50、二人きり
春の日は長いが、基地に帰ったときは薄暗くなっていた。
スザンヌの部屋は1階の客間に用意してある。そこに案内して布団を敷いてあげた。
「これがニホンの寝具なんですか」
彼女が不思議そうに布団を見ていた。
風呂場に連れていき、使い方を教える。
「スザンヌが先に入ってよ」
僕が勧めるとスザンヌがいたずらっぽく笑う。
「一緒に入っちゃいます?」
「えっ」
「冗談です。本当にトウヤさんは照れ屋さんですね」
「はあ……」
本気にしてしまったよ。いや……。もしかしたら誘われている?
スザンヌは自分の部屋に戻っていく。
しばらくすると、バスタオルや下着、パジャマなどを持ってきた。それは今日、僕が買ってあげたもの。
「じゃあ、ごゆっくり」
僕は2階の部屋に行った。
パソコンでメールなどを確認する。どうも、落ち着かない。
家には女の子と二人きり。スザンヌの家には何度も泊まっているが、そのときはクリスがいたので変なことを考えることはなかった。しかし、おばあちゃんの家で二人きりになると、なぜか緊張してしまう。
僕が彼女を求めたら応じてくれるだろうか。きっと、受け入れてくれるだろう。でも、そんなに性急にに関係を進めなくても良い、という気持ちもある。
心がざわつくので、1階に行ってテレビを観た。
動画サイトでアニメ系の番組を見るが、内容が頭に入ってこない。
風呂場からドライヤーの音がした。もう、風呂から出たのか。
しばらくすると、スザンヌが花柄のパジャマ姿で現れた。
「じゃあ、どうぞ。トウヤさん」
ブラジャーをしていないのに胸の張りがある。谷間が見えて、留めているボタンは、そんなに引っ張らないでくださいと、クレームをつけているよう。
髪はしっとりと濡れて、ほんのりと頬が紅潮している。
いきなり抱きしめて、思い切り湯上がりの香りを吸い込みたい、という欲求で胸が熱い。
「ああ、どうも」
平静を装って2階に上がった。
寝間着などを持って風呂場に入る。
ああ、これがスザンヌが入っていたお湯か、と浴槽に特別な感慨を覚えた。異世界ではスザンヌ達が先に風呂に入り、その後に僕が使うという順番だったので、今と状況が同じはずなのだが、このシチュエーションでは感覚が違う。
「一段、一段、階段を上るんだ。そう決めたんだ」
気分を変えるために、強めのシャワーを浴びる。
だが、最近のスザンヌは階段を三段飛びに登っているような気がする……。それは、借金を返済してくれたお礼のつもりなのだろうか。
*
翌日はスザンヌと一緒に車で町を回った。
当然、彼女にとって初めて見る物ばかり。
この地方は過疎化しているのだが、スザンヌは人の多さに驚いていた。
スーパーで買い物をしてから、回転寿司に行く。
僕がタブレットで寿司を注文するのを見て彼女は驚いていた。
お茶は、テーブルの端に設置してある給湯器から出てくる。しばらく待っていると、レールを通って寿司を乗せた皿が到着した。
スザンヌは寿司を気に入ったようだ。
前にスーパーで買ったパックの寿司を持って行ったこともあるが、それよりも旨かったらしい。
不意にスマホが鳴った。
ポケットから取り出して画面を開くと、それは美代子さんからのラインだった。
東京に来ることがあったら会いましょう、という内容だった。
「それは何ですか?」
スザンヌが怪訝そうに見る。
「あ、いや、知り合いからのライン……連絡だよ」
「女の人ですか?」
「あ、うん……」
「そうですか」
彼女は大きな目を細めて僕を見ていた。
「ちょっと、見せてください」
「あっ」
僕のスマホを取り上げる。いつものスザンヌとは思えない強引さ。
画面を見ても彼女は日本語が分からないので、チョコチョコと画面を指でいじってから僕に返した。
