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悪魔貴族譚~ノビリタス・ディアボロス~  作者: 中谷 獏天
第17章 蝗害対策と家族。
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12 蝗害。

「宜しくお願いします、アルベルト侯爵様、アガットさん」

『宜しくお願い致します』

「あぁ」

《おうおう、俺は庶民だが、この方は侯爵様だ。絶対に、間違っても、裏切るだ何だはしてくれるなよ。死にたいなら他の方法にしろ、死んだ方がマシな状態で、最も屈辱的なままで生かされる事になるからな》


「強制労働所では、見た目が良ければ仕事を取り上げられ、体を開く仕事に転向させられる事が有る。そして反応次第では歯を全て抜かれ、手足を切断される場合もだ、以降は特に気を引き締め行動して欲しい」


 ビビってくれたか。

 やっぱり、具体例ってのは必要なんだな。


「はい」

『はい』

《さ、仕事だ仕事。お前らはいつも通り、けど少しだけ気を付けて振る舞えよ》


「はい」

『はい』


 坊主達には先ず、俺に付き添って道の整備だ何だをして貰う。

 だが、問題はココの村人だ。


《どうもどうも、手伝いに参りまして、今日は何をしやしょうかね》


「あ、あぁ」

《じゃあ、向こうで道を、お願い出来るかしらね》

『そうね、お願いね』


 坊主達に何を言われるか、何をバラされるかビビってんだよな。

 なら、守ってやれば良かったものを。


 まぁ、そこもまた後ろ暗いんだろうな。


 どう関われば良いかも分からなかった。

 どう言ってやれば良いのか分からなかった。


 だから、放置した。

 だから、手を差し伸べる事もしなかったんだろうよ。


 けどよ、今、こうして機会が有るって言うのにな。

 本当、何もしないんだコイツら。


《どうもどうも、お手伝いに来ましたが》

『お、アガットさん、手下を連れてやって来ましたか』


《いやいや、俺より学は有るらしいんで、本当はこんな事より帳簿をさせたいんですけどねぇ。まぁ、領主様が行方知れずで、サマンサ夫人が代わりをなさっておいでですから》

『あぁ、じゃあさぞ大変でしょうねぇ。蝗害対策も碌にさせない、しかも逃げ出してるんですし、そりゃ帳簿は酷いものでしょう』


 ほら、機会をやるんだから。

 言ってくれよ、最悪は誰にも信用されない村になっちまうんだから。


《まぁ、どうなんでしょうねぇ、まだ始めたばかりでしょうから》

『確かに、ではコチラはコチラで、出来る事をしませんとねぇ』


《ですねぇ》




 何で俺達の事を連れ回ってるのか、やっと分かった。


「俺達の事を、守ってくれてるんだな」


 俺達は魔法を得る事に失敗した。

 誰も、何処からも声は聞こえなかった。


『あぁ、うん』


 問い詰められる事も無い、脅される事も無い。

 今まで通り、いつも通り。


「失敗して、死んでたら、どうなってたんだろうな」


『多分、特に変わらないと思うよ』


 フェルナンド様は、俺達の処罰は遠征の最後に決めるって。

 けど、もし領主様が心変わりしたら、俺達は強制労働所に送られる事になる。


 蝗害対策の邪魔をしたし、魔法を得る事に失敗したし、何より領主様を脅して襲った。


「どうせ死ぬなら、殺してくれれば良かったのに」




 僕らは、首を絞められながらされたり、道具を使われたり。

 帳簿をさせられたり、偶に美味しい食事を食べられたり、良い服を貰えた。


 だから、時には羨ましい、なんて事も言われた。


 アンタ1人じゃなくて良かったね。

 殺されないだけマシだ、なんせ生きてるんだから。


 手足は無事でしょ。

 けど良い食事が食べられるんだろう。


 字も読めて計算も出来る様になったんだろう。

 良い服が貰えたんだ、良かったじゃないか。


 何をされてるか知ってたのに。

 どれだけ苦しいか。


《おい、顔色が悪いぞ、坊主》


『いえ、まだ大丈夫ですから』

《いや、休憩しろ、コレは命令だ》


『はい、分かりました』


 アイツは、ちゃんと願ってた。

 けど、僕は願わなかった。


 こんな村、滅べば良い。

 そう思っていたし、今も思ってる。


 けど、領主様には、本当に悪い事をしたと思う。


 凄く甘えていたし。

 あんなのは、本当に、八つ当たりだったから。


『大丈夫ですか、ヨナ君』


『アナタは、確か』

『カメリア侯爵ですどうも、顔色が悪いですよ、いつ食事をしましたか』


