ないと萎れますか。


「偶に、こうなってたんです。でも、アイツら、仮病だろうって」

『まぁ、愚か者には病気の事なんて分からないでしょうからね』


 やっぱり、大人万能神話中、ですかね。

 厄介な子ですね本当に。


「どう、気を付ければ、良いですか」

『ソバは食べさせない、甘い物は控える、ちゃんと眠る。それと、本当は嫌な事から離れて欲しいんですが』


「コイツの分まで働きます、だから」

『他人の罪は他人の罪です、アナタが背負っても代わりは出来無い、それが罪なんです。もしそれが叶ってしまったら、親の罪を子が背負わなければならなくなる、どんなに無関係でもです』


 きっとユサール君とは違い、誰も手を差し伸べなかったから。

 違う意味で、もっと酷い事が有ったから。


 なまじ青年期だから、ですかね。


「俺がして良い事って、何ですか」


『良い観点ですね、しちゃいけない事をしないのは、当たり前。戻って仕事をしながら話しましょうか』

「はい、お願いします」


 おぉ、相方が倒れて素直になりますか。

 宜しい、私に被害は無いですし、領主様は半ば自業自得ですし。


 良いでしょう、少しだけ関わりますから、ちゃんと学習して下さいよ。

 次に何かしたら、私は関心を持てなくなるでしょうから。




「カメリアさんって、不幸な方に甘いですよね」


 分かる。

 けど、何で今なの、カヨコ。


『ですよねぇ、今回の件で自覚しました』

《けどさぁ、それってある意味で、無意識に無自覚にバランスを見ての事だと思うんだよねぇ》

「あぁ、確かに」


『そう、なんですかねぇ?』

《誰もが同じ可哀想な子だけに手を差し伸べてたら、凄く不公平じゃん》

「そうなると、ある意味で正義感、ですよね」


《うん、それはそう》


『ん~』

《まぁ、自覚しなくても良いだろうから、別に良いんだけど》

「問題は、そうしたマジで不幸な方に好かれ易いんだろうな、ですよ」


《あぁ、ね?》


 すっかり懐かれてるもんね、男子2人に。


『はい?』

《あの子達、凄い懐いてるじゃん?》

「不幸人タラシ、と私は名付けました」


《あぁ、うん、不幸人タラシ》

『えぇ~、普通にしてるだけなのに』

「そこですよ、そもそも彼らは普通に接して貰えない。なのに、既に全てを知っているのに、普通にしてくれる」


《そら懐いちゃうよねぇ》

『いや、でも』

「それと気安さ、かと」


『あぁ、ふぇ』

「良い点だと思いますよ、色んな意味で、もう私には出来ませんから」

《泣かないでカヨコ?》


「もう、涙も出ないんですよね。すっかり整理出来てしまって、あ、あの考察のお陰で整理出来たんですよ。ありがとうございます」


 本当、すっかり整理出来ちゃったんだよね。

 マジで。


『あぁ、どうも』

「若い男子は、そもそも、性欲と好意が最初から結び付いている可能性が有る。そして群れると強気になり、単独だと弱気な子が多い、コレは彼らや若い村人のお陰ですね」


『ほう』

「そして、私に弄ばれた、と言った子は。確かに、どちらかと言えば単独では気が弱いだろう子、でしたから。友人を自称する子達に、煽られたのかと」


『ですけど、だからって』

「はい、私が死んで後悔すれば良いんですよ、全員」


 カメリア。

 驚いてるけど、喜んでる。


 だよね、嬉しいよね。


『凄い、開き直れたんですね』

「ですね、元から戻りたいとも思ってはいませんでしたし。確かに、娯楽や便利さは向こうには負けますが」

《翻訳が楽しいみたい》


「ですね、新たに勉強しながら翻訳も出来る、しかも生活には困らない。最高では」


『ふふっ、すみません。何か、嬉しくて』

《良い性格してるでしょ、カヨコ》


『ですね』

《本当、箱庭の中はこうだったのに、起きた時は違うからちょっと驚いたよ》


『あぁ、じゃあ、何のしがらみも無かったら。こうだったのかも知れませんね』


 今度はカヨコが少し驚いて、喜んでる。

 楽しいな、嬉しいな、やっぱり家族って良いよね。




《アンタ、あの方々に本当に付いて行くっ》

「今まで育ててくれてありがとう、けどコレで楽になるだろ」

『お前は何を』


「どう言われてるか知ってんだよ、俺の事も、この家の事も」

《けどもう》

『お前が気にして』


「妹が居るだろ、仕送りもする、じゃあな」

《なんで》

