51、サイズ
「じゃあ、行こうか」
「はい」
僕とスザンヌは、三輪バギーに乗って洞窟に中に入った。
バギーにはリヤカーが繋いであり、それには荷物が入っている。
何度も通った通路。ルートは頭に入っているので、スピードを上げて鳥居を目指す。
やがて、鳥居の前に着いた。
「これがトウヤさんの言っていた、トリイなんですね」
「うん、そう」
目の前にはバギーのライトに照らされた赤い鳥居。
「じゃあ、転送するよ」
「はい」
後部座席の彼女は僕にしがみつく。
スザンヌの家をイメージすると、クラッときて視界が暗くなった。
*
気がつくと、スザンヌの家の前。
「大丈夫? スザンヌ」
振り向くと彼女は小さく頭を振っている。
「ええ、ちょっとフラつきますが、平気ですよ」
これで行き帰りとも、転送の安全が確認されたということか。
バギーのクラクションを鳴らすと、すぐにクリスが飛び出してきた。
「もうー、お兄ちゃん達は遅いよぉ」
「ごめん、ごめん、お土産を買ってきたからさあ」
家の中に荷物を運び、スーパーで買ってきたケーキなどをテーブルに広げる。
食後のお茶会が始まった。
「お姉ちゃん、可愛い服を着てる。うらやましいなあ」
スザンヌの水玉模様のワンピースを見て口をとがらす。
「あなたにも買ってきたわよ」
そう言って、スザンヌが段ボールの中から服を取り出す。
それはセーラー服をイメージした白いブラウスと紺のスカート。
「ああ、カッコいい」
服を自分の体に当てている。クリスは年齢的に中学生なので、制服が似合っているようだ。
「お姉ちゃん達、ニホンで思い切りイチャコラしてきたでしょ」
僕とスザンヌが固まる。
「そんなに大したことはしていないわよ」
「少しはエッチなことしていたんでしょ」
言葉を次ぐことができないスザンヌ。
僕が持っているティーカップが震えているのが自分で分かる。なんか後ろめたい。
「そういえば、お姉ちゃんの胸が大きくなってる」
クリスがスザンヌの胸のボタンを外す。
「ちょっと、やめなさい、クリス」
「これ何? いいなあ、この下着を私も欲しい」
そう言って服を広げる。ピンクのブラジャーがしっかりと見えた。
「分かった、分かったから。今度、ニホンに行ったときにクリスの下着も買ってあげるわよ」
そう言って、胸元を押さえる。
「ホント? でも、それは私には大きいよ。サイズはそろっているの?」
「ええ、大丈夫よ。ニホンでは下着がいっぱい売っているから」
「ああ、私も早くニホンに行きたい。お兄ちゃん、次はクリスも連れてってよぉ」
スザンヌを転送して、安全であることは確認している。
「うん、いいよ。回転寿司に行こうね」
「やったー! たくさん食べるぞぉ」
ツインテールを揺らして満面の笑みを浮かべているクリス。こんなところは、まだ子供なんだな。
ホッコリしている雰囲気。これが家庭的な幸せというものなのだろうか。
*
一泊してから翌朝、日本に転送した。
そして、すぐにホームセンターに。朝礼に参加して業務を始める。
これからはスザンヌの家をリノベーションしていく予定。指導役の畑山さんは親切に教えてくれるので、家の柵に有刺鉄線を張る方法などを聞いた。
今まで使っていた軽自動車をコンパクトカーに変えた。
近所を走るくらいなら使い勝手が良いのだが、東京の叔父さんに会うために高速道路を走るには軽自動車ではキツイ。それで、白のリッターカーを新車で買ったのだ。
さらに、軽のオフロード車を中古で購入。それは、マジックボックスで異世界に持って行き、ギルドへの荷物輸送に使うのだ。軽自動車なのだが、悪路走行性能は世界でもピカイチの車。
これで、冬の移動も楽になる。寒風に耐えながらバギーで雪道を走らなくても済むのだ。
*
ホームセンター小次郎における僕のシフトは金曜から月曜まで。仕事が終った月曜の夜に異世界に行く準備をした。
マジックボックスにオフロード車を入れて異世界に転送。
スザンヌの家で一晩を過ごし、翌朝から家のリノベーションを始めた。
家の周りに木の柵は作ってあったので、それに有刺鉄線を張り付ける。特別な手袋を使って有刺鉄線を柵に固定した。これでキングボアも近寄ってこれないだろう。
それから、太陽光発電パネルが付いている風力発電装置も設置した。
それは、二メートルほどのポールに30センチ四方の太陽光パネルと直径1メートルの風車が取り付けてある物。それにより、くもりの日でも少しはバッテリーを充電させることができる。
敷地の中を小川が流れている。
それは生活用水として使っていた。スザンヌによると、猛暑のときは水が涸れることがあるらしい。
それで、ユンボを使い、小川の上流を掘って池を作った。
連日の土木工事で疲れが溜まったせいか、僕はグッタリとして居間のテーブルに着き、コーヒーを飲んでいた。
「もうー。お姉ちゃんだけ、ずるいなあ」
部屋の奥からクリスの声が聞こえる。
「だから、ニホンに行ったらクリスにも下着を買ってあげるって言ってるでしょ」
「うーん、クリスも早く可愛いブラジャーを着けてみたい」
「じゃあ、体のサイズだけでも測っておきましょうか」
スザンヌがクリスの部屋から出てきた。
「えーと。確か、巻き尺を持ってきていましたよね」
彼女は、隅に置いてある段ボールを探り、メジャーを取り出した。
それは胸囲などを測定する白いボディメジャー。その巻き尺を持って部屋の中に入っていく。
僕は不謹慎にも、クリスがヒップサイズなどを測定されている状況を思い浮かべた。
しばらくして突然、クリスがドアを開けて姿を見せた。
「お兄ちゃん! 巻き尺の読み方を教えて」
縞模様のパンティを穿いただけの15歳の少女が僕を見て立っている。
以前は膨らんでいるか分からないくらいのチッパイだったが、今は動くと胸がフルフルと揺れるくらいに育っている。スザンヌには遠く及ばないが、チョコッと出ているチョコパイと言ったところか。
僕はコーヒーカップを持った手を震わせて言葉が出ない。
そうか、メジャーの数字は日本の算用数字で書いてあったので、スザンヌは読めなかったのか。
「ちょっと! クリス」
スザンヌが駆け寄ってきて、後ろから両手でクリスの胸を押さえる。
「キャ! お姉ちゃん、痛いよ」
「いいから、来なさい」
奥に引っ込んでいく。
ここはドアを閉めた方がいいのだろうと思って、チラッと部屋の中を見てからバタンと閉めた。
僕はイスに戻り、飲みかけのコーヒーを喉に流し込んだら、ゴフッとむせてしまった。
異世界でも数字があり、日本と同じ十進数を採用している。
日本の数字と異世界の数字は対応していて、それをスザンヌに教えると、彼女はすぐに憶えた。




