071 いや、あの……もう少し驚いたり、嫌がったりしようよ!
「さぁ、ボールを手に取んなよ! 早くやらないと、呪いの数が増えまくるぜ!」
レベル4以下の場合は、ルーレットを早く回さないと、ホイールのポケットに書かれた呪いの内容が、より嫌なものに変わってしまう。
だが、既に呪いの内容自体は、最悪であるレベル5の場合、ホイールのポケットに書かれた呪いの内容は固定されていて、より嫌な内容には変わらない。
代わりに、身に受ける呪いの数が、増えてしまうのだ。
以前、レギーナの指示で、ルーレットを回すのを先延ばしにしたら、どうなるかを実験し、果敢は酷い目に遭った経験があるので、ルーレットを先延ばしにはしない。
果敢は立ち上がると、ルーレットが載っているテーブルに歩み寄り、ルーレットの近くに置かれた、白いボールを手に取る。
レギーナ達も立ち上がり、ルーレットのテーブルの近くに移動する。
「それでは、ルーレット回します! 回り始めてから十秒以内に、ボールを投げ入れるのがルールだよっ!」
アスタロト人形が口にした、決まり文句を切っ掛けに、ルーレットのホイールが回り始める。
果敢はルール通り、十秒以内にボールをルーレットのホイールに投げ入れる。
(ろくでもない呪いばかりなのは、分かってるんだけど……それでも、なるべくマシな呪いに、なりますようにっ!)
回転するホイールの上を、跳ね回るボールを見詰めながら、果敢は必死で祈る。
次第にホイールの回転は遅くなり、激しかったボールの動きも、静まって行く。
そして、とうとうボールは黒いポケットに落ちたまま、動かなくなり……ホイールも止まる。
「さーて、どんな呪いに決まったのかな?」
煽るような口調で問いかけつつ、アスタロト人形はボールが落ちたポケットを覗き込む。
アスタロト人形は、呪いの名を読み上げる。
「今回の呪いは、『男が女に! 女が男に! 淫らなメタモルポセス』に決定しました!」
呪いのタイトルを聞いただけで、果敢は嫌な予感に襲われる。
初めて選択された呪いなのだが、タイトルを聞けば、どんな呪いなのかは、大よそ見当がついてしまうので。
ちなみに、メタモルポセスとは、変身譚を扱う物語集の事だ。
「今から、男である果敢は女に、この部屋にいる女共は男に、それぞれ身体の性別が変わった上で、淫らな寝物語を紡いで貰いまーす!」
アスタロト人形が口にした、呪いの内容は、果敢が思っていた通りであった。
「女になったカカンが、十五編の寝物語を紡ぎ終われば、呪いは終了で、元に戻るぜ!」
「本当に性別が変わるのか?」
レギーナの問いに、アスタロト人形は答える。
「変わるぜ! 呪術には一時的にだが、性別変える奴があるからな!」
「凄いな、魔術や聖魔術では不可能なのに……」
興奮気味に、レギーナは呟く。
「十五編の寝物語って、どういう意味?」
今度はマリオンが、アスタロトに訊ねる。
「有り体に言えばだな、男になったお前等が、合計で十五回……カカンを抱けば、終わりって事だ!」
要するに、一編が一度の交わりを、示しているのである。
「十五回なら、三人で割り切れるから、丁度良いじゃない」
ヴィルナの言葉を、マリオンが受け継ぐ。
「一人……五回ずつって事だね」
三人の女性陣は平然と、呪いの内容を受け止めている。
「いや、あの……もう少し驚いたり、嫌がったりしようよ!」
かなりの衝撃を受けていた果敢は、平然としている女性陣が信じられず、戸惑い気味の表情を浮かべながら、言葉を続ける。
「性別が変わって……女になった俺と……するんだぜ! 平気なの?」
「平気だよ、果敢は女装似合ってたから、たぶん可愛い女の子になるだろうし……可愛い女の子は、嫌いじゃないというか……むしろ好きだ」
平然とした口調で、まずはレギーナが答えた。
「カカンの相手する時に、女同士で……結構色々としちゃってたから、女相手も、わりと慣れちゃったよ」
ヴィルナの言葉に、マリオンが頷く。
「順番待ってる時に、女同士で……キスしたり、他にも……ね」
(そう言えば、そんな事してたな……)
レベル5の呪いを身に受けている最中、ヴィルナやマリオンの言う通りの光景を、目にした記憶があるのを、果敢は思い出す。
果敢一人で、複数の女性を相手にする場合、そういった事が起こりがちなのだ。
「俺は全然、男の身体相手なんて……慣れてないんだけど」
不安と嫌悪感を露わにしながらの、果敢の呟きに、アスタロトが言葉を返す。
「呪いが始まり、性別が変われば、すぐに発情するから、慣れていようがいなかろうが、関係無いって」
そして、アスタロト人形は、煽るような口調で続ける。
「それでは、『男が女に! 女が男に! 淫らなメタモルポセス』を、始めちゃうよ!」
ソファーに座っていた、果敢や女性陣の足下に、光り輝く満月の呪印が現れる。
「おい、待て! まだ、心の準備がっ!」
慌てふためく果敢は、呪印の放つ光に飲み込まれる。
果敢だけでなく、三人の女性達も呪印の光に、飲み込まれてしまう。
光は程なく消え去り、レベルでも最悪の呪いの一つである、「男が女に! 女が男に! 淫らなメタモルポセス」が始まるのだ……。
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