『朝食を、食べました。でも、偶に、有る事なので』

『意識を失った事が有りますね』


『はい、ですけど』

『コレを食べて下さい、それから、決して立ち上がらない様に』


『あの』

『食べなさい。衛生兵の方ー!!急患でーす!!』


『少し休めば』

『アナタは膵臓の病気の疑いが有ります、良いから黙って言う事を聞いて下さい』


『はい』


 渡された塊は、多分、お砂糖で。

 高い物を食べてしまった、申し訳無いなと思っていると。


《はぁ、はぁ、どうなさいましたか》

『多分、糖尿病です』


《とう、あぁ》

『すみません、低血糖の症状に似ていて』


《はぁ、すみません、運動不足で》

『あの、どうしましょうか』


《大丈夫です、診れます、から》


 どうしよう。

 大事になってしまっ。




「あの、彼は」

《あぁ、ご心配無く》

『正解は、腸カンジダ、でした』


「腸、ですか」

《はい、ですので低血糖は間違いでは無かったので、お砂糖は正解でした。ですが今回は腸に常在菌が繁殖しており、栄養吸収を疎外していた、と言った感じですね》

『悔しい、流石に専門外なので外しました。てか知りませんでしたよ、腸でもカンジダになるって』


《心因性のストレスは勿論ですが、物理的なストレスも有ったかと。直腸洗浄だとか、異物混入の影響により、腸内の奥まで荒れてしまっていた。それが何度も繰り返され、再発したのだろう、との見込みです》


 もしかして、カメリアさんより知識が有る。

 しかもココの知識では無い、ですよね。


『あぁ』

《ですがストレスの根源と離れる事が出来ているワケですし、ソバのアレルギーが僅かに有るので、ソレさえ避けていれば繰り返す事は無いかと》


『ですけど、半ば労役者なんですよねぇ』

《あぁ、難しいですねぇ》


 この感じは、多分、既にコチラの事は知っているんですよね。


「あの、1つ、お伺いしても」


《あぁ、私は転生者です。しかも医療とは全く無関係な、商業系の被服デザイナー、でして》

『凄い、全くの異業種』


《はい、ですが。実は、当時は、ほぼ治療不可能な。感染性の、病気で》

『成程、それで辛かったので、ココでは医療系に』


《それも、半ば流れで、でも本当に医療には疎くて。助けを求めて頂かないと分からないんです、何がどうなっているかも、どう治せば良いかも》


 つまり、カメリアさんが様子見をして正解だった、と言う事ですよね。


『ほう、でも治せちゃうんですよね、便利』

《あ、でもカンジダは無理ですからね。常在菌ですから、完全に消し去る事が出来無いんですよ》


『では癌は?』

《アレは腫瘍や異物と同じで、排出させるか消滅させる事は出来ますが。やはり、あまり老いていたり、体力が無い方は、そう直ぐには治せませんし。治す力を手助けする、だけ、ですから》


『でも治せちゃう』

《いや、患者さんの体の細胞を押すだけ、ですからね。寿命に関係する事や、テロメアや脳細胞には全く触れられないので、癌細胞以外を増幅させるだけですから》


『ふむ、成程、素晴らしい』

《いえ、全然。最初は、痛みを消してあげるだけ、を願っていたのに。こう、大役を、任されてしまって》


『あぁ、お祖母様、とかですかね』

《はい、背中の疼痛が激しくて。せめて、痛みが消せれば、と》


 亡くなられてしまっているのでしょうか。

 それとも、まだ。


『では、今は』


《あぁ、尿管結石でして》

『あぁ、アレはアレで激痛だそうですからね』


《本当に、心臓病か何かだと思ってたんですが。尿管を弛緩させて、何とか》

『弛緩させられるんですか』


《細胞に水分を多く含ませて、こう》

『あぁ、ほうほう』

『あの!』


『あぁ、サムソン君、ヨナ君は無事ですよ』

《ですが疲れも有る様ですから、起こさない様にしてあげて下さい》


『いえ、無事なら、良いんです』

『遠慮しないで下さい、ほら、行きますよ』


 あぁ、カメリアさんって、本当にタラシですね。

 容姿が平凡だったなら、きっと。


 いえ、あの容姿だったからこそこうなった、のかも知れないんですし。

 寧ろ私が出来無い事を、してくれている。


《カメリア侯爵って、凄いですね、元医療関係者の方なんですかね》

「あ、ご存知無いですか」


《はい、東にお2人だけ、似た方が居る。そうとしか、聞いてませんで》

「あぁ、そうなのですね」


 確かに、2人だけ、とも言えますね。

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