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34、作戦

 うーん、相手は見るからに暴力のプロだ。それに、剣などの武器も持っている。僕一人で太刀打ちできるものではないだろう。正直言って、すごく怖い。


「逃げるしかないのかなあ……」


 生きてさえいれば、元の生活を取り戻すことができる。日本と異世界との商売で、いくらでも利益を出すことができるのだ。


 3人で日本に転送するという方法も考えられるが、僕以外の生物を転送できるかを試したことがない。


「あの家を捨てちゃうの……?」


 クリスが僕の服の端をつかんで下を向く。


「トウヤさん。あの家には商売で得た金貨を隠しているんです。何年も苦労して貯めた財産を捨てたくありません」


 スザンヌが真っ直ぐに僕を見た。

 そうだよね……。長年の苦労の対価を何もしていない盗賊には奪われたくないよな。

 それに、遠くに逃げて新しい生活を始めても、それからどうなるのか。別の盗賊に新しい家を奪われて、また逃げるのか。それではキリがないだろう。


 僕にとって宝石のように貴重なスザンヌとの生活。それに命をかける価値はある。


「そうだよね。分かった。僕たちの家を取り戻そう」


「お兄ちゃん……」


 クリスが笑い、スザンヌも微笑んでいた。


 早速、僕たちは家を奪還する作戦を立てた。

 キングボア用の武器は洞窟に用意してある。

 それは、パチンコ玉くらいの鋼球を飛ばすボールベアリング・ボウと金属バット、それに叔父さんに用意してもらったスタンガンだ。


 相手は3人組。普通に戦ったのでは勝ち目はない。一人ずつ各個撃破することに決まった。



 夕方になるのを待って、皆で家に向かった。

 小川の手前の茂みに隠れて様子をうかがう。

 うっすらとした明かりが窓から見える。あれは油のランタンによる光りだ。電気の照明を点けていないというのは、電化製品をいじり回してブレーカーを落としてしまったんだろうな。


「クリス、やつらの様子は?」


 聞くと彼女は、目をつむって精神を集中する。

 クリスは状態把握のスキルを持っているので、100メートル以内の生物などを感知することができるのだ。


「やつらは3人とも居間にいるよ。動きがないから何か食べているのかも」


 そうか、盗賊どもは冷蔵庫の食品を食い散らかしているんだろう。


「じゃあ、スザンヌ。頼んだよ」


 彼女はコクンとうなずいてボールベアリング・ボウを構えた。

 僕は金属バットを握りしめて小川を渡り、高架水槽近くに設置してあるソーラーパネルに隠れる。


 ターン。

 スザンヌが放った鋼球が裏口のドアに当たる音がした。

 しばらくして、ヒゲ面の大男が出てくる。


 大男は辺りを見回すと川の方に歩いて行く。

 僕は背後から忍び寄り、バットを思い切り大男の頭に振り下ろした。


 鈍い音がして大男がよろめく。

 バットを横に振って相手の腹に当てようとしたが、手で受け止められた。


「なんだあ、てめえ!」


 バットをもぎ取られた。頭を強打されても動けるとは、どれだけ頑丈なんだよ。

 やつは僕を殴り殺そうと振りかぶる。


「ギャッ!」


 大男は叫んで右目を押さえた。顔面に血が流れている。スザンヌの射撃は正確だ。今までキングボア対策として練習していたのか。


 僕はヒゲ面を殴った。人をグーで殴るのは生まれて初めてのこと。同時にドレインのリンクを繋ぐ。

 殴った拳が痛かったのに、敵は痛がる様子もなく僕を左目で睨みつけた。


「このガキ! 殺してやるぞ」


 右目を押さえながら、ゆっくりと近づいてくる。

 バットは大男の後ろに転がっていた。

 仕方なく、後ずさりしてスザンヌの射撃に運命を託す。その間もドレイン能力でエナジーを吸い取っているが、相手は疲れる気配がない。体力が常人とは桁違いなのか。


「ガキがぁ! 俺を舐めるなあ」


 飛びついてきて首を両手で絞められた。やつの右目からはダラダラと血が流れている。


「く、苦しい……」


 それでも、ドレインはやめない。直接触れるとエナジーの吸収力が段違いに強くなる。ボンヤリとし始める思考で、思い切り生命力を奪い取ってやった。


 ターンという発射音がして、男がビクンと体を震わせ片膝をつく。


「トウヤさんを放しなさい」


 川の手前でスザンヌが武器を構えていた。

 腹を押さえて、男はニヤリと笑って立ち上がる。


「あのとき逃がしたカワイコチャンじゃあねえか。会いたかったぜ」


 ボールベアリング・ボウで狙われているのを意にも介せず、ジリジリと近寄っていく。

 僕は急いで体力を回復させた。吸い取ったエナジーによって自分の傷を治療し、疲れを回復させることができることを僕は知っていた。


「スザンヌに手を出すな」


 やつの肩を握って引き戻す。同時に強力なドレインを開始。


「うるせえガキだぜ」


 僕の襟首をつかんで右の拳を振り上げる。

 その直後、ヒゲ面はヘナヘナと崩れ落ちた。やっとエナジーを吸い尽くすことに成功。


「何だ、おめえらは!」


 家から二人の盗賊が出てきた。やつらの手には剣が握られている。


 ターン。スザンヌが右の男に発射。


 キーン。だが、頬に傷がある男は剣で鋼球を弾き飛ばした。なんちゅう動体視力だよ。

 傷の男は僕に走り寄り、首に剣を当てた。


「おい、娘、武器を捨てろ。さもないとガキの首を切るぞ」


 物語では定番のシーン。僕が実体験するとは思わなかった。


「わ、分かったわ……トウヤを放して」


 彼女は武器を捨てた。


「へっへっへ……。やっぱり良い体をしているじゃないか」


 頭がツルツルの小男がスザンヌに近づく。


「おい、ジール。お前はガキの相手をしろ」


 そう言って僕をジールに突き飛ばす。

 ジールと呼ばれた小男は、舌打ちして僕を乱暴に押し倒した。


「俺はこのグラマー女で遊んでいるからよお」


 傷の男はスザンヌの手首をつかんで家の方に引っ張っていく。


「やめろ!」


 怒鳴るが、ジールによって体を押さえつけられて動けない。


「おい、ジール。そのガキは後で殺しておけ」


「へい、ボス」


「ちょっと、約束が違うわ! トウヤは逃がしてあげてよ」


 スザンヌが体を震わせるが、傷の男は彼女の腰に手を回して引き寄せた。


「なあ、俺たちが約束を守ると思ってんのか。おめでたいガキ共だぜ」


「やめてー!」


 叫ぶスザンヌを無理矢理、家の中に連れ込んでいった。


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