35、激闘
スザンヌたちが家の中に消えて、僕にのしかかっているツルツル頭の小男がニヤニヤ笑いながら、僕のズボンに手を掛けた。
「何をするんだ!」
「ヘン、俺は娘の方が良かったんだが、べつに男でも構わねえんだよ」
顔に衝撃。こいつに殴られた。
ジールは僕のズボンを引き剥がそうとしている。
「この変態野郎……」
まったく、ホモとロリコンはどこにでもいるよな。異世界にも変態は存在したんだ。
家の中からスザンヌの叫び声が続いている。早く助けないと。
やつの手を握ってリンクを繋ぎ、急速にドレインする。
「何かしたのか?」
リンクに気がついたのか、ジールは手を止めて僕を睨む。叔父さんの様に勘の良い人間はいるようだ。
顔の痛みをエナジーで治癒する。ジンジンしていた痛みが引き、熱も下がる。
「このガキ! 何をしやがったんだよ」
ジールが僕を殴ろうと手を上げた。
必死にエナジーを吸い取っているが、間に合わない。
振りかぶっていた手が止まる。ジールは白目をむいて僕に倒れてきた。
横を見るとスタンガンを持ったクリス。
「ありがとう、クリス」
ジールを押しのけて立ち上がった。
「早くお姉ちゃんを助けてあげて」
「ああ、分かってる」
僕はバットを拾って家の中に入っていく。
居間に突撃すると、スザンヌが傷の男に押し倒されていた。上着が剥がされ、スカートもめくり上がって白い太ももがむき出しになっている。
「やめろー!」
渾身の力をこめてバットを頭に振り下ろす。
鈍い音がして男の動作が止まった。だが、動じることもなくボスは振り返って僕を見る。こいつら盗賊の体は、どれだけ頑丈にできているんだよ。
「このガキんちょがー!」
キックが僕の腹に飛んできた。爆発したような痛み。バットが床に転がる。
うめいて腹を押さえている僕の顔面をパンチが襲った。床に倒れて動けなくなる。僕は急いでエナジー治癒を行う。
「まったく……さっき、殺しておけば良かったな」
頭を振ってから床の剣を拾うボス。ため息と共に剣を振り上げた。
ああ、僕はここで終るのか。エナジーを使っているが、なかなか回復しない。動くことができないのだ。
「お兄ちゃん!」
クリスの声がしてボスがけいれんした。剣が床に落ちる。
見ると、彼女がボスの腰にスタンガンを当てていた。
「何しやがる!」
ボスがクリスをひっぱたくと、彼女は勢いで壁に背中を打ち付けた。衝撃で気絶したようだ。ピクリとも動かない。
「クリス!」
僕とスザンヌが同時に叫ぶ。
「この野郎!」
僕はボスに飛びかかって体当たりした。そして、リンクを繋ぐ。
倒れたボスにのしかかって顔面をタコ殴りにする。エナジーは急速吸引だ。こいつだけは許せない、殺してやる。
だが、殴ろうとした拳をボスにガシッと止められた。
「いい気になるなよ……」
拳をギリギリと握られた。手の骨がきしむ。こいつは普通の握力ではない。
片手で僕の襟首をつかみ、ゆるりと立ち上がる。そのまま天井近くまで持ち上げられた。
「死ねや」
僕をテーブルに叩きつけようとしているのか。
だが、男はブルブルと震え、やつの手が開いて僕は床に尻をつく。スザンヌがスタンガンで攻撃したのだ。
「まったく、だから、ガキは嫌いなんだよ」
そう言ってスザンヌの方を向いたところで僕が後ろから抱きつく。ドレインし尽くしてやる。
「まったく、チクショウ」
やつは必死に振りほどこうとするが、僕は両腕で腹を締め付けて放さない。ここが正念場というもの。
スザンヌはボスのキックを警戒しながらスタンガンで攻撃する。
僕は渾身の力で胴を締め続け、スザンヌは何度も電気ショックを与えた。
やがてボスはガクッと崩れ落ちる。
やった、勝った。僕たちは自分の家を取り戻したんだ。
「トウヤさん……」
スザンヌが涙を流して立っている。よほど怖かったんだよな。
彼女の上着は脱がされ、破れかけの下着が胸を隠している。それは広めの布を胸に巻き付けているだけの物。今まで彼女のブラジャーを見たことがなかったが、このようになっていたんだ。
「スザンヌ、大丈夫かい」
聞くと、彼女はコクンとうなずく。
それと同時に胸の布がハラリと落ちた。
張りの良い胸があらわになる。薄暗い照明に浮かび上がる白い肌。スカートは大きく破れて、ピンクのパンティが目に入った。
「トウヤさん」
スザンヌが僕に抱きついてきた。上半身が裸になっているのにも気がつかないのか、しっかりと体を密着させる。
僕も彼女を抱きしめた。絹のような手触りの肌に、ずっと触っていたかったが。
「あ、スザンヌ。それよりもクリスの手当てをしないと」
ハッとして彼女が身を離す。裸のスザンヌに僕のジャケットを掛けてあげた。
気を失っているクリスにスザンヌが手をかざしてヒーリングを行う。
「頭を打っているようですけど、大きなケガはしていないようです」
そうか……安心した。
しばらくしてクリスが目を開けた。
「お姉ちゃん……」
「ああ、良かった、クリス。もう、心配しなくてもいいからね」
スザンヌが妹を抱きしめる。
「盗賊は退治したの?」
「ええ、トウヤさんが倒してくれたわ」
「まあ、皆が助け合ったからだよね」
一人で盗賊を倒すことができたらカッコ良かっただろうけど。
「それで、盗賊達をどうするの?」
クリスに言われて気がついたのだが、こいつらをどうするか考えていなかった。
「殺すべきでしょう。生かしておいたら、また私たちの家を襲ってきます」
スザンヌの意見は過激だが正論だ。スザンヌに乱暴を働いて僕たちを殺そうとしたのだから、殺されても文句は言えないはず。
治安の行き届いた日本で過ごしてきた僕と違って、スザンヌ達は厳しい現実と戦ってきたのだ。倫理観が違うのは仕方のないこと。
「殺すのか……」
僕に人を殺すことができるのだろうか。でも、そうしないと僕たちが殺されるだろう。
「キングボアの餌にしちゃえ」
クリスも厳しいことを言う。
だが、それが良い方法かもしれない。自分の手を汚さずに野獣に任せるのだ。キングボアの縄張りに放置すれば、勝手に始末してくれるだろう。殺される場面を見なくていいから、後のトラウマにならなくて済む。
僕は黙って考え込んだ。