「別に、高校時代の友達だよ」
「そうですか……」
彼女に見つめられると、後ろめたい気分になるのはどうしてだろう。
あちらこちらを周り、夕方になってから基地に戻った。
明日から仕事なので、夜には異世界に戻らなければならない。もっとスザンヌには日本にいて欲しいのだが、クリスのことが心配だ。
居間でクリスに持って行くお土産を仕分けしていると、スザンヌがコーラを持ってきた。
「ちょっと休みませんか」
テーブルに置いたトレイには、コーラが入ったコップが二つ。
彼女はピンクの水玉模様のワンピース姿。
「ああ、ありがと」
僕はテーブルに着いてコーラをグイッと飲む。
彼女はリモコンでテレビを点けた。スザンヌは勘が良くて、電化製品の使い方もすぐに憶えてしまう。
地上波は面白い番組がなかったので、インターネットの動画サイトにチャンネルを変えた。
「ねえ、トウヤさん」
「ん? 何」
視線をテレビからスザンヌに移動させると、彼女はジッと僕を見ていた。
「トウヤさんは、まだリフローの町を良く知らないですよね」
「うん、まあ、そうかな」
何度も異世界に転送しているが、決まりきった場所しか行っていない。
「私が教えてあげます」
「え、ああ、そう……」
僕は棚からメモ用紙とボールペンを持ってきて、スザンヌの前に置く。
彼女は、それを右手で横に寄せると、スッと僕の側に来た。前開きのワンピースは全てのボタンが留まっていなかったので、胸元が見えるし、スカートが開いて膝上まであらわになっている。
「じゃあ、私の家から出発しますね」
そう言って僕の右手を握る。
「トウヤさん。人差し指を立ててください」
「あ、はい……」
人を指さすように指を真っ直ぐにした。
「ここが私の家です」
彼女は僕の手を自分の体に引き寄せる。
僕の指が二つの膨らみの左側、頂上の少し下に押し当てられた。体が固まって寒さのような熱さが体の芯に入り込む。
「あ、あの、スザンヌ……」
「そして、山道を通って茂みまで」
指は張りのある胸を下り、ブラジャーのワイヤーに少し引っかかってから腹部の方に進んだ。
僕の息が荒くなって汗が流れ出す。
「ここが、いつもバギーを隠してある茂みです」
「あ、はい」
指はさらに下り、足の付け根近くまで到達した。
これ以上は、ちょっとヤバいのでは?
「ここがギルドです」
「あ、はい……」
「そして、こっちの道が海に通じています」
感触がワンピースの生地から足の肌に変わる。震える指は膝の少し上で停止した。
ああ、秘密の場所にまで導かれることはなかったようだ。
「もっと説明しますか」
声が甘くなり、スザンヌの顔が上気している。
「えっ、あの、はい」
彼女はクスッと小さく笑ってから指を上にスライドさせた。
「じゃあ、ギルドに戻ってから、いつもの食堂に行きますね」
「あ、はい」
僕の指はスカートの裾を引っかけたまま、それをズリ揚げる。
白い足が次第にあらわになり、太ももが全て現れた後に、白い下着が見えてしまう。それでも、指はスカートをめくりながらパンティをなぞって腹部に向かう。
「ここがいつも食べている食堂です」
下着に目を奪われていた僕は、ハッとしてスザンヌに視線を移す。
「あ、はい」
「今日はこのくらいにしておきましょうか」
「あ、そうだね……」
「また、教えてもらいたくなったら言ってくださいね」
「あ、はい、分かりました」
彼女は握っていた僕の手を離したが、僕の指は彼女から離れない。
「トウヤさん?」
スザンヌが笑いながら上目遣いで僕を見る。
「ああ、ごめん」
慌てて指を離す。
「ああ、そろそろ、転送しないとね。クリスが寂しがっているよね」
僕は興奮し、落ち着かない感じで2階の部屋に上がった。