『どうして』


「アンタ達が助けてくれなかったからだよ!!言わなくたって、俺が、俺達が、どんな」

《けど》

『お前だって』


「ほら、だからだよ。コレに署名して送ってくれよ、じゃないとアンタ達が困る事になる、じゃあな」

《そんっ》

『待ちなさい、コレじゃあ追い出したみたいに……』


 俺だって良い思いはしただろ。

 そう綺麗事を言うだけ言って、結局は追い駆けて来ないだろう、って。


 本当に、全部、その通りだった。


「どうでしたか」

「ありがとうございます、ルドルフ陪臣」


「いえ、では行きましょうか」

「はい」


 血が繋がってるだけで、家族じゃなかった。

 家族じゃなくなった。


 いつからかは分からないけど、もう、家族じゃない。




「ちょっと、どうしたって言うのよ」

《コレは、養子縁組の紙じゃないか、何だコレは》

『アナタ達と縁を切りたいからです、僕が辛そうにしていても、助けてくれなかったからです』


「魔法を得ようとして失敗した事は責めないわ」

《そうだぞ、それに次の領主の帳簿の見張りは》

『今までに助けてくれてたら、助けました。でも、アナタ達は助けてくれなかった、だから離れるんです』


「そんな」

《お前だって》

『あんな苦痛を受けるなら、逃げたかった、でも逃げられなかったから甘んじていただけです。喜んで受け入れたワケじゃない、さようなら、今まで育ててくれてありがとうございました』


「ちょっと」

《待ちなさい、コレから……》


 言われた通り。

 予想通りだった。


 まだ、ほんの少しだけ、家族だと思ってたのに。


『お疲れ様です』

『いえ、ありがとうございます、カメリア侯爵様』


『いえいえ、私は大人、アナタは子供。本来なら見守るのは当然の事、ですから』


 でも、僕らは当たり前の事をして貰えなかった。


 慰めて貰えなかった。

 助けて貰えなかった。


 なら、助けるワケ無いじゃないか。


『でも、ありがとうございます』

『いえいえ、私に被害は無いですし、もう誰かを害する気は無いかと』


『はい』


 嫌な事を嫌だと分かってくれる。

 守ってくれる。


 優しくしてくれる。




「今日集まって貰ったのは、皆に聞かせたい事が有るから、だが。その前に、何か言いたい者は居るか」


 ココに滞在するにも、それなりに費用が掛かります。

 ですので、今日が期限、なのですが。


『では、始めさせて頂きます。サマンサ夫人、宜しくお願い致します』


『はい、帳簿についてのご報告です』


 明らかに不安げに動揺していますが。

 まだ、誰も何も言いませんか。


『では、報告を』


『帳簿にー!問題はー!有りませんでしたー!!』


 ありがとうございます、サマンサ夫人。


「だそうだ、しかも私物の持ち出しすら無い為、領主の問題は不問とする」

『確かに現場を離れてしまった事は問題ですが、相当に、バッタが苦手な方だったのかも知れませんし。情報は掲示され、しっかりと告知されていた事が既に証言されていますので、不問とさせて頂きます』


「但し、直訴したい者が居るのであれば、ココで受けよう」

『今回は、特別に、書類の提出は後回しで結構ですからね』


 コレは、最後通牒です。

 そして、最終確認でも有ります。


 彼が本当に仕事をしていたか、していなかったか。

 アナタ方が貶めようとしたかどうかが、ココで分かりますから。


『ルイーズ騎士爵、私にお任せ頂いても』


『はい、宜しくお願い致します』


『領主様の罪はー!不問とされましたー!!不服の有る方はー!書類無しでー!受け付けるそうでーす!!』


『ありがとうございます、サマンサ夫人』

『いえいえ、大役を任せて頂きありがとうございます』


 分かります、ココで相当にストレスを溜めてらっしゃいましたからね。


「では、受け入れたとするが」

『受け入れたとー!思って良いですねー!!』


「ふふふ、暴漢も逃げ出す迫力だ」

『その為の大声、ですから』


「あぁ、では、去るとしようか」

『はい』

『では皆様ー!さようならー!!』


 もう、後から幾ら文句を言おうとも、コチラは決して譲歩はしませんよ。

 もう既に、十分に、コチラは譲歩したのですから。

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