22,増築
土曜の午前、スザンヌの家に転送。
家の横を見ると、石を積み重ねた土台ができている。
スザンヌが町の建築業者に家の増築を依頼していたのだ。
その土台は石を積み重ねてから、セメントのようなもので固めている。
この上に柱を立てていくのだろうな。
「もう、基礎はできているんだね」
僕が聞くとスザンヌがうなずく。
「ええ、3日前に大工さんが工事してくれたんですよ。今日、家の増築工事をするそうです」
「ふーん、完成まで何日くらいかかるのかなあ」
彼女は僕を見て困ったように笑う。
「作業は今日中に終りますよ」
「えっ、そんなに早く完成するの?」
スザンヌはニッコリと笑う。
どうして、そんなに早く終了するのか聞いたが、見ていれば分かるという返事だった。
工事費用の1000万ペセタのうち、500万ペセタは前金で払っている。
滝沢のエナジーが600万ペセタで売れたので、予算的には余裕だ。
しばらくして、荷馬車がやってきた。
その馬車から5人の職人が降りてきてスザンヌと打ち合わせを始める。
話はすぐに終って、作業を始めた。
一人が馬車からスーツケースくらいの黒い箱を下ろして蓋を開けた。そして、手を組んで祈るような姿勢で小さくつぶやき出す。
すると、箱の3メートルくらい上の空間が歪んだ。それは大きくなり、家の形になる。家屋が出現して上空に浮いているのだ。
「スザンヌ、……これは?」
「マジックボックスです。町の作業場で作って、ボックスに入れて運んできたんですよ」
彼女は少し得意げに答えた。
異世界の建設技術はすごいなあ。日本のツーバイフォー工法も真っ青だよ。
その家は石の土台の方に、ゆっくりと水平移動している。
「浮遊魔法です」
スザンヌが小さく耳打ちする。
職人の一人が目をつむって祈っているんだけど、あの人の魔法か。
他の4人が手で家を押して位置調整をする。土台にぴったり合うような位置になると、静かに家が降りた。土台と家を金具で固定した後に、スザンヌの家と接続する作業に移る。
前作業は済んでいるので、短い廊下を作るだけ。
キングボアに壊されたドアも修理した。
「あのマジックボックスは売っているの?」
僕が聞くとスザンヌが小さくうなずく。
「ええ、あれは結構な値段ですよ。1000万ペセタ以上はするでしょう」
「ああ、そうなんだ……。もっと安いやつはあるのかな」
「そうですね……、リヤカーを入れる物だったら500万ペセタくらいで売っているかもしれません」
「ああいった物があれば便利だなあ」
マジックボックスに入れると重量はなくなるようなので使い勝手は良い。
廊下の工事は、すぐに終った。完成したパーツをマジックボックスから取り出して組み立てるだけだから、教われば僕にもできるかもしれない。
増築した家の中に入ってみた。
そこには部屋が二つと風呂場があった。部屋は6畳くらいで、その一つが僕の専用となる。風呂場はタイルを貼ってセメントで固めたような内装だった。
職人は、小川の側に貯水槽を置くタワーを作っていた。それは、やぐらのような物で、タンクを上に置いて生活用水を溜めておく。そこからパイプで家の水道設備に水を供給するのだ。
つまり、ビルの屋上にある高架水槽と同じ。
そのタンクに水を入れるのは手回しポンプだ。または、水を入れたバケツを持って、はしごを登るという方法もある。
今までは家の中の桶に川の水を入れていたが、それよりも高架水槽方式が使いやすい。
職人は手慣れたもので、高架水槽も手早く作業を終えてしまった。
後は家の周りの柵だけ。
あれから来ていないが、キングボアが襲ってくる可能性もある。そのためのセキュリティも備えておかないと。
全ての作業が終ったのは夕方だった。
僕は残りの手間賃である500万ペセタを支払う。職人達は疲れたような顔で馬車に乗り込んでいった。
夕食はカレーライスだ。
僕もクリスもカレーは好きなのだが、ご飯を炊くのが面倒だと言ってスザンヌは歓迎しない。お米とカレールーは異世界では手に入らないので、日本から持ってきている。
炊飯器を使うことができれば良いのだが、電気を何とかしなければならない。
発電設備を考えないと……。
「風呂に入ろうよ」
クリスが楽しげに言う。
今まではタライにお湯を入れて体を拭くだけだったから、湯船に浸かるのは初めてのことだろう。
「お兄ちゃんも一緒に入る?」
僕はブンブンと首を振って拒否した。発育途上とはいえ14歳の女の子と、18歳の男子が入浴するのはマズいだろう。
スザンヌが大きなヤカンでお湯を沸かした。
まず、風呂に少し水を入れて、そこにお湯を入れる。後は、ちょうど良い湯加減になるように水道の蛇口をひねって水を足すのだ。
スザンヌとクリスは風呂に入った。
はしゃいでいる声が台所まで聞こえてくる。僕は、食卓に着いて、少し高鳴っている心臓をなだめつつ窓から外の星空を見ていた。
「喉、乾いたー」
クリスが全裸で台所に入ってきた。
ポットの水をコップに注ぐ。
僕の体は寒くなってから熱くなって、それから固まってしまった。
「クリス! 何やってんの」
スザンヌがバスタオルを体に巻いた状態で飛び込んでくる。
胸の谷間がはっきり分かるくらいの豊満なボディ。太ももは、かなり上の部分まであらわになっていた。
「今日はトウヤさんがいるんだから!」
焦った表情でクリスにバスタオルを巻いた。
「お騒がせして、ごめんなさいね、トウヤさん」
「あ、いえ、どういたしまして」
AIの様な声で答える。
二人は台所から出て行った。
僕は口を開けたまま動けない。さっきの姉妹のイメージが脳に固着してしまったようだ。
スザンヌは相変わらずグラマーだった。
クリスの方はペタンコと言うよりも少し膨らんでいたかな。一般的にチッパイと呼称されている状態と言うのが適切だろうなと僕は思うが……。後、2年もすれば姉のように……。
「ああ、いかん、いかん」
首をブンブンブンブンと激しく振ってから、バシンバシンバシンバシンと自分でほおを叩く。
邪念を払おうとした。だがしかし、無理なようだった。
今日は眠れるだろうか……。




